見出し画像

前回りで声を出す

 声楽のレッスンでは、毎回何かしらの気づきがあって楽しい。
 かれこれ十五年以上、合唱を続けてきて、それなりに自分の声や歌い方に満足していたが、それが思い違いだったことに思い至り、友人に声楽家の先生を紹介していただいたのが、去年のことだった。
 平均すると月イチ通うのがやっとだが、それでも、毎回、自分の癖や勘違いを思い知らされ、一時間のレッスンを通じて、それが直っていく、声や歌い方が変わっていくのを体感するのは嬉しいものだ。まだまだ自分は成長できると思えるからだ。
 いつも指摘され、自分でも実感しているのは、一音一音、楽譜の音をたどっていこうとする癖だ。楽譜通りの音を出すだけでは音楽にはならない。音を置いていくのではなく、つなげていく。きちんとお腹から声を出して、それをつぶつぶではなく、フレーズとして表現する。
 そのために、先生は「前回り」という表現を使う。そう、あの鉄棒の前回り。脚をつかずに回る連続前回りである。
 落下せずに一回転するためには、お腹が常に鉄棒についていなければならない。ひとつのフレーズの中で声を出す時も同じような意識をもって、つながるように歌う。
 自分なりに解釈すると、これがうまくいくときは、それなりに角度のついた斜面を、カタツムリのように、ジワリと登っていく感覚だ。粘り強く斜面を這って上がる、そんな感じである。
 試行錯誤の末、今日はそのコツを、少しつかめたような感覚があった。なかなかの収穫と言える。
 響きのある声を、勢いに乗って高音部でもきちんと歌っていくためには、この感覚をしっかり自分のものにして無意識でもできるようにしていくことだろうか。忘れずに復習していこうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?