出張先で出会った“ダイレックス“と“ハゲ“

仕事柄、全国各地へ出張することが多い。しかも現場はだいたい人里離れた山の上や海沿いにある。ありていに言えば田舎だ。そんな普段行かないような地域に行った時は、そこにあるスーパーに行くのが楽しみの一つだったりする。自分が住んでいる場所では見かけないような食材やお菓子があって、眺めるだけでも楽しいのだ。

先日出張で向かったのは愛媛県。道後温泉のある松山市から南へ向かったところにある地域での仕事だ。愛媛県に来るのは2回目だけれど、前回は地元のスーパーを見て回る余裕がなかった。今回こそは、と思いつつ車を走らせていると、“ダイレックス“というスーパーが目に入った。

“ダイレックス“は一見スーパーだけれど、看板にはディスカウントストアと書かれている。中国地方や四国、九州地方をメインに展開しているようだ。ディスカウントストアと謳っているだけあって、売られている食材や飲料品は基本的にどれも安い。夏場の作業では熱中症にならないように麦茶やスポドリをたくさん飲むので、とてもありがたい。

飲み物を買い物カゴに入れながら、鮮魚コーナーへ移動する。そこには愛媛県の名産である鯛の刺身がいくつも並べられていた。ぷりぷりとした白身が美味しそうだ。お隣の高知県の名産であるカツオもタタキになって売られていた。ニンニク、醤油と一緒に買ってホテルで食べようかな。そんなことを思いながら眺めていると、気になるラベルの貼られた刺身が目についた。

そのラベルには“ハゲ“と書かれていた。薄く切られた白身が円形に並べられている。さながらふぐ刺しのようだ。先ほどまで夕飯候補だったカツオのタタキはどこへやら、変な名前の魚にすっかり興味津々になった。味が分からなかったので少し悩んでから、せっかくだからと自分を納得させて手に取りカゴに入れた。トレーの中央には醤油刺しがあって、黄土色の何かが乗っていた。多分ハゲの肝だろう。どんな味がするのか楽しみだ。

ホテルに戻ってから、早速ハゲを食べてみる。まずは醤油だけで1枚。想像以上に脂がのっていて美味しい。ただ、ちょっとくどいかな。次は、肝を醤油に溶かして肝醤油で1枚。肝は苦味がまったくなくて、ただただ旨味がプラスされるような、そんな味わいだった。醤油だけだと食べる進めるのは難しかったけれど、肝醤油にした途端にパクパクと食べられるようになった。気がつけば完食していた。ご馳走様でした。

後で調べて知ったことだけれど、“ハゲ“というのは“ウマヅラハギ“の別名らしい。今まで食べたことがなかったけれど、今回の出張のおかげで味わうことができた。出張作業は基本的に肉体労働で辛いことが多いけれど、今回のような新しい食との出会いがあるのなら、ちょっとは頑張れるかもしれない。これからも、知らない食に積極的にチャレンジしていきたい。



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