時間を忘れる
子どもの時からそうだったが、ひとつのことにハマりやすい。それを早々に見抜いたのかはわからないが、両親は私にファミコンを与えようとはしなかった。その代わりに、と言ってはなんだが父親は毎週のように私に本を買ってきてくれた。
当時、何度も読み返した本は以下のとおりである。
・はてしない物語
・モモ
・ガンバとカワウソの冒険
・ナルニア国物語
・少年少女世界文学シリーズ
最後のシリーズについては正式名称は忘れてしまったが、何巻にもおよぶさまざまな童話や物語で構成されたボリュームのある本だった記憶がある。仮にファミコンが家にあったとしたら、あそこまで没頭して本を読むことは無かったのではないかと思う。
とにかく小さな頃から冒険ものやファンタジー系が好きで、特にミヒャエル・エンデの「はてしない物語」は自分の理想が描かれた世界だった。なんといっても現実世界から文字通り本の中に飛び込めるのだからとんでもない話だ。凝った表紙の手触りと二色刷りのデザインを見たときはドキドキした。あの本こそ、ハードカバーでページをめくって読む必要のある一冊である。
小学生の私は学校でかなり浮いた存在だったのだろう、クラスメートにも全く馴染めず(馴染もうともせず)中学受験をしてさっさと卒業したいと思っていたような子どもだった。わざわざ連れ立ってトイレに行ったり、一緒に登下校をする意味合いもよく理解できなかった。授業が終わればさっさと家に帰って「はてしない物語」の続きが読みたいと心の底から思っていた。ただ、料理クラブの部長をしたり、運動会ではリレーの選手として張り切って走っていたので本の虫だったとはいえ、おとなしい子どもだったわけではない。
ここまで引っ張ってきて何が言いたいのかというと、申し訳ないがまたゼルダの話である。快晴の日曜日だというのに、外出もせずさっきまで看板を立てるためにかなりの時間を溶かしてしまった。このゲーム、エノキダ工務店の看板をひとりで支えている男があちらこちらに出没するのである。ひとりで支えているので看板が倒れないようにその辺りに落ちている材料を組み立てて、看板が倒れないようにしてあげなければいけない。非常に芸が細かい。
かと思えば、気になって降りた地下の世界ではあとで攻略しようと思っていたのにあれよあれよという間に「炎の宮殿」に辿り着いてしまった。
そう、やることが目白押しなので延々とやってしまうのである。
読書にハマった頃は毎日1冊のペースでひたすら読んでばかりいた。
中学生のときはバスケ部でシューティングにハマって朝練ばかりして1時間目に寝てばかりいた。
高校生のときに付き合った同級生と毎日ボーリング場に通い、ふたりで300越えのスコアを叩き出していた。
大学生のときに旅先で出会ったベルリンにハマった。
ベルリンに来てすぐにロシアにハマった。
コロナ禍ではやることがなくなってしまったので、気分転換に始めたnoteとジョギングにハマってしまった。ハマるとどうなるのか。とにかく毎日毎日延々と走ったり書いたりするだけである。
ゼルダにハマるとどうなるのか。もちろん好きあらばゲームをすることになる。
非常によろしくない。平日はさすがに大人なので自制するわけだが、休みの日はひたすら塔から飛び上がって空の島々を巡ったり、祠の攻略に唸ったり、地下を徘徊してばかりいるのである。なんという幸せ。時間を忘れて没頭できるものがまだあってよかった。
いや、そうじゃない。そんなことが書きたかったわけではない。何事もほどほどにやりましょう、ということです。多分。
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