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なぜ、未亡人は美しく見えるのか? Chapter 1  世の中は「色」仕掛けに溢れている(4)

和室が和むと感じるのはなぜ?

何気なく和室で和んでおりますが

「たまには温泉にでも出掛けてゆっくりしたいね、お湯に浸かってさ」
と楽しい旅行に出掛ける場合、あなたはどんな部屋にお泊りになりたいですか?
「当然和室!」
太陽燦々、浜辺のリゾートというなら話は別ですが、
「ゆったり!」しに温泉に出掛けて行った温泉宿で、あえて洋室を好む人は少ないと思います。
「やっぱり、ああいう温泉では畳に布団だよね。脚も伸ばせない椅子とテーブルじゃ、くつろげないし」
そんな声が聞こえてきそうです。
和室には畳と布団、洋室には椅子とベッド。
しかし、よく考えてみると、両者の人が受ける「ゆったり感」の差は、単に座り方や寝具のスタイルの違いだけではないような気がします。
むしろ、部屋全体の持つ優しさが決定的に違うようにも思えます。

実は、和室と洋室の最大の差とは、その部屋全体の「色」の差です。
旅館の部屋、あるいはあなたの家にある和室の様子を思い浮かべてください。どんなものがありますか。
天井の木目。アイボリー色の壁。床の畳。障子を通した穏やかな白い光。いずれもベージュ系。
実は、人が一番安心できる色というのは、自分の肌の色と近い色である、という研究結果があります。野生の生き物でも、自分の身体と同じような色、つまり保護色の中にいると落ち着くといいますから、人間も同じなのでしょう。この保護色は日本人の場合は肌色に近いベージュ色。この色がとても落ち着く色となります。
畳で足をのびのびさせてたい!
という気持ち以上に、この本能が求める配色こそが、「ゆっくりしたい」「リラックスしたい」という気持ちに応えてくれているのです。

和室の「明度」に秘密あり

それなら、洋室にだって、この配色をすれば、同じ効果が得られるのでは?
という気もします。確かにその通り。ある程度の効果は、同じ配色をすることによって得ることはもちろん可能です。
しかし、それでもリラックス度はどうしても和室にかないません。やはり畳は、ごろっと横になれるし、あぐらだってかける。本当に楽な姿勢でいられるからでしょうか。確かに心情的にはその通りなのですが、実は洋室には絶対に真似できない、和室の持つ構造上の違いがあります。

それは、和室の光の効果です。
和室は、同じベージュ系で部屋全体がまとまっているのですが、そのベージュの中で微妙に差がある配色が行われているのです。
実は和室では、下からから上に向かって徐々に色が明るくなっていくよう、素晴らしいバランスで配色が行われています。つまり同じベージュ系でも、下から上に、落ち着いたベージュから明るいベージュへと移り変わっているのです。

色の明るさは、明度という言葉で表されます。和室をこの明度の尺度で眺めてみると、その見事さがわかります。
明度40%の畳。正面には柱などに使われている木目、これが明度50%〜53%。ベージュの化粧壁が明度55〜60%。そして天井。きっと明るい感じの木目が使われていると思います。これがだいたい明度60%強。そして、この部屋にやってくる方々の肌の色、これがちょうど明度50%当たり(日本人の場合)。
つまり、一番落ち着く自分の肌の色を中心に、目線より下は若干押さえた明るさの色、目線の正面には同じかやや明るめ。上に行くほどさらに明るめの色が配置されています。
上に行くほど、同じベージュでも明るくなっていることで、天井と空間の圧迫感が最小限に抑えられ、部屋が広く、天井なども高く感じられ、開放感も高まります。

もし、これとは逆に、上に行くほど落ち着く色になってしまうと、それだけで「重い」「狭い」という印象を見る人に与えてしまいます。
たとえば、黒っぽい和室の天井など想像してみてください。せっかくの湯上り、なんだか肩が凝ってしまいそうです。
洋室が真似できないのは、こうした明度の演出です。洋室では、立体的なベットやサイドボード、デスクなど置かなくてはいけない関係上、視野なども途切れ、こうした部屋全体の階層的な演出が難しいのです。
ところで、日本人の場合、肌色が保護色であり、安心する色なのですが、肌の色が違う世界中の人たちにとっても、同じようにそれぞれの肌色が落ち着く色に違いありません。
世界各国の部屋の色などをさまざまな機会に目にしますと、国によって明らかに好みの色、特に壁などに使われている色のセンスが違っているようにも思えます。
その理由の一つが、肌色の違いなのかもしれません。

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