見出し画像

冷水シャワーと日本のありがたさ

歯医者の帰り、郵便受けをチェックしたあと、ふとアパートの掲示板に目が止まった。「ボイラーの工事は予定通り今月18日から行われます。6日間は暖房は使えず、お湯も出ません。ご了承ください。」ご近所さんからメールで最低3日、と連絡が入ったときに予想していたので驚きはしなかったが、6日で果たして復旧するのか、という疑問が頭をよぎった。予定通りに工事が進む方が珍しいのがドイツだからだ。

ロシアですら、お湯が出なくなるのは夏場であって、こんな季節の変わり目の微妙な気候のときではない。モスクワに住んでいたときにも張り紙が出ていたが、工事の影響というよりは定期的に節エネのためなのかお湯が止まるというお知らせがあったのだ。

今回はボイラー工事の影響で冷水シャワーになるというので、気の進まないままジムの会員になったわけだが、さすがに6日間というのは長すぎる。この期間は毎日ジムに通うことになるんだろうか。別オプションとしては近所にある公共プールに行くことくらいである。とにかく18日からの週は強化合宿だと思ってスポーツ施設に通うことになりそうだ。

私にはそういう選択肢があるのでなんとかなる。だが、日本からやってくる高校生にそれが我慢できるのだろうか?ベルリンには大阪の下町のような雰囲気のいい銭湯などどこにもない。そもそも並々とお湯を張って入浴するにはガス代も高すぎるし、それ以前にドイツにはお風呂に入る習慣もほとんどないのである。

メールで一応、工事のことは伝えておいたが果たしてどう受け止めるんだろうか。「え、冷水シャワーしかないってなにそれ。」まぁ、これが一般的な反応なんだろう。それにしてもタイミングが悪すぎる。シャワーのこともそうだが、最近ドイツでは交通機関のストライキも頻発しているからだ。

たかだか6週間とはいえ、日本の交通機関の素晴らしさを身をもって感謝することになるに違いない。日本の裕福な家庭で育った高校生が果たして今のドイツに来て何を思うのだろう。いろいろと興味深いところではある。最近はほとんど来客のなかった我が家。6週間という長さは正直負担に感じるところも大いにあるが、子どもたちもいろいろと良い刺激を受けられるといいな。

日本のような便利な国から海外へ出ると、不便に感じることの方が多いのだが、外に出てみて初めて「普通」だと思っていた各種サービスのありがたさが理解できるということなんだろう。もうそれだけでもドイツに来る甲斐があるというものだ。



サポートは今後の取材費や本の制作費などに当てさせて頂きたいと思います。よろしくお願いします!