62【中小企業・弱者の戦略】地方在住経営コンサルタントの思索
写真は活気を取り戻しつつある倉敷美観地区の風景です。
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第55回目のブログで書きましたが、弊社のコンサルティングは経営計画書の策定から始まります。お客様は年商10億円規模までの中小、零細企業です。そのため、経営におけるリソース(資源)は決して潤沢と言えるものではありません。冷静に自社が置かれた環境を分析し、自ら選定した市場で何をどうやって勝利していくのかを仮説として決めねばなりません。
今回は少しの事例を踏まえながら簡単に中小、零細企業における「弱者」が勝ち抜いていくための戦略についてのポイントを述べます。
過去の分析から勝ち筋を導き出す
直近5期くらいの中に、「なぜか利益がでちゃったな?」と感じる決算期はありませんか?5期で該当無ければ10期さかのぼってください。たいていの企業はあるはずです。必ずそこにヒントがあります。その期を現在の状況と比較することで、違い(差異)をあぶり出していきます。たいていの経営者さんは以下のような分析するまでもなく、
①市場トレンドの変化
②競合の状況変化
③営業におけるキーマンの退職(販売体制の変化)
④自社のコスト管理体制劣化による影響(過度な節税意識・PDCAの怠慢)
etc・・・
実は既に頭の中で気づいていらっしゃる経営者の方々がほとんどではないでしょうか。
この「調子が良かった過去」と現在の違いを知るという行為が、クロスSWOT分析により全社あげて一丸となって取り組むべき、積極戦略の仮説構築の精度向上の土台となります。
やれることはたいして多くない
そもそも中小、零細企業のリソースはそれほど恵まれていません。しかし、現状の戦力を最大限生かし、市場において勝利していかねば企業が生きていくための売上総利益(粗利)を獲得していくことは困難になります。
いろいろなタイプの経営者がおられますが、総じて破滅に向かって行きやすいのは自身過剰タイプの方です。
加えて言えば、振り返りをしようともしない、反省、分析する習慣を持たない、攻め一辺倒の猪突猛進型の方は特に注意です。
実行施策の進捗管理、経営計画の数字と月一回の試算表による資金繰り予定表と実績の照らし合わせを行っている中小、零細企業は多く見積もっても全体の5分の1程度だと考えます。地域差、業界によって差はあると思われますが、これはあくまで私の経験則です。
自社の戦力を過大評価するのもいかがなものかと考えます。自社の戦力はシビアに判断して、し過ぎることは決してありません。心配性で石橋叩きが定石の経営スタイルが中小、零細企業においては生き残っていく王道スタイルです。
当然ですが、さしたるリソースもないのに、経営計画にない積極的な施策を現場とのコンセンサスを得ないまま、突き進んでしまうことがあってはなりません。全権がオーナー経営者に集中してしまう中小、零細企業はほんの少しで良いので、まずは企業統治(ガバナンス)という概念を持つことが必要です。
往々にして自身過剰な経営者イメージと現場の感覚の乖離は、士気低下の主たる要因です。そして、士気低下のまま積極的な施策を推し進めていけばその先に待つのは「失敗」という未来です。
冷静に考えれば、市場において勝率が高く、粗利を獲得して行きやすい積極戦略と戦術はたいして多くないことが、過去の振り返りと毎月の振り返りをしていけばきっとわかるはずです。
とある老舗小売業の事例
私の顧問先のお客様の事例です。
過去と現在の分析や、毎月の分析を行っていく中で、経営計画の中核となる業績向上のための施策は、
「顧客名簿を徹底分析整理し、心遣いから始まるきめ細やかなアフターフォローからのクロスセリング。」
という至極まっとうな結論が導き出されました。
高単価な宝飾品業界という特徴もあるやも知れません。しかし、やるべき基礎が意外とないがしろになっているのが中小、零細企業の大半であったりします。特に市場が固定化してどうにか食べていけている状況がある地方都市周辺においてはそれを強く感じます。
ただここでシビアに現状を見定め、なんとなく経営から厳密に数字での管理を軸とする経営にシフトしなければ大きな変化の波に飲み込まれることは火を見るよりも明らかです。
この企業の場合、上記のクロスセリングを徹底していく中で獲得した粗利から、市場が拡大し得る分野への次の投資が可能になっていきます。
事業再生フェーズの企業ならば、積極的に取り組む施策はまず1つに絞られます。そして、資金の流出の低減(止血)などの応急処置が伴ってきます。
当たり前ですが、まだ健康体の内に次の根拠ある施策をどんどん繰り出していくことが良い経営循環を生んできます。
まずは、自社を知るべく財務的な健康診断を決算期毎に行うことも大切です。(実は取引金融機関は我々の知らないところで、財務格付判定を行っています。)
まとめ
・勝ちやすい市場を設定し、全社あげて取り組むべき積極戦略と戦術を決める必要がある。
・自らの過去の成功体験(良い決算期)と自社の現在を比較し、差異を知ろう。
・過去と現在の違いから、何をどうすれば粗利が増えやすくなるのか戦略と戦術を導きやすくなる。
・冷静に自社を見つめ直すと、経営資源をフル活用しても積極的に取り組める施策はそれほど多くないという現実を知ることになる。
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株式会社なかむらコンサルタンツ
代表取締役 中村徳秀
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