20050524 捨て印
「捨て印$${^{*1}}$$」というのがある。申込書や契約書などの欄外に押す印$${^{*2}}$$のことで、記入事項に誤りや変更があった場合に当人の断り無しに勝手に書き換えるのを承諾する押印のことである。むやみに押すのは危険なので気を付けて捨て印を押すべきだと解説しているページ$${^{*3}}$$が多い。
「捨て印」という言葉の語源は何となく想像できる。本来押すようなところではない箇所に押す印なので「自分の手元から離す」という意味だろう。それでは、なぜ欄外の印が任意の訂正を承諾する意味になったのだろうか。
捨て印とは訂正印の拡大解釈の結果のようだ。訂正印$${^{*4}}$$とは文書の字句を訂正した時にその訂正行為が正当であることを明確にするための押印である。訂正印は判子そのもの$${^{*5}}$$を指す場合と印影を指す場合があるが、捨て印は印影だけを指す。
訂正印を押す方法は二通りあるらしい。訂正した箇所に押す場合と訂正した箇所とは別に欄外に押す場合$${^{*4}}$$である。それに加えて欄外に「削○字、加○字$${^{*6}}$$」などと訂正した字数を記載する。訂正した箇所に押印するのが自然な感覚のような気がするが、文書を訂正した上に判子をその近くにいちいち押すのは文面が読みにくくて仕方がない。それを避けるために印を欄外に押すのも認められたのだろう。
欄外に訂正印を押すことが広く認知されると、訂正してから判を押すのではなく、判を先に押させてから後から好きなところを訂正するという仕組みを考え出した人が出てきたのかも知れない。
欄外の押印は、文面の後からの修正が可能なので、できるだけ避けるべきであると言われている。捨て印であれば、修正は誤字脱字など書面の内容に大きく影響しないような場合に限られると考えられている。欄外にぽつんと判を押すと「訂正印」と見なされ大修正も認められてしまうが、欄外の押印でも「捨て印」と明記$${^{*7}}$$して押しておけば訂正印と見なされることはない。
*1 ミナミの帝王超法律学-32
*2 apli-bankaccount-transfer
*3 小林弁護士 法律豆知識「契印、訂正印、捨印、割印、消印の意味と押し方 1」
*4 小林弁護士 法律豆知識「契印、訂正印、捨印、割印、消印の意味と押し方 2」
*5 訂正印
*6 3. 定款変更
*7 apli-bank-example.gif
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