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なぜ、未亡人は美しく見えるのか? Chapter 1  世の中は「色」仕掛けに溢れている(7)

ウチのポチには何色に見えている?

犬の目に映る色は人間と違っている

「わー。ほら見て見て、きれいねー」
「ホントだね。あっ、ほら、あそこの花。赤い絨毯みたい」
眺めの美しい場所などに出掛けますと、もうこんな会話の連続です。広々とした風景に一面の美しい花などありましたら、やはり感動の声も出てしまいます。
ところで、こんなことを考えられたことはないでしょうか。
「今、自分が見えてるこの風景、たとえば、この赤い花や青い空は、他の人にも同じように見えているんだろうか? 本当に同じ色として見えているんだろうか?」
自分が今、赤として見えている色が、実は別の人には(私が思う)黄色に見えている。
もしそんなことが起こっているとしたら…。
さすがに同じ人間同士のことでしたら、同じ構造の道具(目や脳)を使っているわけですし、そう大きな違いはないだろうと想像は付きます。
しかし、これが人間でなく、別の生き物だったらどうでしょう。
「きれいなお花ねー。ほら、ケンちゃん(犬の名前)は大好きなのよねー!
赤いお花が」
なんて日ごろ犬バカ(親バカならぬ)の会話などよく耳にしますが、犬は本当に同じ色としてそれが見えているのでしょうか。人間同士の場合とは異なり、これは、どうも簡単に「同じ」とはいえないような気もします。
早めに正解を申し上げましょう。
どうやら犬には、色が見えていないようなのです。
そんな学説が、今のところ大勢を占めているとのこと。つまり犬は、白黒の世界、明るさの差が中心のモノトーンの世界で生きているのです。犬バカの皆さんにとってショックかもしれませんが、どうやらこれは事実のようです。
ですから、いかにも嬉しそうに、赤い花のところに鼻などを突っ込んだりしているものの、実は赤い花もただの白黒。特に赤い花が好きなわけではなかった、ということになります。
花を好きそうにしていたのは、香りが好き、あるいは人間が喜ぶから、そんな犬の事情だったのかもしれません。
それでは、人間以外の生き物は、みんな、色が見えていないのでしょうか。
たとえば、人間に一番近いとされるサルはどうなのでしょう。あの赤いお尻はおサルにとって何の意味もないのでしょうか。あるいは鳥は「鳥目」というくらいですし、色を見分けることもあまり得意ではなさそうな気もします。
正解は、「犬には見えないが、サル、鳥はきちんと色彩が見えている」。
これが事実のようです。あの高等な生き物にして人間の永遠の友、犬には見えない色彩が、鳥やサルには見えているのです。

色彩認識はそのルーツから来ている

実は、いろいろな生き物が色彩を認識できるか、できないかはその生い立ちが非常に大きく影響しています。どのような進化をとげてきたか、そのルーツによってその生き物が色彩を判別できるかが決まってきます。
たとえば鳥の場合。鳥はどのように進化してきたのか。これがモノの見え方に大きく影響してきます。
進化の世界において、鳥は爬(は)虫類から進化したといわれています。それでは、先祖となった爬虫類は色彩が判別できるのでしょうか。
ご存知の通り、爬虫類の体色は実に多彩です。
木や葉っぱ、あるいは地面。周りの色と同じように体色を持つことで、長く生き抜いてきました。中には、カメレオンのように周りの色に即座に自分の色を合わせる能力を持っているものさえあります。周りの色を識別することは死活問題ですから、もちろん色彩の識別能力を持っています。
鳥に関しても同様です。周りの環境に身体の色を順応させていく重要性は爬虫類と同じです。当然色の識別能力を持っています。
では、犬はどうして色を識別できないのでしょう。
これは夜行性だったことによります。犬だけではなく、哺乳類全体がそうでした。
恐竜が絶滅し、代わって繁栄することになったのが哺乳類です。しかし恐竜が栄えていた当時は、恐竜と同じ地に住むため、恐竜が眠った夜にしか安全に活動できませんでした。夜行性の生活です。
現在の赤や青のネオンのともる世界と違って、当時の夜の世界は完全な白黒です。
つまり生きていくために色彩は必要ありませんでした。
色よりも、光、つまり白黒の世界で感度を上げたり、嗅覚や聴覚の機能を向上させる方が生きるために重要だったのです。進化の中で必要ない能力は退化していきます。つまり犬は、色彩を必要としないまま現在にいたってしまったわけです。
なるほど、そう考えれば、今でも必要かどうかという意味でいえば、犬は色彩を必要としている生活を送っているわけではありません。
では人間の場合はどうでしょう。人間の祖先、サル(霊長類)は、他の哺乳類と同様、夜行性の生活を送っていたことでしょう。しかし、次第に夜の生活を捨て、昼間の森での生活を始めることになります。
すると、あの緑色と茶色の世界にあって、食料となる木の実など、色を識別する必要が出てきました。何十万年もの進化の歴史の中で、この必要性がサルや人間に色彩の識別能力をもう一度与えることになったわけです。


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