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疲れたときは和食がいい

子どものとき、大阪に住んでいたおばあちゃんのところに遊びに行くのが大好きだった。お昼には必ずと言っていいほど中華そばかうどんを作ってくれて、夕飯にはそれはそれは味の染みたおでんやこんにゃくの煮物を出してくれた。

「まりちゃん、これ好きやもんなぁ。いっぱい食べ!」

ほかほか湯気のたつ大根やこんにゃく。そして最高のうどん。子どもの頃に食べた味、というのは身体に染み込んでいるのだろう。疲れているときにはやはり和食の方が身体が喜んでいるのがわかるし、やはりしっくりくる。

ベルリン生まれ、ベルリン育ちの我が家の子どもたちはどうなんだろうか。興味深いことに、娘の方がどちらかといえば和食寄りで、息子の方がドイツ寄りかもしれない。それでも、カレーや麻婆豆腐は好きなんだよな。娘の方が煮物といった本来の和食が好きで、息子の方は煮物はそれほど喜ばない、と言った方がわかりやすいだろうか。

だから、今日の献立だったこんにゃくの甘辛煮を喜んで食べたのは娘で、箸をつけようとしなかったのが息子。ドイツの一般的な子どもよりはマシだとは思うが、娘も私も息子にこう言った。

「食べてみてから好きかどうか決めて。」

それでも食べようとしなかったので、ちょっと残念に思った。12歳の息子に無理強いするわけにもいかないのでそれ以上は言わないで放っておいたが、一般的なドイツの子どもはトマトソースのパスタしか食べない子もいるくらい偏食なので呆れ返ってしまう。

まだ子どもたちが小さな頃はそれぞれの友達が家に来て遊ぶこともあったが、夕飯を食べることになると、パスタ以外は全く食べようとしないので驚いたことがある。稀に味噌汁が大好き!と言っておかわりをした子もいたが、そういう子どもは普段からいろいろなものを食べている。その子の母親は確かスペイン人だったような。

「食育」という概念が余りないのか、幼稚園や小学校、ギムナジウムなどの昼食事情もちょっとよくわからない。幼稚園では人手不足が原因なのか食べ方や行儀作法まで教えているような印象はあまり受けなかった。ご飯の前に手を洗わしているのかどうかもよくわからない。日本のように「手洗いうがいをしましょう」なんていうことも教えないので、コロナ禍になって急にみんな手をきちんと洗うようになったのではないかとすら思う。

小学校の給食、というのも「残さずきれいに食べましょう!」なんて誰も言わないのか、保護者からよく苦情が出るのだ。「うちの子がまた何も食べずに帰ってきたんですが、ケータリング会社を変えてもらえませんか?」え、そっち?好き嫌いが強すぎて食べられるものが少ないのが原因では?と首を傾げることも多かった。息子に聞いたら「そんなに美味しくはないけど、学校のご飯はどっちみちあんまり美味しくないからな」ということだった。

ギムナジウムに通う娘の話で驚いたのは、お弁当を外で立って食べている、ということ。教室で食べる習慣がないので、外に放り出されるらしい。食堂はないのか、と尋ねると、スペースがなくてすぐに席が埋まってしまうんだそうだ。よくよく聞くと、お昼を何も持たずに学校に来る子も多いらしい。そして外へ買いに行くことは禁止。育ち盛りなのにお昼抜きってどういうことなのか本当によくわからない。

とまぁ、食に関してはかなり大雑把なドイツ。「ご飯は大事だよ」ということはせめて家で教えてあげないとな、とつくづく思う。そういえば、日本に帰ると母の作るご飯をふたりとも喜んで食べているよなぁ。「おばあちゃんの味」というやつですね。


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