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色彩の教科書(27)リクルートスーツが黒になった理由

少しご年配の方ならご記憶があるかもしれないが、以前、リクルートスーツといえば、紺色(濃紺)をしていた。これはもちろん、学生が自分の好みではなく、企業の担当者に気に入られるため、自分を知的で誠実に見せるために選んだ色だ。しかし、ずいぶん前から黒が主流となった。ここには学生たちの心理の変化がうかがえる。相手に好印象を与えるより、もっと彼らにとって大切なことがあるのだ。それは、怖い社会、知らない人から自分を守ること。黒は、まわりから距離を置き、自分が守られていると感じる色なのだ。

ちょっと恐ろしいトマトの実験

黒い色に関するちょっとした実験がある。
まだ熟していないトマトを三つ採って、これを白い布、赤い布、黒い布で包み、日光の当たるところに置く。ツルに残ったほかのトマトが熟したころ、この三つの袋を開けてみる。すると、白い布のトマトは、ツルに残ったトマトと同じように熟している。しかし赤い布のトマトは発酵するほど熟し、反対に黒い布のトマトは、緑のまま萎んでしまっていた。これは、色による太陽光線の透過の違いによる。白は光の大部分を透過させ、赤は偏った波長だけを透過させ、黒は全ての波長を吸収してしまう。この黒の影響は人間に対しても起こる。黒い衣服ばかりを身につけていると、身体に必要な太陽光線が透過せず、熟さないトマトと同じように肌がシワシワになってしまうという。


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