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スタートアップ

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記事一覧

スタートアップは桓騎を採用してはいけない

『キングダム』の桓騎といえばかっこよさや残酷さが語られがちですが、彼には「中華統一」という嬴政の夢に共感していない(むしろ反対)という問題点があります。それが顕在化したのが平陽の戦いであり、桓騎は趙の捕虜数万人を皆殺しにしました。捕虜の反乱を防ぐために仕方なく殺したと摩論が弁解していましたが、李斯が指摘する通り、この虐殺は「中華統一」実現のためにはあってはならないものです。 ※自分の国を作ろうとしている王翦にも同じことが言えますが、彼は何を考えているのか明らかでない部分が多

買収によりプロダクト名が変わることの寂しさ

※元に戻してくれという提言ではなく、単にプロダクト名の変更に対して私の感想を述べるだけの記事です。 スタートアップのプロダクトが大手企業に買収された場合、買収元のブランド名を冠する形でプロダクトの名前を変更することがあります。例えば以下のようなものです。 IEYASUがビズリーチに買収されて「HRMOS勤怠」に名称変更 pastureがfreeeに買収されて「freee業務委託管理」に名称変更 Pardotがセールスフォースに買収されて数年後「Marketing Cl

CEOだけが顧客理解度が高いと権限移譲が進まない

シリーズA前後などアーリーフェーズのスタートアップにおいて、CEOがメンバーに権限移譲しきれずに業務過多になるのをよく見かけます。その原因を掘り下げてゆくと、根本原因は「顧客理解度の高い人間が社内にCEOしかいない」であることが多いです。 スタートアップを立ち上げる目的は会社によって様々ですが、よくあるのは自分が働いていた業界の課題解決のためでしょう。例えばFintechは金融業界、Proptechは不動産業界で長年働いた人が業界の課題やペインを解決するために起業しています

スピード重視とは「Planを立てずにいきなりDo」ではない

スタートアップで仕事をしていると「スピード感」「スピード重視」のような言葉がよく飛び交います。私もこの価値観には共感するのですが、たまに「スピード重視」を「Planを立てないこと」と解釈している人がいます。具体的には、 仮説を立てずにABテストを行う ユーザーストーリーを作らずに機能を実装する 候補者ターゲットを決めずにスカウトを送る と、PlanをスキップしてDoに直行することを指します。Planに費やす時間を省略している分、確かにスピードが上がっているように見えま

アーリーフェーズで頻繁に体制変更すると引き継ぎ漏れが起きる

アーリーフェーズでの頻繁な体制変更スタートアップの中でも、シリーズA前後のアーリーフェーズとB以降のミドルフェーズだと体制変更のリードタイムが大きく異なります。 シリーズB以降は社員数が増えて部署や中間管理職も置かれるので、組織の統制をとるため、「マーケティングのAさんをセールスに異動」などの部署や職種をまたいだ大きな体制変更は四半期・半年などタイミングが決まっています。不定期に発生するのは「Web広告担当のAさんとSEO担当のBさんを交代」のような部署内での業務変更ぐら

MVVは必要条件だが十分条件ではない

統計によると、夫婦の離婚申し立て原因の第一位は「性格が合わない」だそうです(令和2年度の19  婚姻関係事件数  申立ての動機別申立人別  全家庭裁判所)。これはあくまで裁判所に申し立てた統計なので、夫婦の話しあいで離婚したものは含まれないのですが、性格の不一致で離婚するというのは感覚的に理解しやすいと思います。 ただ、それ以外にも異性関係、暴力、飲酒、浪費、性的不調和など様々な理由があります。性格の一致は夫婦円満の必要条件だが十分条件ではないわけであり、夫婦の難しさを実感

「スタートアップ特化」がレッドオーシャンになりつつある

私はスタートアップをターゲットにBtoBマーケティングや中途採用をしています。数年前まではスタートアップに特化したBtoBマーケティング支援会社や採用支援会社がまだ少なく、私の知る限り2〜3社程度でした。 ところが、2023年現在ではスタートアップに特化した支援会社が十数社存在しており、「スタートアップ特化」がレッドオーシャンになりつつあると言えます。スタートアップ産業が成長している以上、周辺プレイヤーも増えるのは当然の話であり、この流れは不可逆でしょう。 このレッドオー

