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バイオニンジャと愛の話

概要

 2023年ニンジャソン夏「読書感想文コン」参加用の記事です。

 X(ついったー)で発表したものと内容は同じで、読みやすいだろうということで(誤字とかしれっと直して)ほぼ同じ内容の感想文を掲載しています。

 感想元の記事です。

以下本文

 私はニンジャの読書感想文を書くために、おそらく一年以上ぶりに【イセ・ブルーオーシャンと秘密のロブスターの力】のエピソードを読み返しました。このエピソードは、ニンジャスレイヤー第三部までの間に幾度となく主人公フジキドの前に立ちふさがったバイオのニンジャ、ロブスター=サンの死後しばらく経った時代のお話です。ロブスターを生み出したナカタ研究員がひそかに遺していたメモをたよりに、理知的で美しく甲殻類を愛する女性研究員イセ・ブルーオーシャンが奮闘するシーンから物語が始まります。

 このお話の中でもっとも愛らしさを強調されている存在といえば、やはりイセ研究員が飼育している虹色のバイオザリガニ達です。イセ研究員の主観の中では、バイオザリガニ達はことあるごとに彼女を励まし、両ハサミをめいっぱい振って応援してくれる存在です。一方で、客観的な地の文ではバイオザリガニ達の声は幻聴であると断じられ、イセ研究員も彼らの声が自分にしか聞こえないとおそらく自覚的な様子です。なのに、どうして彼女はいつもバイオザリガニの応援の声を聞いてしまうのでしょうか。理由を考えるなら、イセ研究員が甲殻類をこの上なく愛しているからだと思います。

 彼女の思想は狂気的だと評価されますが、甲殻類への深い愛着は紛れもない真実のものです。愛しているものに貶されるよりは励まされたいと思うのは自然なことですし、もっと言うなら愛する者がそこにいるだけでいつもより力を出せることもあります。本当はエサを求めてハサミを上げているだけかもしれないバイオザリガニも、イセ研究員の目線では彼女を讃えてバンザイするように見えるのは、また自然なことなのでしょう。このお話の中に登場するイセ研究員以外のヨロシ研究員も、バイオ生物の可能性を信じ愛しています。サメの可能性を信じるトガリ研究員もイセ研究員も、紋切型にヨロシサンCEOを目指すのは、信奉する生物種への愛情表現なのでしょう。イセ研究員に襲いかかるアンモナイトすらも白亜紀の夢を愛し、その価値が認められていないと感じれば激怒します。

 私がヨロシ研究員達に対して、思想が極端で近寄りがたいと思う一方で、その愛は真っ直ぐで輝くように良いと思うのは、イセ研究員のような人がたくさんいるからです。狂っていると言われても愛はあるし、愛する者にできる限りを与えようとして自らの命すら投げ出してしまう研究員もいます。この物語全体の主人公であるニンジャスレイヤーも、愛した者を奪われたからこそニンジャを憎しみ、怒り、復讐を果たそうとします。すべてのニンジャはエゴを通そうとし、エゴの多くは愛に根差すのかもしれません。エゴのためにベストを尽くすニンジャは美しいです。だから私は、甲殻類を信じて頑張っているイセ研究員と、ふたりの研究員に愛されたロブスターのことがとても好きです。合体タッグとしてのスプレマシーの活躍は、これからもとても楽しみです。もう一度読み返した今も、そんな期待を強く感じます。ただ、スプレマシーがヨロシサンCEOになってしまうと、ほかの社員や現CEOが路頭に迷ってしまうかもしれないので、ほどほどのところで独立したり系列子会社のCEOに落ち着いてほしいです。矛盾した心理かもしれませんが、これも心の底から願っています。

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