CLILの授業例①多文化共生について考える授業

 CLILとは、Content and Language Integrated Learningの略です。「内容言語統合型学習」と訳されます。すごーく簡単にいうと、英語で他教科の内容をアクティブ・ラーニング形式で扱うスタイルの教授法です。

 おおまかな枠組みは前回の記事で紹介させていただきました。よろしければこちらもご覧くださると嬉しいです。

 さて、今回は「4つのC」にもとづく授業内容の一例を紹介してみたいと思います。これでCLILのイメージがより一層伝わるとうれしいなと思います。

「4つのC」で見る指導内容のまとめ

 「多文化共生」について生徒たちと一緒に考える授業を実践したことがあります。そのときはおおまかにいうと、以下のような授業構成でやってみました。

(1)いろんな文化を教師が紹介して、多文化に興味をもってもらう
(2)自分でも世界のいろいろな文化を紹介して、他の人に英語で紹介してみる
(3)文化的差異が軋轢を生みうるという事例をいくつか紹介する
(4)日本って異文化に優しい?って皆で考えてみる
(5)身の回りに小さな変化を起こすアクションプランを考えてみて、実践してみて、英語でプレゼンして報告する

 こんな感じの活動を英語でやりました。これを「4つのC」のフレームワークごとにタグづけすると、次のような感じになると思います。

(1)いろんな文化を教師が紹介して、多文化に興味をもってもらう
 →内容、協働学習
(2)自分でも世界のいろいろな文化を紹介して、他の人に英語で紹介してみる
 →内容、言語、協働学習
(3)文化的差異が軋轢を生みうるという事例をいくつか紹介する
 →内容、言語
(4)日本って異文化に優しい?って皆で考えてみる
 →内容、言語、思考
(5)身の回りに小さな変化を起こすアクションプランを考えてみて、実践してみて、英語でプレゼンして報告する
 →内容、言語、思考、協働学習

 いかがでしょうか?すこしCLILのイメージできてきたな、と思っていただければとても嬉しいです。しかしそれと同時に、いくつか疑問も出てきたんじゃないかと思います。たとえば「いきなりこんな活動英語でできるの?」とか、「教える内容って、他教科のことじゃないといけないんじゃないの?こんなにカルいものでいいの?」とかでしょうか。1つ目の質問はとても大事なのでまた後日書くとして、2つ目の質問はここで答えちゃいたいと思います(勝手にぼくが想定しているだけですが...)。

英語で扱う「内容」って、そんなにカルいものでいいの?

 結論からいうと、OKです(笑)「他教科の内容を英語で!」と言う時点で相当ハードルが高いCLILですが、実はそんなことないんですね。

 日本のCLIL実践については研究もすすんできて、専門家のなかには「日本ではこういうカルめのトピックのほうが現場になじみやすい」とおっしゃる方もいるくらいです。

 指導内容をかんがえるとき、実は「他教科の内容であるか否か」よりも大事な要素があるんじゃないかと僕は思っています。

 それは「最終的な結論は生徒に委ねる」ことができる内容になっているかどうかです。なぜならCognition [思考] が指導対象のうちの1つに入っているからです。

 Cognition [思考] を指導対象とするっていうのは、すごーく簡単にいうと「授業内で得た知識をつかって、自分なりの考えを表現できる場を保証する」ってことになります。そして、「自分なりの考えを表現する」ためには、「最終的な結論を生徒に委ねられる」話題が指導対象になってなければいけません。

 たとえば足し算のやりかたを生徒に英語でおしえて、それを実際に英語でやってみるときに、単なるドリル的な問題を繰り返すだけで終わっちゃったとしますよね。それではちょっとCLILとは言えないです。「自分なりに考える」余地ってのがほとんどないので。言われたことやってるだけですよね。これでは「自分なりに考える」ことを指導する余地がほとんどありません。

 でもたとえばこの足し算の授業でも、最後に「じゃあ身の回りにおきた出来事を、算数の式であらわしてみて。それが何故その式になると思うか、英語で説明してね」というタスクを最後に設定すれば、それだけでぐっとCLILっぽくなります。

 この観点でいうと、「多文化共生」っていうトピックって生徒が色々考えを巡らせやすいので、けっこうCLILっぽくしやすいなというのが授業やってみた僕の感想です。ましてや授業の最後のタスクは「アクションプランを考えて自分でやってみよう」ですから、人によって全然ちがう考えをして実践してみることが可能になります。この機会を提供してはじめて、「授業内で得た知識をもとに自分なりに考えてみる」ことに対する指導ができるようになるわけですね。

 「思考を指導する...って、どうやって?そんなことできるの?やっちゃっていいの?」という方もいらっしゃるかもしれません。それについてはおいおい書いてみたいと思います。

 あとは「CLILやることが目的になっちゃってない?なんでCLILやるの?」という疑問もよく頂戴します。これについてもできるだけすぐに書いてみたいです。

 長くなってしまってすいません。お付き合いいただき、感謝してます。

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