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125【財務リストラとは?】地方在住経営コンサルタントの思索


写真は岡山市北区天神町にある、山陽放送のエントランスです。岡山県で一番最初に設立された民放です。写真とタイトルの関連性はありません。あしからず。笑
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はじめに

「リストラって人員整理でしょ?」

「リストラっていよいよヤバい企業がするもんでしょ?」

「財務リストラって何?イメージ湧かない…。」

こういったちょっとネガティブ寄りの考えの方が多いのではないでしょうか?

今回は第103回で書いた3つのリストラのうち、財務コンサルタントとして重要度の高い「財務リストラ」について少し深堀りしていきます。
↓リストラという言葉の意味など、基礎編としてご参考までに。

財務面に多少の不安や違和感を抱える、年商10億円規模までの中小零細企業の経営者・経理部門の幹部の方々に読んでいただきたい内容です。

難しくありませんので、もし良ければ最後までお読みください。

財務リストラとは

以下の3つに大別できます。
①資産リストラ
②負債リストラ
③資本リストラ

ひとつずつ、簡単に説明します。
①資産リストラ
これは、ざっくり言えば、不動産、有価証券などの「余った資産の売却。」です。
「そんなの資金繰りが悪くなったら言われなくてもやるよ!」という経営者が大半でしょうから深くは触れません。

②負債リストラ
これが、年商10億円規模までの中小零細企業にとっては、たいていのケースで喫緊の課題で、しっかりと取り組んで行けば、資金繰りの改善は必ず見えてきます。詳細は後述します。
債務カット(有利子負債の圧縮)は難易度が高いですが、借入の再編でも工夫次第で現預金量を回復させることができます。

③資本リストラ
DES(デットエクイティスワップ・負債と資本の交換)はあり得ると思います。というのも、役員が役員報酬で受け取ったものの、事業の資金が乏しくなったり、銀行借入がめんどうであったりして、長期間に渡り、役員借入金がベタっと残っていることは頻繁にあります。更に減資も、繰越欠損金を無くす代わりに、資本金を減少させ、結果的に利益配当を出しやすくするケースですが、もともと資本金自体が少ない年商10億円規模までの中小零細企業が対応することは稀です。

中小企業が優先的にやるべき財務リストラ

前段で書いた、②負債リストラを深堀りしていきます。


債務超過からの負債リストラの方向性 貸借対照表イメージ図

現預金が枯渇すれば、それは企業にとって「死」を意味します。そして、現預金は企業にとって血液であり、企業活動の体力の源泉です。
体力は「儲けるチカラ」と言い換えることができます。何を伝えたいのかと言いますと、戦略的に稼ぐために行う、積極戦略に基づく施策に投下するための元手となる資金がどうしてもV字回復には必要である、という原理原則です。虎の子の資金を投下した、施策を成功させることで、税引き後の当期純利益を出していき、債務超過という異常事態から資産超過という健康体に持って行くことが本筋の事業再生です。ちなみに、5年以内で債務超過を解消する計画を描かねば、取引金融機関は前向きな支援姿勢を示してくれることはありません。

販管費の削減や、原価の低減は財務リストラではなく事業リストラの領域で、次の段階の施策と言えます。工夫さえすればできる、業績回復のための一丁目一番地は「財務リストラ」であると考えます。弊社でサポートする、以下2点をかみ砕いて説明します。

短期継続融資導入の効能

経常運転資金という考え方をまず、思い浮かべてください。経常運転資金というのは、超簡単に言えば、「支払いと回収のズレ」であり、「企業活動を回していく上で最低限もっておかないといけない金額」と言えます。

〈計算式〉
売上債権+在庫ー仕入債務

売掛金+棚卸資産ー買掛金

となります。


例えば、年商1.5億円で上記の経常運転資金が2,000万円、銀行借入残高が5,000万円の企業があったとします。
(借入内訳)
①A銀行(第一地銀)・・・残高2,000万円 期間7年 信用保証協会付
→毎月元金返済額 238,000円
②B銀行(第二地銀)・・・残高2,000万円 期間10年 信用保証協会付コロナ融資
→毎月元金返済額 167,000円
③B銀行(第二地銀)・・・残高1,000万円 期間5年 プロパー融資(不動産担保・根抵当権設定)
→毎月元金返済額 167,000円

