人が出会う「旅」はなくならないと思う。おてつたび@いちご観光農園
あれから少し時間が経ってしまいましたが、あらためて、千葉市での農業おてつたび について、お話したいと思います。
◆いちご観光農園で、おてつたび!
私が今回行ってきたおてつたびは、こちら。
千葉県千葉市の いちご観光農園『エーアト・べーレ』でのおてつたびです。今回のおてつたびは宿泊なし。現地まで毎日通う2日間になりました!
お手伝い内容は観光農園の受付で、いちご狩りの受付補助や農園内でのいちご狩りの説明と練乳・ヘタ入れのお渡しがメイン。
また、こちらはいちご以外の作物も育てている農園だったので、サラダ菜のハウスでのお手伝いもありました。
土日の2日間、午前中のみのお手伝いは、一緒の期間におてつたびをしたなっちゃんとの出会い(なんと、おてつたびを知ったきっかけが、共通の友人でした、、!)もあり、とっても充実!
日帰り短期では、あまりおてつたびっぽくないのかな?と思いきや、人との出会いもあり、発見もあり、旅してるな〜!と思った週末でした。
◆農園の名は、日本語で『大地の果実』
普段発音しない音で馴染みがない、農園の名前「エーアト・べーレ(=Erdbeere)」というのは、直訳すれば「大地の(=エーアト)果実(=べーレ)」という意味になる、ドイツ語の「いちご」。
オーナーの田中さんが、20代のころにホームステイをしたドイツの人たちの親切さに感動したという原体験から、農園の名前を決める際、ドイツ語の名前にしたのだといいます。
「観光農園」でありながらも、バスツアーの受け入れは一切していないという『エーアト・べーレ』。
立ち寄り先として行程に入れたいという話は何度か来ているものの断っているそうで、お客さんは小さい子のいる家族やカップルなどがほとんどです。
理由を聞くと、「個人のお客さんにゆっくり楽しんでほしい」といった、お客さんを大切にする軸があるからだそうで、その想いはいちごのハウスの中にもあらわれています。それが、こちら。
観光農園に、なぜアスレチックが?
そして、なぜイスやテーブルが??
(ちなみに、色が塗られた5脚は、テレビの撮影で嵐のメンバー5人が座ったイスなのだそう!)
それは、「せっかくいちご狩りに来たのに、30分間食べて、ただ帰るだけじゃあ寂しいじゃん。いっぱい食べたね!楽しかったね!って話をしながら、少しでも滞在時間を長くして、楽しい時間を過ごしてほしい。」という理由。
ここは観光農園なのだから、アスレチックなんか置かずに少しでもいちごを多く植えればその分できるいちごも多くなってお客さんも多く入れられるし儲かるはず。でもそれよりも大事にしたいものがある。
そんな『エーアト・べーレ』には、毎年来てくれるリピーターのお客さんも多く、いちご狩り後にはアスレチックを楽しむ子どもたちの笑顔が光っている観光農園です。
◆お手伝いについてあれこれ
お手伝い内容についても少し。
朝、まずは発送や販売ぶんのいちごを収穫、梱包。いちごは自然のかたちをしているので、一つ一つ、大きさや形に個性があります。
慣れた農園の方たちは、迷いなくいちごを選んで箱に並べていくのですが、これも、初見ではなかなか見分けがつきません。
箱作りや、フィルムかけ、シール張りなどを手伝いながら、スーパーで見かける農作物が来るまでの行程の裏側には、こうした方たちの「見えづらいけど、凄いスキル」がたくさんあるのだろう、と思いました。
それから、いちご狩りの受付が始まる前に、練乳の用意を。
コロナの感染者が増えていた時期だったので、通常に比べれば来園者は少なかったそうですが、受付スタート時間に合わせて多くの家族連れなどが列を作っているのが毎日の光景。過去には、一日に数百人が来園という日もあったと聞きます。
いちご狩りのハウスにて、ヘタ入れと練乳カップが一体になった容器に練乳を入れてお渡しするのですが、その場で用意していてはとても間に合いません。
「今日はこのくらいは来ると思うからよろしく」と農園の方から指示された数の容器に、ひたすら練乳を入れていきます。地味だけど、大切な作業です。
いよいよ、いちご狩りハウスがオープンしてお客さんが入ってきたら、チケットを確認して、諸注意やいちご狩りの終了時間についてお伝えし、練乳容器をお渡し。
そして、いちご狩り終了後には、いちごの畑の清掃などもします。
食べ残しや、いちごをとる際に落としてしまったいちごなども、こうして人の手で綺麗にしているんです。
その他に、サラダ菜のハウスでの植え替え作業や、サラダ菜の出荷に向けた箱詰めの作業も少しだけお手伝いしました。
こちらの写真のサラダ菜は、後日、都内のスーパーでも見かけて、うれしくなりました。(見たことある方もいらっしゃったら嬉しいな!田中さんのところのサラダ菜です!!)
