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年間228億点…廃棄される衣服を減らす「スマセル」から学ぶこと

228億点。途方もない数字だが、世界中で1年間に廃棄される衣料品の数を指す。中には一度も着られずに捨てられる衣服もあり、日本国内ではおよそ半分が消費者の手に届かないまま廃棄に回るとされる。世界で2番目の“環境汚染産業”と呼ばれる所以だ。そんな中、ブランド価値を毀損せずに滞留在庫を売却したいアパレル企業と、そうした在庫商品を転売したい個人をつなぐプラットフォームとして存在感を増している「スマセル」。運営する株式会社ウィファブリックの福屋剛代表は「アパレル産業の構造自体が、行き過ぎた在庫過多を生み出している」と危機感を隠さない。(南昇平)

BtoCtoCだからブランド価値毀損を回避

スマセルは、滞留在庫を持っているアパレル企業などが「サプライヤー」に、商品を必要とする個人(個人事業主)が「バイヤー」になり、両者の売買をマッチングさせるプラットフォーム。2017年にスタートし、現在はバイヤー約10,000人、サプライヤー約1,000社が利用している。バイヤーは無料で利用でき、サプライヤーは成約時のみ手数料をスマセルに支払う仕組みだ。

サプライヤーに名を連ねるブランドは百貨店系から定番系、ファストファッションなど幅広い。アパレルの正規品やB級品、古着のほか生地、日用品もある。
バイヤーは、メルカリやラクマ、オークションサイトなどに継続して出品している人たちが大半。スマセルで安く仕入れ、差益を稼ぐ。これに対し、サプライヤーはバイヤーに販売条件や販路を制限することができる(法令の範囲内で)。

このため、サプライヤーには1つの大きなメリットがある。商品が安値で市場に出回ることによるブランド価値の毀損の恐れが小さいことだ。
バイヤーが転売する際は、あくまでCtoC(消費者同士)で未使用品を売買する形となるため、アパレルブランドによる在庫処分のイメージはなくなる。

スマセルの仕組み

       ↑取引の流れ(スマセルホームページより)

これにより、最終的な商品廃棄が減ると期待される。福屋氏は「これまで接触できなかったサプライヤーとバイヤーを直接繋げることで、新たな販売機会を生み出したい。廃棄のない循環型社会が目標です」と語る。
スマセルでの売買のうち成約商品の内訳は、レディス45%、キッズ35%、メンズ20%。取り扱い点数は毎月50%ほど伸びているという。

Zaikology Newsはアパレル業界の度を過ぎた余剰在庫と商品廃棄を解決するには、大量消費を前提にした大量生産から脱却し、適量生産を志向すべきだと繰り返し主張してきた。ただ、適量生産が根付くのは一朝一夕にはいかないし、適量生産が実現しても流通の過程でどうしても一定量の余剰在庫は発生してしまう。
スマセルのようなプラットフォームは、商品廃棄を減らすために今できる現実的な取り組みとして非常に有効だと筆者は思う。

商社時代は捨てるのも仕事だった

福屋氏は大手繊維商社出身。原料から仕入れて企画・製品化し販売する一方で、在庫を処分するのも仕事の1つだったという。
大幅に価格を下げて売り、決算前にもバルクでたたき売り、それでも残った生地は焼却に回さざるを得なかった。そうした業務を繰り返すうち、やるせない気持ちや罪悪感と怒りが混ざった感情がこみ上げてきた。「変えていかなければいけない」という強い使命感に掻き立てられ、一念発起して2015年に起業した。

どうしてアパレル産業ではこれほどまでに余剰在庫が多いのか。福屋氏は「アパレル業界特有の構造とこれまでの慣習が、在庫過多を生み出す原因になっている」と指摘する。
アパレル業界のサプライチェーンは分業体制が積み重なってモノの流れが複雑だ。

1. 原材料
2. 紡績
3. 生地
4. 縫製
5. 商社(問屋)
6. アパレル(ブランド)
7. ディベロッパー(商業施設)

「川上から川下までこのように階層化し、各レイヤーで最小ロットが異なることから、必ず余剰在庫が生まれるようになっている」と福屋氏。例えば、ある紡績会社が糸を100トン作りたくても、原料メーカーが200トンからしか取引してくれなければ、余ると分かっていても糸を200トン作るしかない。
さらに、川上や川中は実需に合わせて作りたい量を作っているのではなく、川下(アパレル)が売れると見込んだ量を作っているという。アパレルが、毎年たくさん売れ残るにもかかわらず前年踏襲で売上計画を立て商品計画を立てているのだから、大量の余剰在庫が生まれるのは当然だ。

福屋氏は「全ての工程が歩み寄らないと、抜本的に廃棄を減らすのは難しい。いかに作りすぎを減らすかと、それでも残る在庫をどう有効活用するかが循環型社会の両輪だ」と強調する。

全工程が販売力に見合った在庫を持つべき

サプライチェーンの各工程が適量生産のために歩み寄る、という福屋氏の指摘について、Zaikology Newsはこう考える。

川上は川中の販売力を考えて生産する
・川中は川下の販売力を考えて川上へ発注する
・川下は各店(リアル店舗、ECサイト)の販売力を考えて仕入れ、配分する

大量生産・大量販売のビジネスモデルが、人口減少によってこの先10年で崩壊するするのが確実な現在、上記のような経営が必要不可欠だろう。
消費者を相手にする川ともはもちろん、川中と川上もそもそも販売力を超過するような在庫を持ってはいけないのが鉄則。それができないと在庫が増え、価格競争に陥るわけで、少ない在庫で回転率を上げた商売ができるようになると、商品の単価は上がる。

Zaikology Newsは、やみくもに商品の種類を増やして在庫を積まなくても「今ある在庫」を使って売上を増やし、その結果、在庫が減っていく在庫実行管理(IEM=Inventory Execution Management)という売上増加に向けた新概念を提唱している。

IEMは川下の小売りにマッチする手法であり、売上を増やして在庫が減っていけば適量発注(仕入れ)に近づき、売れる分だけ仕入れるようになる。
すると、川中~川上の卸売量や生産量も減ってしまうが、それぞれが販売力を超過する在庫を持たないようになる。ここで売上至上主義から利益重視へ経営が変革できれば量は減っても単価上昇で売上や利益は維持、ともすれば増加させることは十分可能だろう。

Zaikology Newsは今後も、ポスト大量生産の売上増加アプローチについて問題提起していきます。