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『英国ロイヤル・バレエ団「眠れる森の美女」金子扶生』

 録画してあったWOWOWの番組をようやく観た。「ファースト・ソリストの金子扶生が急きょ主役を務めて大成功を収めた伝説の古典バレエ 」とある、2020年の1月16日の公演だ。カレンダーを見返すと、その前の週には、コベントガーデンで『ラ・ボエーム』を観たとある。コロナの足音は、まだロンドンや東京には届いていなかった。10日にロイヤルオペラの「ラ・ボエーム」を鑑賞し、今年はどんな一年になるのか、METやコベントガーデンで、どんなオペラを観る機会に恵まれるかと、ワクワクしながら帰国したのは15日だった。

 出張であっても、時間が許せば、いや時間をひねり出して、オペラやシンフォニーなどに通ってきたが、バレエはいわゆる「食わず嫌い」というやつで、縁遠かった。ところが先日、2018年にNHKで放送された日本人のプリンシパル、高田茜さんと平野亮一さんのドキュメンタリーの再放送を観て、少しバレエに興味がわいてきた。もしかしたら、素晴らしい世界を知らずに、人生損をしてきたのかもしれない? そんな気がしてきたところに、同じく昨年プリンシパルになられたという金子扶生さんの公演が放送されるというので、録画しておいたのだった。

 オペラを見慣れている身としては、しかも舞台がコベントガーデンだと、チャイコフスキーの美しい旋律に胸躍らせながら、いつまで待っても歌声が響き出さないことが、ひどく不自然に思えて、これは見続けられないかなとリモコンに手を伸ばそうとまでした。だが、あらためてダンサー達のそれこそ一挙手一投足に目を凝らすと、よく知られた物語であることを割り引くとしても、彼らの表現力に少しずつ引き込まれていくことになった。

 高田さんと平野さんのドキュメンタリーでも描かれていたが、プロの、しかも一流のバレエダンサーは、とことん自分をいじめ抜いて、体力と技術、そして芸術性と表現力を獲得していくのだという。そういう視点から見ると、一つ一つのステップやスピンにハラハラドキドキさせられ、技が決まるたびに、思わず拍手を送りたくなってくる。

 もちろんバレエは芸術であり、表現であるが、ふと五輪の種目になってもいいのではとさえ思えてきた。冬季五輪にはフィギュアスケートがあるのだから、あながち的外れとは言えない気もするのだが。そのくらい彼らは一流のアスリートなのではないか。

 王子様の口づけでオーロラ姫が目を覚ましても、それで happily ever after とならないところが、また面白い。赤ずきんちゃんと狼、長靴を履いた猫に、あれは美女と野獣? もうここまで来るとなんでもあり。作品の背景やバレエの様式について、深く学んでいないので、なんともまか不思議な世界を覗いてしまった、としか言う他はないのだが、月並みな言い方をすればなんとも奥が深い。

 この先、その森の奥深くまで引き込まれていくのかどうかはまだわからないが、再びロンドンの地を踏むその日が来たら、今度は生のバレエの舞台をぜひ鑑賞したいと思う。コベントガーデンを訪れる楽しみがまた増えた。

『英国ロイヤル・バレエ団「眠れる森の美女」金子扶生』
WOWOWライブ 2022/02/28 放送 回を録画にて後日視聴
2020年1月16日 イギリス・ロンドン ロイヤル・オペラ・ハウスにて収録
今後の放送 WOWOWライブ 2022/3/21(月・祝)午前9:00

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