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20000220 ガリとヒソ

 GaAsとは「砒化ガリウム$${^{*1}}$$」のことである。英語ならばガリアム アースナイドgallium arsenideだ。
 半導体技術者の殆どはGaAsを「ガリウム砒素$${^{*2}}$$」または略して「ガリヒソ$${^{*3}}$$」と称す。一般の人でもそう読む人は多い。

 どうしてそんな読み方になったのだろう。GaAsは歴とした化合物であるのに。れっきとした化合物というのはガリウムと砒素を単に混ぜ合わせた物質ではなく、ガリウムの原子と砒素の原子がそれぞれ結合している状態の物質という意味である。混合物なら「ガリウム砒素」と言ってもそれ程間違っている表現とは言えないだろう。

 しかし化合物の場合、その読み方の規則$${^{*4}}$$を小学校か中学校で学ぶぐらいの基本的なことであるから、勝手に読み方の創意工夫はすべきでない。
 もし学校でNaCl$${^{*5}}$$を「ナトリウム塩素」と読んだらどうなるか。読んだら最後、教室内は爆笑の渦と化し、読んだ本人はその一度だけの間違いにより同窓生から「ナトエン」などと一生呼ばれ続ける運命を背負うことになるだろう。

 「ガリヒソ」はそれくらい危険な読み方と認識すべきである。

*1 太陽電池の世界
*2 News Release 1999年12月7日(最高出力200W ガリウム砒素パワーアンプを開発 (用語説明))
*3 ハム用語辞典
*4 原子価と命名法
*5 NaClを眺める

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