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スタートアップ

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記事一覧

研究者のスタートアップの弱点

最近はDeeptechなどの流行を受けて研究者が起業するスタートアップが増えていますが、こういう企業に共通する弱点としてスピード不足があります。以下のような理由で進捗が遅くなりがちです。 タスクの期日やマイルストーンを決めない タスク完了までの日数をかなり長めにとる(今週中に終わるタスクなのに、期日を1ヶ月後などにする) 誰もタスクの進捗確認をしない etc. この原因は、研究がビジネスに比べてタイムスパンが長いことにあると思います。特に基礎研究は成果が出るまでに数

広告代理店出身者をBtoBマーケターとして採用する

最近のBtoBスタートアップでは、広告代理店の出身者(営業や広告運用)をマーケティング担当者として採用することが増えています。これには3つの理由があると思います。 代理店出身者を採用する理由①マーケティング未経験者よりも戦力化しやすい BtoBスタートアップにおいてBtoBマーケティング経験者の採用が難しいことは周知の事実でしょう。そのため、経験者の採用を諦めて未経験者を採用したり、正社員ではなく業務委託を採用したりと、様々な代替手段が模索されてきました。 私はアーリー

事業成長が先か採用が先か

スタートアップにとって事業成長と採用は鶏と卵のような関係にあります。事業が成長すると導入実績やイベント登壇数などが増え、候補者との接触機会が増えるとも言えますし、人が増えたからこそ打ち手が増えて事業が成長するとも言えます。 私の経験則で言うと、シード期やプレシリーズAなどアーリーフェーズは事業成長が先です。アーリーフェーズだと福利厚生やカルチャー、チームが十分に整備されていませんし、そこで大手と戦っても勝ち目が無いため、訴求するのは「業界のペイン」「社会貢献性」「導入事例」

いつまでも「1人目○○」を募集し続けるスタートアップ

シード期やプレシリーズAなどの初期スタートアップでは担当者不在のポジションだらけなので、「1人目エンジニア」「1人目人事」など1人目を採用したいニーズが強くあります。逆に、シリーズBなどのミドルフェーズだと社員が増えているため、人手不足はあっても担当者が誰もいないポジションは少なくなり、1人目のニーズが減るのが通例です。 ところが、たまにミドルフェーズなのに1人目を募集している企業を見かけます。面談で理由をヒアリングすると、特に多いのは担当者の転職、起業です。スタートアップ

「スタートアップ=キラキラ」は自意識過剰

スタートアップの採用記事などで「弊社はキラキラしたスタートアップと思われがちですが……」「世の中のスタートアップのようなキラキラ感は無く……」と謙遜の言葉が出てきますが、実際、スタートアップを「キラキラ」と思っている候補者はどれぐらいいるのでしょうか? 世間の採用担当の方は分かりませんが、私はスタートアップの採用支援をしていて、候補者から「スタートアップはキラキラしているイメージがあります」という類の言葉を一度も聞いたことがありません。 統計は無いのであくまで私の推測ですが

スタートアップは桓騎を採用してはいけない

『キングダム』の桓騎といえばかっこよさや残酷さが語られがちですが、彼には「中華統一」という嬴政の夢に共感していない(むしろ反対)という問題点があります。それが顕在化したのが平陽の戦いであり、桓騎は趙の捕虜数万人を皆殺しにしました。捕虜の反乱を防ぐために仕方なく殺したと摩論が弁解していましたが、李斯が指摘する通り、この虐殺は「中華統一」実現のためにはあってはならないものです。 ※自分の国を作ろうとしている王翦にも同じことが言えますが、彼は何を考えているのか明らかでない部分が多

買収によりプロダクト名が変わることの寂しさ

※元に戻してくれという提言ではなく、単にプロダクト名の変更に対して私の感想を述べるだけの記事です。 スタートアップのプロダクトが大手企業に買収された場合、買収元のブランド名を冠する形でプロダクトの名前を変更することがあります。例えば以下のようなものです。 IEYASUがビズリーチに買収されて「HRMOS勤怠」に名称変更 pastureがfreeeに買収されて「freee業務委託管理」に名称変更 Pardotがセールスフォースに買収されて数年後「Marketing Cl

