ポールには友達がいない ~残念なビートルズ(2)「ポールにはセンスがない?」
ポールの名曲「オブラディ・オブラダ」が、2004年にインターネット上で行われた「50 Worst Songs Ever!」(最悪の歌・ワースト50)という投票において1位を獲得しています(ウィキペディアより)。
「Worst Songs Ever」という企画は、いつもどこかで似たようなものをやっていますね。そこでは、いろいろな曲が名誉あるワースト1位を獲得しています。ですから「オブラディ・オブラダ」が決して不動の「Worst Songs Ever」の1位というわけではありませんが、いずれにせよ、2004年のその集計では1位だったというわけです。まあ、膨大な数の忘れられた曲がある中で、発売後36年も経って1位とは。いかにこの曲が嫌われているか、知られているか、そして記憶されているか、わかりますね。
おそらく、この曲を一番嫌っていたのはジョン・レノンでしょう。
レコーディング・エンジニアのジェフ・エメリックは、ジョンが「ポールのおばあちゃんソング」と罵っていたと語っています。
また、ジョージ・ハリスンも、この曲が嫌いだったようですね。同じくホワイトアルバム所収の彼の作品「サボイ・トラッフル」の歌詞に、ちょっと皮肉っぽく「オブラディ・オブラダ」が登場します。
ポールはこの曲をシングルカットしたがったのですが、メンバーが反対して実現しませんでした。とほほ。やっぱりね。
(*当時は契約が大雑把で、日本ではシングル盤が出ています。A面「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」のB面)
さて、メンバーには嫌われたこの曲ですが、多くのミュージシャンにカバーされました。
日本ではフォーリーブスがNHKの「みんなのうた」で日本語版を披露。そのほか、田中星児やボニー・ジャックスがカバーしています。どれもこれも「おばあちゃんソング」ですね。カーナビーツは主人公の「デズモンド」と「モリー」の名前を「太郎」と「花子」に置き換えました。まさに、おばあちゃんソングです。
日本語を母語にする私たちは、きっとこれらのカバー(特に太郎・花子)を聞くことで、メンバーの「ポール、これ、本当にやるの?」感を味わうことができるのではないかと思います。
レコーディングは仲間だから付き合うって感じだったようです。「みんなでやると決めたらみんなでやる」は、ビートルズの不文律のようなものです。ダメ出しを続けるポールに切れまくったジョンが力任せに弾いたピアノ、それがあの前奏になりました。
ジョンが嫌ったポールの曲は、ほかに「When I'm Sixty-Four」「ハロー・グッバイ」「Maxwell's Silver Hammer」など。
そういえば「When I'm Sixty-Four」は、テレビ番組「ひらけ!ポンキッキ」で、なぎら健壱が「空飛ぶ三輪車」という、メロディーとアレンジ、ともに完全パクリ(許可必須レベル?)の歌を披露しています。
(前奏だけで充分です。0.8倍速くらいがいいかも)
「ひらけ!ポンキッキ」ですからね。なんとなく、わかりますね。
「みんなのうた」「ひらけ!ポンキッキ」。
やっぱり、これも「おばあちゃんソング」です。
この「おばあちゃん」のセンスが、時々顔を出すのがポール。
ポールをダサいという人は、この「おばあちゃん」に引っ掛かる人たちかしらん。
ジョンの死後、ポールがスティービー・ワンダーとリリースした「エボニー・アンド・アイボリー」。黒鍵と白鍵を黒人と白人に例えて世界平和を歌う名曲です。「ポールのイマジンだ!」と呼ぶ人もいるようですが、この曲もどこかのワースト50に入っていたと思います。ジョンが生きていたら「イマジンと比べるな! そもそも白・黒のベタな発想がダサい」とか言ったんじゃないかしらんと勝手に想像してしまいます。
ポールの音楽体験の原点は、お父さんが弾くピアノで皆が盛り上がるホームパーティだったかもしれません。その影響で幅広いジャンルの音楽を抵抗なく自分のものにする柔軟性と、それを楽曲としてアウトプットする才能に恵まれました。「ローリングストーンズは、ただのブルースバンド。ビートルズの音楽は幅広く、より優れている」な〜んて口にしてしまったこともあります。その幅広さが、時にロックンローラーには理解できない「おばあちゃんソング」も作ってしまうのでしょうか。しかしワーストにもベストにもなる人気曲だから、癖が悪い。やっぱり天才だから、ね。
ところで、もちろんジョンはポールの曲で好きなものも語っています。
たとえば、
All My Loving
Got to Get You into My Life
Here, There and Everywhere
For No One
Why Don't We Do It in the Road?
The Fool on the Hill
Oh! Darling
いやー、納得の名曲ぞろい。さすがジョンのセンス。そしてポールの天才。
ビートルズの解散以降は、こういうセンスを持つジョンとのやり取り抜きに曲を作っていかなければならなかったポール。
ソロになってからの作品については評価が分かれるところですが、やはりジョンがいないのは痛いですよね。
返す返すも、残念。
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