カレーコラム01. ムライ食堂 / 金沢
こちら金沢。
こんにちは、ざっけろーにです。
この記事は、金沢の地域情報誌 Zouss(ザウス) の2022年1月号の見開き企画にて出稿させて頂きましたカレーコラム「Spicy's Life」のコーナーを再編集したものです。
ムライ食堂 カレーとコーヒーのお店
石川県金沢市玉鉾3-223
instagram : murai_shokudo
日常の延長にある(ちょっと特別な)スパイスカレー
『チキンの皮をカレーにいれるのか?』カレーづくりが好きな人の間では、人気のトークテーマだ。
僕が皮をカレーに入れなくなったのは2年程前、ルゥに融けた油が重たいなぁと思ったときだと記憶している。そう思ってからは、チキンカレーをつくるとき、玉ねぎを切るよりスパイスを調合するよりもまず、皮を剥ぐようになった。
しかし気づくと、流れるような作業で皮に塩と小麦粉を振って、ひとつまみのクミンをまぶしてフライパンでパリパリに焼いてしまう自分がいる。つまるところ、「油」と「小麦粉」というのは美味しいのだ。制御が効かなくなるぐらい美味しいのだ。
ムライ食堂さんのカレーには、その「美味しい」の必要条件とも言える油と小麦粉を使っていないという。初めてこのカレーを食べたとき、「美味しい」よりも前に「優しいなぁ…」という感情が生まれたあと、確かにやってくる「美味しい!」にやられてしまったことを思い出す。そして豆乳の香りと、ほぐされてルゥに融け込んだチキンの旨味が鼻を通ったと思ったらお皿が綺麗になっていた。
きっとこの先もいろんな御託を並べては、最終的に「優しい!美味しい!!食後にホットアメリカーノください!!」と呟きながら、ここのカレーとコーヒーを食べる、ちょっと特別な日常を続けていくのだ。
夫婦愛と、カレー愛。
油と小麦粉不使用の優しいカレー
「ざっけさんからしたら、うちのカレー物足りないでしょう?
ある日いつものように食べにいったら、カレー担当の邑井さんは、そう言った。
「いやいや、そのほのかなスパイス具合と、シンプルさがいいんです!」と力強く言いたかったが、作り手を前に緊張して言えず、「いやいや、」で言葉を飲み込み濁してしまった。
ワインだって、紅茶だって、コーヒーだって、まずは香りを楽しむのと一緒で、スパイスカレーだって香りを楽しむ料理のはずだ。いや、絶対そうだ。と心に秘めつつ、食後にコーヒー担当邑井さんの自家焙煎コーヒーの香りと味を楽しんだ。