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20030701 サイクロイド

 サイクロイド$${^{*1}}$$という名の曲線がある。円が線の上を滑らずに転がった時、円周上の点が描く軌跡$${^{*2}}$$がその曲線である。この曲線は歯車に使われる$${^{*3}}$$ことがあるらしい。一般的な歯車に使われる曲線はインボリュート$${^{*4}}$$と呼ばれる曲線で、歯車の互いに歯が当たる部分にその曲線が用いられている$${^{*5}}$$。

 サイクロイドは歯車とは全然違うところにも登場する。最速降下線問題の答えとして出てくる。最速下降線問題$${^{*6}}$$とは、質点が重力の影響だけを受けて、ある点からそれよりも低い位置にある点に到達するまでの最短時間となる経路を求める問題である。

 単純に直線で結んだ経路は最短距離だが、なかなか加速しないので最短時間にならないというのは何となく解る。最初にほとんど真下に降りて加速した方が良さそうである。しかし最初に加速すると殆ど傾斜ない経路の部分が長くなり、そこで時間がかかってしまう。丁度いいの曲線があるはずである。これを解くのは見るからに難しそう$${^{*73}}$$だが、解くとサイクロイド$${^{*8}}$$が出てくる。

 東京と大阪との間にこのサイクロイド状のトンネルを掘ってトロッコを走らせれば、重力だけで東京大阪間を10分程度で移動することが出来るらしい。

 すごい曲線があるものだと感心していたが、正確なサイクロイドの形状でなくても似たような曲線ならば大体かかる時間は同じぐらいになるらしい。

 ところで東京大阪間では少し距離が近いのでもっと遠い場合を考えてみる。東京と地球の裏側のブエノスアイレスとの間ならばどうであろう。地球の中心を通る真っ直ぐのトンネルを掘ればいい。もともと東京ブエノスアイレス間のサイクロイドは直線$${^{*9}}$$になってしまう。

 それでは東京ワシントン間$${^{*10}}$$はどうだろう。今までは摩擦がない状態$${^{*11}}$$を考えてきた。

 摩擦があるとすると、経路が長くなれば不利だ。東京ワシントン間に直線状のトンネルを掘るのとサイクロイド状に掘るのとでは経路の長さが相当違ってくる。東京ワシントン間ぐらいになると直線のトンネルを掘っても十分傾斜がありそうなので、重力だけでもそこそこ速度が出そうだ。

 しかし摩擦があるとワシントンまで重力だけでは到達しないので、トロッコには動力が必要になってくる。摩擦係数$${^{*12}}$$やトロッコ$${^{*13}}$$の登坂能力はどちらのトンネルでも同じという条件ならば、圧倒的に直線トンネルの方が有利のような気がする。

*1 いろいろな曲線 サイクロイドをつくろう
*2 数学教材の部屋 サイクロイド
*3 小林(重)研究室 - トップ 立体図形コレクション サイクロイド歯車(1枚歯)
*4 数学教材の部屋 インボリュート
*5 入門編_3 インボリュート歯車
*6 Waseda Live Math 最速降下線最速降下線としてのcycloid
*7 EMANの解析力学 EMANの物理学・解析力学・ベルヌーイの問題提起
*8 Weekend Mathematics コロキウム室(最速降下問題・その1)
*9 Javaでみる いろいろな曲線 【内サイクロイド (Hypocycloid)】
*10 20030403 正確さと判り易さ
*11 20021123 良質な試験問題
*12 20000424 摩擦
*13 ちいさな鉄道リンク

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