CEOだけが顧客理解度が高いと権限移譲が進まない

シリーズA前後などアーリーフェーズのスタートアップにおいて、CEOがメンバーに権限移譲しきれずに業務過多になるのをよく見かけます。その原因を掘り下げてゆくと、根本原因は「顧客理解度の高い人間が社内にCEOしかいない」であることが多いです。 スタートアップを立ち上げる目的は会社によって様々ですが、よくあるのは自分が働いていた業界の課題解決のためでしょう。例えばFintechは金融業界、Proptechは不動産業界で長年働いた人が業界の課題やペインを解決するために起業しています

スピード重視とは「Planを立てずにいきなりDo」ではない

スタートアップで仕事をしていると「スピード感」「スピード重視」のような言葉がよく飛び交います。私もこの価値観には共感するのですが、たまに「スピード重視」を「Planを立てないこと」と解釈している人がいます。具体的には、 仮説を立てずにABテストを行う ユーザーストーリーを作らずに機能を実装する 候補者ターゲットを決めずにスカウトを送る と、PlanをスキップしてDoに直行することを指します。Planに費やす時間を省略している分、確かにスピードが上がっているように見えま

アーリーフェーズで頻繁に体制変更すると引き継ぎ漏れが起きる

アーリーフェーズでの頻繁な体制変更スタートアップの中でも、シリーズA前後のアーリーフェーズとB以降のミドルフェーズだと体制変更のリードタイムが大きく異なります。 シリーズB以降は社員数が増えて部署や中間管理職も置かれるので、組織の統制をとるため、「マーケティングのAさんをセールスに異動」などの部署や職種をまたいだ大きな体制変更は四半期・半年などタイミングが決まっています。不定期に発生するのは「Web広告担当のAさんとSEO担当のBさんを交代」のような部署内での業務変更ぐら

MVVは必要条件だが十分条件ではない

統計によると、夫婦の離婚申し立て原因の第一位は「性格が合わない」だそうです(令和2年度の19  婚姻関係事件数  申立ての動機別申立人別  全家庭裁判所)。これはあくまで裁判所に申し立てた統計なので、夫婦の話しあいで離婚したものは含まれないのですが、性格の不一致で離婚するというのは感覚的に理解しやすいと思います。 ただ、それ以外にも異性関係、暴力、飲酒、浪費、性的不調和など様々な理由があります。性格の一致は夫婦円満の必要条件だが十分条件ではないわけであり、夫婦の難しさを実感

「スタートアップ特化」がレッドオーシャンになりつつある

私はスタートアップをターゲットにBtoBマーケティングや中途採用をしています。数年前まではスタートアップに特化したBtoBマーケティング支援会社や採用支援会社がまだ少なく、私の知る限り2〜3社程度でした。 ところが、2023年現在ではスタートアップに特化した支援会社が十数社存在しており、「スタートアップ特化」がレッドオーシャンになりつつあると言えます。スタートアップ産業が成長している以上、周辺プレイヤーも増えるのは当然の話であり、この流れは不可逆でしょう。 このレッドオー

スタートアップにおける「デザイナーのリソースが社内でカニバる問題」

スタートアップがマーケティング施策を進める上で、様々な用途でデザイナーが必要になります。 Web広告のバナー制作 サービスサイトのデザイン セミナーのLPデザイン メルマガの画像デザイン ホワイトペーパーのフォーマットデザイン etc. LPはstudioなどのCMSを導入する、バナーやホワイトペーパーはテンプレートを用意するなどで、多少はデザイナーの工数を削減できますが、それらを用意するにもデザイナーの工数がかかります。 一方、シリーズAなどのアーリーステー

バーティカルSaaSに必要なのはマーケティング経験者よりもセールス経験者

バーティカルSaaSはレガシーな業界をITで変革するというコンセプトであるため、ターゲット企業もレガシー業界になりがちです。中にはWebをほとんど使わないようなITリテラシー低めの業界もありますが、その場合はWeb広告・SNSなどが刺さりづらく、テレアポ・リファラル・展示会・紙DMなど、アナログやオフライン施策のほうが効果を発揮しやすいといえます。 これらの施策を設計・実行する上では、Webマーケティング経験が豊富な人よりも、セールス経験が豊富な人のほうが重宝されます。もち