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129【連帯保証人は解除できる。】地方在住経営コンサルタントの思索

写真は倉敷市玉島の交流会館に展示されている、江戸時代から明治期にかけて河川物流の主役だった高瀬舟の模型です。
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はじめに


ひと昔前ならば、年商10億円規模までの中小零細企業の銀行取引において、代表者の個人連帯保証の差し入れは当然のことでした。しかしながら、現在は新規での連帯保証人を取るとことは銀行などの金融機関のトレンドではありません。

「本当に連帯保証は解除できるの?」
「そんなの無理に決まってるじゃん。」

といった経営者の方々の声が聞こえてきそうですが、今回は、どうすれば連帯保証人を解除できるのか?をテーマに、あるべき今後の銀行取引像を探っていきたいと思います。

銀行借入のある特に年商10億円規模までの中小零細企業の経営者、財務部門の幹部や、事業主、そしてこれから起業し、借入を起こす予定のある方々に読んでいただきたい内容です。

※保証人・担保をテーマとしたバックナンバーです。

過去主義から未来主義へ

銀行取引と言えば、「担保・保証人」といった項目を直ぐに連想される方が多いのではないでしょうか?1990年代に日本全体で多額の不良債権額を把握するために制度化された自己査定・債務者格付制度は、金融検査マニュアル廃止後の現在も実体として脈々と受け継がれています。

金融機関は新規創業というよりも、業歴を重ねてきた企業を対象にメインで融資を行ってきました。今でも年商1億円規模の小規模なケースは信用保証協会付融資がメインの融資となってきます。銀行独自の資金の融資となるプロパー融資の場合、業況が好調でない限り、やはり不動産担保や、個人資産背景のある、経営者個人の差し入れる連帯保証にいざという場合の保全は依存してきました。令和の今も、基本線はそのままの金融機関がまだまだ多く存在します。

しかしながら、過去の事業の成果である資産背景に依存した融資体制では、新規事業や、新規創業企業の発展を促進していくことは難しいという大きな課題が長年に渡って日本全体に起こっていました。この由々しき事態を打破しようと、企業の資産のみならず、事業そのものを評価する、「事業性評価融資」という考え方の新機軸がここ10年ほど政府から打ち出されています。その流れの中で、平成26年2月から『経営者保証に関するガイドライン』が運用開始となり、新規融資における無保証融資の割合の上昇や、事業承継時に前経営者と新経営者の両方から保証を二重で徴求してしまう事態を低下させ、経営者保証に依存しない融資の拡大を政府は図ってきました。

キーワードは銀行への「情報開示」

ちょっと前段で、固めに政府の政策としての背景に触れましたが、なかなか一気に、過去の積上げである資産を背景とした担保や、代表者個人の差し入れる保証ではなく、未来への事業活動による成果を予測しての融資という、まさに過去から未来への方向性への転換は一筋縄ではいきません。

ここに、実は大きな盲点とも言える問題点があるため、ことはスムースに進まないのです。

その理由を端的に言えば、企業から金融機関への適切な「情報開示」が不十分ということになります。

聞きなれない言葉とは思いますが、「情報の非対称性」というフレーズがあります。これは、金融機関が融資対象となる企業の情報が少ないため、正確な融資判断が困難になり、融資に消極的になる。そして、その融資が否決の場合、詳細な理由は企業側へ開示されることなく「総合的な判断で…」という奥歯にものが挟まった言い方となり、企業と金融機関の溝は深まるばかりという悪しき一連の流れのことを指します。更に一説によれば、中小零細企業の約35%が程度に差こそあれ、粉飾決算をしてしまっているという会計情報の不正確性とも言える問題が根っこにあることも目を背けてはならない問題点であることは言うまでもありません。

私もいち中小零細企業の経営者でありますから、企業経営者側の心理もわかります。経営者の中には、「銀行へは資産状況は教えたくない。なぜなら、担保に取られかねないから。」と考えてしまう方が多いのは一般的であると言えるでしょう。

法人と個人を分けて考える

ここで、金融機関が時代の流れが変わったと深く理解し、急にその企業の事業を正確に詳細に判断し、未来に稼ぐであろう利益を精緻に予測し、それに見合った大胆な融資判断をどんどん実行して行くにはやはり無理があると言わざるを得ません。

ここは私個人の考えになりますが、本当の意味での未来の利益に対した融資判断の前に、きちんとした”地ならし”が必要であると感じています。

その地ならしこそ、法人と個人の分離であると思います。つまり、企業は融資が入って、公の資源も活用しながら事業活動を行っているわけですから、経営者自身が自らの企業を「公のもの」と認識することが第一段階だと考えいます。「公のもの」と判断すれば、正確な会計基準に基づいて、経営成績を正しく毎期示さねばなりません。ですので、粉飾ということは起こり得ないわけです。この経営者のリテラシー改革、意識改革がまずは必要ではないかと感じています。

その際に、ネックとなってくるのが「個人で連帯保証を差し入れているのになぜ、公のものという意識を持たねばならないのか?」と考えてしまう経営者が陥ってしまう思考パターンです。ここで、政府も「きちんと経営誠実に長年実行し成果を出し続けている経営者から、個人保証を貰う必要はない!」と判断しているのです。

最後になりましたが、具体的なノウハウ的な部分にはなりますが、財務コンサルタントとしての実務の中で培ってきた、個人保証を外すための、目線となる指標を開示して、今回のブログを締めさせていただきます。

【財務指標】       比率
手元流動性        2か月以上
経常収支比率       105%以上
自己資本比率       30%以上
キャッシュフロー倍率   7倍以内
売上高経常利益率     3%以上
インカバ         6倍以上
総資本経常利益率     3%以上
    

日本財務力支援協会作成資料より

※前提としては、信用保証協会付融資の利用残高はゼロで、プロパー融資での対応が得られる企業であること。そして、更にこの上記の7つの指標が全てクリアしている、あるいは自力での返済力を明示できることが必要となってくることをご理解ください。

まとめ

融資の実務に携わる方でなければ今回の内容はイメージしづらいと思います。しかし、融資の判断基準の流れが大きく変化する時代の転換点にあるというイメージは抱いていただけたのではないでしょうか?自社の財務状況に自信がある経営者は、今回の基準をインプットし、取引金融機関と交渉を試みて欲しいと考えています。個人の保証が無くなれば、ひょっとしたら後継者の方もより、安心して事業継承し、未来に集中して積極的に経営に取り組めるケースも増えるのではないでしょうか?元気な中小企業が増えることは当然ながら、日本経済にとって明るい材料です。そんなことを理想に描きながら今回はペンを置かせていただきます。
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今回もお読みいただきありがとうございました。

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株式会社なかむらコンサルタンツ
代表取締役 中村徳秀

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