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キョーレツな肩こりに対処した時のハナシ

『肩だけを1時間指圧してくれる?』

たまにこんな依頼をリラクゼーションサロンで受ける。背中側の、首と肩の辺りだけを1時間押せというオーダーだ。

こちらが他の場所も並行してケアするように提案しても、

他の場所は要らない、そこだけ押せという徹底っぷり。

そしてその肩はと言うと、石のように硬い。骨なのか筋肉なのか分からない。

1時間の間、石を指で押し続けてその上で気持ちいいと思わせなくてはならない。

こういったお客様は、たまにお店にやってくる。

とんでもない肩こりに悩まされている、というのは伝わってくるし、1時間も肩にかけたらきっと肩こりは取れるはずだ、という決断も潔いと思う。

ただ、一箇所だけをひたすら押せという依頼は、セラピストの先輩に聞いてもぼく自身の経験からしても、

たいへん失礼ではあるが『やりたくない』というのが本音だ。

なぜかと言うと、一箇所だけ押して肩こりが楽になったというお客様の声はあまり聞かない。

加えてお客様の肩は石のようにカチカチで、押してるコッチの指の方がぶっ壊れかねない。

こっちが指を痛めてもお客様の体が楽になるならまだ良い。

しかし、度を越した硬さのお客様は、こちらの指が粉砕されてようと、いまいち満足してないような微妙な顔でお帰りになる。誰も得しないのだ。

初めて、『ワンポイント1時間押し』という依頼に出くわした時、

開始5分でセラピスト人生の終わりかと思った。

指から爪から悲鳴を上げ始めたのだ。
滝みたいに汗が噴き出し、ぼたぼた床に落ちた。

間違いなく今日、ぼくの指は終わると思った。

それでも、お客様に満足して欲しいと指も構わずに1時間汗だくでやり続けた。

結果、お客様の反応は。

『うん…。どうもありがとう』

ビミョーな反応。

達成感もなく、残ったのは親指の痛みだけだった。

今だから分かるけど、セラピストを始めて1ヶ月経つか経たないかのぼくには結局どうしようもなかった。

仮に、ワンポイント1時間では無かったとしても、異常な硬さのお客様をほぐせるだけの腕があったかというと全くそんな事はない。

始めてすぐに、こういった依頼に出会ったことはある意味、肩こりをほぐす施術を本格的に考える良いキッカケになった。

それから半年ほど、セラピストとして活動して分かってきた。

肩こりの人がほぐすべき場所は『胸側の筋肉』なのだという事だ。

肩こりのお客様の大半は、背中側の筋肉が引っ張られたような状態で硬くなっている。

何に引っ張られているのか? 
身体の前面側、つまり『胸側』である。

前側の首、鎖骨周り、胸あたりの筋肉が縮んで硬くなり、結果的に背中は引っ張られている。

胸側から押せる筋肉は割と多い。

人体はウルトラマンのスーツのように、前後左右上下と繋がっている。一部分をつまんで引っ張っただけで、スーツの全部がキュッと引きつる形になる。

縮んでいる筋肉を揉んで伸ばしてあげると、引っ張られた側の筋肉も正しい位置に戻る。

だから、ほぐすべきなのは縮んでいる側の筋肉=胸側ということになる。

全てがそうとは言えないけど、お客様の胸側をほぐすことで、楽になったとお声をいただける事が増えた。

あとは、肩甲骨部分の筋肉も一緒に緩めてあげると、肩はだいぶ柔らかくなる。

肩こりのお客様が来ても身構える事が無くなったのは、多少なりと成長したのだと実感できる。

肩こりの多くは、

スマートフォンやPC作業によって首が前に傾いたり、肩が前に丸まっている事が大きなウエイトを占めていると思う。

肩こりを訴えるお客様の多くはデスクワークだ。

現代の生活は便利だが、身体を度外視しているフシがある。

気がついた時、ぼくも胸や鎖骨周りをほぐすようにしている。これだけでも、呼吸がしやすくなったり思考がクリアになる。

便利というのはどこかがラクになる裏で、別のどこかに負担が来ている。

効率も大事だが、体をいたわる事も忘れないようにしたい。

リラクゼーション1回、高いぞ……?

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