アルプスの瞳・ブレッド湖
アルプスといえば美しい山々や川に湖といった風光明媚な光景を思い浮かべるだろう。
そしてアルプス山脈といえば、主にスイスやオーストリアをイメージすることが一般的かもしれない。
しかし、アルプス山脈東の端にも負けず劣らずの美しい光景が存在している。
今回はそんなスロベニアのブレッド湖を取り上げたい。
ブレッド湖はこんなところ
ブレッド湖(Lake Bled / Blejsko jezero)は、中央ヨーロッパの小国・スロベニアの北西部に位置する湖である。
ブレッド湖はアルプス山脈の一部を構成するユリアン・アルプス山脈の氷河によって形成された湖であり、ポストイナ鍾乳洞と並んでスロベニアを代表する、自然が作り出した名観光地となっている。
ブレッド湖へは、首都のリュブリャナからバスで約1.5時間の道のりだ。
中央駅の前から、1時間に1本程度のペースで運行されている。
ブレッド湖のバス停に到着し、しばし歩くと湖が見えてくる。
朝から徐々に増えていた雲は、この頃には空をほぼ覆い尽くしていた。
ブレッド湖は面積1.45平方km(琵琶湖の約1/460)と決して大きな湖ではない。湖岸には道が整備され、自転車で1.5時間程度で一周できるそうだ。
また、ボートも数多く浮かび、のんびりと湖上の景色を楽しむこともできそうだ。
せっかくならば自転車やボートなども楽しみたいところだが、生憎の天気かつ滞在時間をそれほど長く見積もっていなかったので、湖畔のもう一つの見どころへと向かうことにした。
それは切り立った崖の上にある。
急な坂を徒歩で登っていく。
20分ほどで建物が姿を現す。
スロベニア最古の城と言われるブレッド城だ。
1011年の文献にはすでにその城の存在が記されており、13世紀にはハプスブルク家の手に渡っている。
城内は観光地として整備され、城内のチャペルや活版印刷所などを見学することができる。
また、ワインセラーもあり、スロベニア産のワインも購入できる。
しかし何と言っても見逃すことができないのは、ブレッド上から見た湖だろう。
ブレッド湖と背後に広がるユリアン・アルプスを一望することができる。
そして、湖にぽつんと浮かぶ島と建物が、どこか童話的だ。
この湖に浮かぶブレッド島は、スロベニア唯一の島である。
そして島には99段の階段と、その上に建つ教会からなる。
17世紀に建造されたこのバロック様式の聖母被昇天教会では、鐘を鳴らすと願い事が叶うという言い伝えがあるそうである。
かつて、ブレッド城の領主の妻が、若くして亡くなった夫を偲ぶため、教会の鐘を鋳造するように命じた。しかし、その鐘を教会へと運ぶべく、船で島へと漕ぎ出したところ、突然の嵐に襲われ、鐘は船や乗組員と共に湖に沈んでしまった。
悲しみに打ちひしがれた未亡人は、その後ローマの修道院に入り一生を終えた。死後その悲しいストーリーを知ったローマ法王が、教会に新たな鐘を贈ったのであった。
以後、祈りを捧げて鐘を鳴らすことができたものは願いが叶うといわれるようになったそうである。
また、島の教会では結婚式を上げることも可能だが、その場合、島の船着き場から教会まで続く99段の階段を、新郎が新婦を抱えて登る決まりとなっているそうだ。
島へ行く時間も階段を抱えて登る相手もいなかった私は、ただ島を高みの見物するのみであった。
見物のお供は、名物ブレッド・クリームケーキである。
ブレッドクリームケーキはスロベニアの各地で提供される定番スイーツなのだが、その元祖はここブレッド湖のホテルパークであるそうだ。
そんなブレッド名物はブレッド城のカフェでも販売されている。
イートインもできるが、せっかくならば眺めを楽しみながら食べるのもいいだろう。
バニラ入りのカスタードとホイップの2種のクリームにサクサクのパイ生地、そしてパウダーシュガーがたっぷりとかかったケーキは、その見た目に反して甘さは控えめであり、軽く食べることができる。
湖とアルプスの果ての山々を眺めながら食べるのはまた格別だ。
ブレッド湖のマグネット
ブレッド湖のマグネットがこちら。
鏡張りのブレッド湖を島に向かってボードが進む。
実際島にはボートで渡ることができるので、島を目指したものはこの景色を眺めることになるのだろう。
訪問時はあまり天候にも恵まれず、また湖上を漂う時間も、叶えたい願いも、愛を誓う相手も持ち合わせていなかった私であるが、
いつかそれらが満たされた暁にはまた訪れてみたいものである。
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