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映画や本・音楽について

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#ロックダウン

「書く」ということについての本

毎日noteを書こう、と突然思い立ったのはベルリンで初めてのロックダウンが終わった5月上旬のことだったように思う。 撮影の仕事が次から次へとキャンセルになり、これまでの日常が非日常になっていくのを目の当たりにし、接触制限などのルールで行動範囲が狭まっていく。 そんな生活を2ヶ月ほど過ごした反動が大きかったのだろう。自分のこれまで当たり前だと思っていた「日常」がボロボロと脆く崩れ落ちていくような感覚に陥っていたころだ。 自分にタスクを課すことでなんとか精神的なバランスや生

思い込みで固められた世界

本棚を眺めていたら、ずいぶん前に購入してまだ読んでいなかった「FACTFULNESS」が目に入った。表紙にはこう書かれている。 10の思い込みを乗り越え、データを元に世界を正しく見る習慣 思い込みというのは本当に恐ろしいもので、「こうだ」と刷り込まれたり、思い込んでいるうちにそれがあたかも自分の現実であるかのように振る舞ってしまうことになる。 偏見や差別というものも、もしかするとそんな風に生まれるのかもしれない。 大体、人というものは自分の知っている範囲でしか、物事を

タルコフスキー「鏡」

今、また急にロシア語熱が高まってきている。きっかけはDuolingoでロシア語に毎日5分でもいいから触れるようにしよう、と決めたこと。 ベルリン映画祭の代わりに今月は出来るだけ意識して映画を観ることにしているのだけれど、その流れでモスフィルム製作の映画が字幕付きで観れることを発見し、タルコフスキーの映画やロシア映画を改めて見直してみようと思った。 ドイツ語音読もそれに合わせて以前、友人にもらったタルコフスキー自身によるエッセイ集のようなものを読み始めた。 そこで、まず取

カフカスの虜、及びシューリクの新たなる冒険

今月は、ベルリン国際映画祭が開催されないので、「ひとり映画祭」と銘打って映画鑑賞月間にすることに決めた。 前回はタルコフスキー監督作品の「ストーカー」について触れたが、その流れで見つけたモスフィルムのオフィシャルサイト上の作品の中でも特に視聴者数の多かったレオニード・ガイダイ監督による1967年製作されたコメディ映画、「カフカスの虜」を観ることにした。 古き良きソビエトコメディー作品。 民俗学者である青年シューリクは、伝承を採集するためにカフカスへ赴く。そこで彼は「スポー

タルコフスキー「ストーカー」

初めてこの映画を観たのはいつだったのだろう。 ずいぶん前のことなのではっきりとは覚えていないが、映像を観て「これこそロシアの風景だ。」と感じたということはロシアに行ってから観たということなのかもしれない。 冒頭のシーンからその映像美に釘付けになる。 薄暗いほとんど光の差さない部屋と、その部屋の中をようやく覗けるくらい隙間が開いた両開きの扉。 光と影だけがエフェクトになっているとても印象的な絵だ。 タルコフスキーの映画を観ていると、まるで静物画を観ているような気分にな

ひとりベルリン映画祭(ベルリナーレ)

「ブレードランナー2049」を観たのを皮切りに、ひとりベルリン映画祭(ベルリナーレ)の幕が開けてしまった。 要は、皆が寝静まってからひとりで映画を観る、ということを2日前から何となく始めてしまったというわけ。 例年ならベルリン市内の会場になっている映画館に子供たちが小学校に行っている午前中から昼間の上映か、深夜上映に寝ぼけ眼を擦りながら足を運んでいるところだ。 ほんとロックダウン中に自宅でできることといえば限られてくる。思いつくのは映画鑑賞か読書にnoteやブログを書く

冬休みに映画を観た

昨晩、ふと23時過ぎになんとなくNetflixを開いてしまった。 このタイミングから映画観るわけにもいかないよなぁ。 そんな言葉が頭をよぎる。そう思いながら「ブレードランナー」の続編である「ブレードランナー2049」をよく考えずにクリックしてしまった。 ちょっとだけ観てみようかな。 魔が差したのである。ブレードランナーを観たときはまだ日本にいたので、かれこれ20年以上も前になるのだがとにかくリドリー・スコットの世界観に衝撃を受けたのを覚えている。 この映画に影響され