当たり前のことだけれど、スーパーに並んでいる野菜は、私たちが日常的に口にしている食べ物は、こうして誰かが作っている。
頭ではわかっていたことですが、「どこかの農園の誰か」から、「エーアト・べーレの田中さん」という、一人の実在する人にあてはめて実感できるようになって、私はそのことがよりリアルに感じられました。
◆人間は、経済を回すためだけに生きていない
農園の方たちとお話する中で私が「なるほど」と感じたのは、自分が描いている働き方は、ひとつの例でしかないのだということ。
農園の働き手には近所のおばちゃんたちも多く、いつものメンバーで和気あいあいとお仕事をしている、という印象でした。
話をきけば、ここで長く働いていらっしゃる方も多く、「みんないい人たちだから、居心地がいいのよ」といいます。
あるパートさんが言うには、
「私なんかはもう定年も過ぎて時間はあるし、でも、旦那も家にずっといるしで、少しは息抜きをしたり人と関わったりする時間も欲しい。かといって、一日八時間ずっと働きたいわけではないし、ここは丁度いいの。」
とのこと。
「雇用をつくる」というと、「稼ぐ場所を提供すること」だと思っていました。でも、本質はそれだけじゃない。人と出会う場であり、楽しむ場でもあり、その人らしく過ごせる場でもある。そして、たぶん、もっともっとたくさんの見方がある。
たくさん働いた人が、その分の見返りをもらうことは当然だと思う。だからといって、100人中100人が、たくさん働いて見返りを求めるばかりの生き方をする必要はない。
人間は、経済を回すためだけに生きていません。
◆出会いのストーリーをたくさん紡げる人になりたい
今回のおてつたびでいちばん印象に残ったのは、オーナーの田中さんが旅や、人の出会いを語る姿でした。
初日のお手伝いが終わった後に田中さんが、
「明日はゆっくり話す時間がとれないと思うから、今日ちょっと時間もらっていいかな。少しお話しよう。」と、私たちのために時間をつくってくださって、色んなことをお話しました。
たくさんお話しすぎて書ききれないのですが、旅をすること、人と関わることの魅力やそれらの経験が与える影響、そして、人と人が出会うということについて、などなど。
私たちよりも長い時間を生きているぶん、「人との出会い」に関してのアンテナの感度は高いだろうし、私たちが大発見だと思うことも、経験として分かっているんじゃないか。そう思わせる雰囲気をまといながらも壁を感じさせない柔らかさで、気付けば自然と話に夢中になっていて。
対等な旅人どうしの交流の時間という感じがして、なんだか嬉しかったです。
この方は、たくさんの素敵な人に出会ってきたんだろうな。そうやって出会って、縁がつながってきたのも、田中さんの人柄なんだろう。
田中さんのようなかっこいい年上の大人たちと出会い、自分がこの人の年齢になった時はどんな人になっているだろうと想像を巡らせるとき、私は「人の成長に終わりはないな」と思います。
私もまだまだこれから時間をかけて、もっともっとたくさんの素敵な人たちと出会って、たくさんのストーリーが語れるひとになりたいものです。
◆おわりに
年末を機に環境を変えはじめ、働くって何だろう?旅するって何だろう?と考えながらのおてつたびだったこともあり、「仕事」や「旅」に意識が向きながらの2日間だったので、気づいたことは偏っているかもしれません。
そんな、おてつびと自身の状況や価値観によるフィルターを通して発見が生まれていく過程も含めて「おてつたび」なのだと思っています。
人と出会うこと、そこで生まれる心の動きをどこまでも信じる人がいる限り、「旅」という文化はなくならないはず。
あたらしい旅のかたち「おてつたび」。
「これは旅なんだろうか?」という意見を聞くこともあるけれど、人と人が出会い、風がゆらぎ、糸が繋がる「おてつたび」の経験は、やはり、人が求めてしまう「旅」の一つのかたちなのではないでしょうか。
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