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龍の子棲まう地下の洞窟・ポストイナ鍾乳洞【Bucket List05】

世界三大地下洞窟というものをご存知だろうか?
ご存知なはずがない。私が勝手に言っているだけだからだ。
今回は私が独断で選ぶ世界三大地下洞窟の一つ、スロベニアのポストイナ鍾乳洞について取り上げたい。

ポストイナ鍾乳洞はこんなところ

ポストイナ鍾乳洞(Postojna Cave)は、中央ヨーロッパの国スロベニア西部の町、ポストイナ近郊にある鍾乳洞である。
スロベニアはカルスト台地という、石灰岩が雨水や地下水などによって侵食されてできた大地が国土の多くを占め、そのため国内に総数約1万ともいわれるほどの鍾乳洞をもつ国である。
そんな中、近くを流れるピウカ川の地下水流によって200万年の期間をかけて徐々に侵食されたポストイナ鍾乳洞は総延長20km以上、最大震度115mと世界最大級の規模を誇る。

ポストイナ鍾乳洞へのアクセス

ポストイナの街は、スロベニアの首都リュブリャナの南西に位置し、バスで45分程度の道のりである。

バスは街の中心に停車する。そこから鍾乳洞までは約10分程度の道のりだ。
この前日そして翌日と屋外の景色を楽しむ行程では生憎の空模様だったのだが、地下へ潜る今日に限って清々しいまでの快晴だった。

道なりに暫く歩くと鍾乳洞の入口が見えてくる。

鍾乳洞内はガイドツアーでのみ観光が可能だ。
本当は朝イチのツアーに参加したかったのだが、タッチの差で逃し1時間後の次のツアーを待つこととなった。

待つ間にあたりを散策。周囲は至ってのどかで、地下に広大な世界を隠しているなどとは、おおよそ想像もつかない静かさである。

冒険の始まり

時間を迎え、鍾乳洞へと向かう。

全長約20kmの鍾乳洞のうち、観光可能なのは5km程度の範囲であり、90分程度をかけてツアーでめぐる。
しかし入って早々に、鍾乳洞観光の一つのハイライトが訪れるのだ。

観光開始と同時にいきなりトロッコに乗せられ、そこからツアーが始まる。
トロッコと言っても、車両の上に鉄枠の座席が乗せられた簡易的なものだ。
とはいえ、1872年から運転を開始した記録上世界最古の地底トロッコだそうだ。

トロッコが走り出すと、すぐに洞窟らしい岩肌が姿をあらわす。
テーマパークのアトラクション気分で楽しもう。

トロッコはなかなかの速さで洞窟内を進む。

しかも天井や壁が近くなかなかのスリルだ。
乗ること10分。徐々に洞窟内が開けてくると2kmのトロッコの旅も終わりが近づいてくる。

地底探索

トロッコを降りると1.7km程度の道のりをガイド付きで歩いて探索していく。洞内の気温は8月でも10度以下だ。羽織れるものは必須だろう。センターで貸し出しも行っているようだ。

ガイドの話を聞きながら広大な洞窟を進む。

鍾乳石は1cm伸びるのに数十年の時間を要するという。
それがこの規模に成長するまでに一体どれほどの月日を要したのだろうか。

同じ洞内でも水分内に溶けている成分で鍾乳石は様々な色を見せる。
なかでもやはり白く輝く一帯は特に美しい。

ふと天井を見上げると細い無数の鍾乳石がぶら下がっている。
通称スパゲッティと呼ばれる見どころの一つだ。

ぶら下がるのもいれば、地面から生えるものも居るのが面白いところだ。

洞窟内を進んでいくと、レペ・ヤメ(Lepe Jame:美しい洞窟)と呼ばれるメインスポットへとたどり着く。

巨大な石柱が並ぶ中で一際目を引くのが、ブリリアントと呼ばれる純白に輝く石柱だ。

光を浴びて燦めくその姿は「ポストイナ鍾乳洞のダイヤモンド」とも呼ばれるのも納得の美しさだ。

鍾乳洞というスポット自体はこれまでも訪れた場所はあり、正直ポストイナ鍾乳洞にそこまで大きな期待をしてはいなかった。
しかし、過去の記憶から想像していたものを遥かに凌駕するそのスケールにすっかり圧倒されていた。

龍の子

最後に辿りつくのは、コンサートホールと呼ばれる大きな空間だ。

1万人収容可能と言われる広大な空間では実際にコンサートなどの各種イベントが行われているそうだ。
こういった広い空間に来ると、ついインパルス応答を取りたくなってしまうのは、私の悲しき性である。

そしてここにある水槽で見ることができるのが、類人魚と呼ばれるホライモリである。

ポストイナ鍾乳洞HPより

ホライモリは、洞穴の中で生息する両生類の動物で、体の色が白人の肌に近いことから類人魚と呼ばれ、暗闇で生活するために目が退化している一方で生命力は強く、1年近く何も食べなくても生き続けることが可能だそうである。

英語ではプロテウス(proteus)と呼ばれ、発見された当初はドラゴンの子供であると信じられていたそうだ。光の届かない地底で密かに生きている姿は、たしかに伝説の生き物を彷彿とさせるような気がしないでもない。

そんなプロテウスはポストイナ鍾乳洞の一種のマスコット的存在となっており、売店では様々なグッズが取り扱われていた。

プロテウスの他にも、ポストイナ鍾乳洞では1831年にメクラチビゴミムシが発見されて以降、地下生物の研究が進み、洞窟としては世界最多の170種の生物が存在することが知られている地底生物の宝庫なのだ。

それにしてもメクラチビゴミムシにはもう少しマシな名前をつけてあげることはできなかったのだろうか。もし私がメクラチビゴミムシだったら命名者へ法的手段に訴えるレベルである。

ポストイナ鍾乳洞のマグネット

ポストイナ鍾乳洞のマグネットがこちら。

壮大な鍾乳洞の下、水たまりにはプロテウスの姿もある。
右のマグネットはプロテウスの龍の子伝説にちなんだものだ。ユーモラスなタッチが気に入ったので別途購入した。

締めくくりに、再びトロッコに乗って地上を目指す。

こうしてツアーは終わり、地上へと帰還した。
地底探訪で退化した目には、晴れ渡った空が眩しかった。


最後までご覧いただきありがとうございました。
次回はお祭りの話を取り上げたいと思います。

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