毎月の元金返済額合計は572,000円となり年間の元金返済額は12カ月分ですので、6,864,000円となります。

ここで、根抵当権を設定しているシェア的にメインバンクであるB銀行へ、毎月の元金返済は無く、期日一括返済となる、当座貸越枠の設定・手形貸付への切り替えを打診します。そして、経常運転資金額の通り、2,000万円の貸越枠もしくは2,000万円の手形貸付が無事に認可となった場合、銀行借入は以下のように再編可能になります。

※往々にして、メインバンクが胡坐をかいて、不動産担保設定している場合、担保価値内での融資と、競合の銀行より優先的に保証協会の枠を使い、メインバンクとしての矜持とも言える、リスクテイクを全く取っていないというケースが散見されるので、定期的に意識して、複数の人間に銀行取引が適正なのか見極めてもらう必要があります。

①残高1,000万円(新規実行2,000万円のうち1,000万円を使って繰上げ返済する。)
→毎月元金返済額119,000円

②そのまま。残高2,000万円。
→毎月元金返済額167,000円

③当座貸越枠もしくは手形貸付にて2,000万円。1年更新。期日一括返済。(2,000万円のうち1,000万円を使い、プロパー融資1,000万円を返済。)
→毎月元金返済額0円。(金利のみの支払い。)

融資残高は変わらないものの、この再編で得られたメリットを整理すれは2点です。
・①返済分の保証協会付融資の空き枠が10,000,000円分増加。
・毎月元金返済が572,000円から286,000円になり、1年で
(572,000円-286,000円)×12か月=3,432,000円の現金支出の減少。

長期一本化がもたらすメリット

同様のケースで、上記の再編にさらに、長期一本化も組み合わせると更なる資金的メリットを得られます。

①と②を2023年1月から開始された、コロナ融資の借換保証制度で一本化し融資期間10年で組み直す。
→毎月元金返済が286,000円から250,000円に減少。36000円×12か月で年間432,000円の現金支出が減ります。つまり、前段の3,432,000円に432,000円を加えて、年間で3,864,000円現金支出を減らすことができます。そして、保証協会付の空き枠を利用すれば、1,000万円の資金量を増やすことも可能になります。

当たり前ではありますが、年商規模と借入が10倍の年商15億円で借入残高が5億円であれば、今回の再編では、年間で38,640,000円の現金支出削減効果を見込めるということになります。

財務リストラ成功のカギとは

経営者の実行力につきます。つまり、真摯に取り組む気合と根性です。現代風に言うなら「レジリエンス」ということになります。結局は、現金支出を減らしたり、新規で調達し、資金量を増やす行為はそれなりにエネルギーが必要な交渉となります。自社の現状を正しく理解し、あるべき未来を描き、いつまでにいくら稼ぎ、どんな財務状況にするのか、シナリオたる「経営計画」をきちんと根拠をもって誰が見ても分かる形で策定しなければなりません。これは正直、骨が折れる作業です。しかしながら、この「経営計画」を策定する行為こそが、自社の進んでいくべき道を描くわけですから、経営者にとって最優先事項であるべきでしょう。業績改善に近道はありません。多くの企業が、より良い未来に進んでいくことを願い、今回はペンを置きます。

まとめ

・財務リストラには、資産リストラ、負債リストラ、資本リストラの3種類があり、違いを理解する。

・業績が堅調な企業であってもそうでなくても、借入の再編で現金支出を減らし、積極的な攻めの施策に投下できる資金効率を上げることができる。

・やはり、「経営計画」の策定は業績向上には必須である。進むべき道を示すものが無ければ、ただ場当たり的な積上げになってしまうからである。

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株式会社なかむらコンサルタンツ
代表取締役 中村徳秀

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