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小学生の時に弾いていた曲

ブリュグミュラーの「さようなら」という曲がある。

Adieu ー Abshied ー Farewell

小学生の頃に練習曲としてやっていた記憶がかすかにあって、数日前にベルリンで友人が弾いてくれたのをきっかけに思い出したのだ。

音楽の記憶というのはすごいもので、それこそ何十年も前に聴いていた曲や弾いていた練習曲のメロディーが何かのきっかけでスラスラと出てくる。

メロディーを思い出したら、今度は実際に弾きたくて指がむずむずしてきた。

ネットで検索すると無料の楽譜もコピーすることができたので、早速何度か弾いてみた。イントロを弾いただけで「あー、これだこれ」とやはりどこか懐かしい。

小学生の時に練習曲として先生から渡されたときは、恐らく何の思い入れも感慨もなかったはずだ。「練習曲か、面倒だな」くらいの気持ちで恐らくはろくに練習もしないでレッスン中に何とか辻褄を合わせようと集中して臨んだに違いない。

だが、大人になってから弾いてみた同じ曲は全く違うものに感じたのである。

さようなら

の意味がそれなりにわかるようになったからなのかもしれない。

長く生きれば生きるほど、「さようなら」は色々な形で訪れるものだ。

毎日交わすただの挨拶である「さようなら」、不意の「さようなら」、望まぬ「さようなら」、生き別れのような「さようなら」、永遠の「さようなら」

「さようなら」ひとつとっても色んな「さようなら」があることを私はもう知っている。

弾きながらそんなことを思った。上手に弾けるとか弾けない以上に、もっと大切な何かがそこにはあるような気がした。



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