スタートアップにおける「デザイナーのリソースが社内でカニバる問題」

スタートアップがマーケティング施策を進める上で、様々な用途でデザイナーが必要になります。 Web広告のバナー制作 サービスサイトのデザイン セミナーのLPデザイン メルマガの画像デザイン ホワイトペーパーのフォーマットデザイン etc. LPはstudioなどのCMSを導入する、バナーやホワイトペーパーはテンプレートを用意するなどで、多少はデザイナーの工数を削減できますが、それらを用意するにもデザイナーの工数がかかります。 一方、シリーズAなどのアーリーステー

バーティカルSaaSに必要なのはマーケティング経験者よりもセールス経験者

バーティカルSaaSはレガシーな業界をITで変革するというコンセプトであるため、ターゲット企業もレガシー業界になりがちです。中にはWebをほとんど使わないようなITリテラシー低めの業界もありますが、その場合はWeb広告・SNSなどが刺さりづらく、テレアポ・リファラル・展示会・紙DMなど、アナログやオフライン施策のほうが効果を発揮しやすいといえます。 これらの施策を設計・実行する上では、Webマーケティング経験が豊富な人よりも、セールス経験が豊富な人のほうが重宝されます。もち

業務委託にビジョンマッチやバリューフィットは必要か

最近、多くのスタートアップでミッション・ビジョン・バリュー(いわゆるMVV)が設定されています。MVVへの共感、フィットを重視して選考するという企業も多いでしょう。 ただし、上記の話はあくまで正社員採用の話です。では、業務委託で稼働する人にMVVのフィットなどは必要なのでしょうか。これについて私見を述べます。 ※以下の業務委託では「正社員転換を目的としたお試し副業」などは除外し、「正社員転換を目的としない業務委託」のみを扱います。 ミッションやビジョンのマッチは不要私は

スタートアップは好きだが、「一体感」を強制される施策は嫌い

私はフリーランスとして多くのスタートアップと取引しています。それはスタートアップのカルチャーが好きだからですが、私がどうしても嫌いなものがあります。それが「一体感」を強制されるような施策です。具体的にいうと、 会社のロゴが入ったTシャツを着る zoomの背景を会社の壁紙にする 会社のオリジナルグッズを使う etc. などです。これらはチームビルディングのための施策だと理解はできるのですが、「職場ではTシャツを着よう」「zoomの背景は会社の壁紙にしよう」などと自分の

スタートアップというゴールドラッシュの横でスコップを売る私

最近はスタートアップ担当大臣が設置されたりと、国のスタートアップ支援が加速しています。私は「日本はこんなもんじゃない」や「日本をぶち上げる」といった社会変革を理想とする人間ではないので(詳細は私が正社員に戻らない理由参照)、こういった取り組みに人生を賭ける気はありませんが、自分の仕事が拡大するという点ではありがたい話です。 私はスタートアップに特化してBtoBマーケティングや中途採用をしていますが(その経緯は私とスタートアップの付き合いの歴史参照)、これはスタートアップとい

私とスタートアップの付き合いの歴史

私は今でこそスタートアップの仕事ばかりしていますが、スタートアップとの付き合いが始まったのはフリーランスとして独立してからです。 スタートアップと縁の無い会社員時代私はフリーランスになるまでに ソーシャルゲーム会社(2014年4月〜11月) CRMの事業・支援会社(2014年12月〜2018年3月) Web制作会社(2018年4月〜2019年4月) という経歴を歩んでいます。どの会社も新規事業を立ち上げていたり、ベンチャー企業ならではの風通しの良さはありましたが、V

スタートアップ企業にありがちな「プロジェクトベースの人間関係」

私はスタートアップ向けに仕事をしていますが、スタートアップだと社員だけではなく、パートナー(コンサル会社・副業・フリーランスetc.)を活用することが多いので、そのパートナーと関わる機会が増えます。例えば、以下のようなケースです。 ここで注意すべきなのは、クライアント↔私、クライアント↔パートナーの間には契約関係(業務委託契約など)がありますが、私↔パートナーには契約関係が無いということです。同じプロジェクトの仲間として活動する、いわば「プロジェクトベースの人間関係」といえ