見出し画像

20070702 山々

 これ$${^{*1}}$$は1945年四月、終戦直前の空襲で焼け落ちた国鉄蒲田駅$${^{*2}}$$にできた臨時の出札所の写真らしい。車両の窓の上に「出札所」と筆書きされた看板が掲げられている。

 看板には「山々」と縦に書いて「出」という漢字の代わりにしている。万葉仮名に出てくる戯訓(ぎくん)$${^{*3}}$$の「山上復有山$${^{*4}}$$」と似た発想だ。「山の上にまた山が有る」から「出」となる。「山々」の場合は「山の繰り返し」だから「出」である。

 「$${^{*5}}$$」記号は、元来同じ字を繰り返して書くのが面倒だから考案された$${^{*6}}$$のだろう。しかし「山」と「々」とでは画数が同じだから少しも略されていない。一体、「出」を「山々」と書いた理由は何なのか。少しでも使う墨の量を減らしたかったのか。

 考えてみると「々」を使ってわざわざ手間を増やしている場合がある。「一々」「人々」がそうだ。「上々」「下々」「大々的」はあまり得した気分にならない。「々」で書体が小さくなった分、得したと考えればいいのか。

*1 shussatujo.jpg
*2 JR東日本:各駅情報(蒲田駅)
*3 ぎくん 0 【戯訓】 - goo 辞書
*4 日本国語大辞典第二版オフィシャルサイト:日国.NET
*5 20020218 乞々仲象
*6 編集部だより 辞典編集部 Q 「佐々木」の「々」は,なんと読む?

20231128 追記
 この字は単に略されて書かれたのではなく、「$${^{*7}}$$」という字が「出」の異体字として存在していることを後に知った。

*7 漢字「㞮」の部首・画数・読み方・意味など

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?