「苦しかったときの話をしようか」

 なんとなくのあこがれやイメージで会社を選び、会社に決められた環境で、自分にどんな力が身についているのかわからないまま働いている。
そんな人は少なくないのではないでしょうか。
 私もそんな一人です。何もできない1年目のころは、ただがむしゃらに何かをしなければと思って必死に働きましたが、2年目になってある程度職場での過ごし方がわかってくると、毎日降って来る仕事をこなすことで満足し、新しく何ができるようになるわけでもなく、漫然と日々を過ごしてしまっています。

 とりあえず現状を維持している自分に危機感を抱きながらも、どう行動を起こせばいいのかわからない、そんな人にぴったりな名著です。

「苦しかったときの話をしようか」


 新卒でP&G入社、その後USJに転職し奇跡のV字回復を成し遂げ、現在は株式会社刀の社長である森岡毅さんが、社会人になる愛娘のために書き溜めた手紙を書籍にしたもの。著者が本気で娘のことを想い、社会で生き抜いていくためのノウハウを丁寧に説明した1冊。

 細かいことは抜きにして、本書で説いている社会の生き抜き方は、「自分の持って生まれた特徴を強みに変える文脈(環境)を選んでいく」こと。
そのために、
①キャリアの目的を定め、
②その目的を達成するための自分の特徴(強み)を見極め、
③その強みをどう活かしていくか 
を考えていきます。

 詳しいやり方は本書を読んでいただきたいのですが、ざっくりと説明します。
①キャリアの目的の定め方
  どんな「こと」が目的なのかではなく、どんな「状態」であれば自分が
  ハッピーなのかを考える
②目的達成のための自分の特徴(強み)の見極め方
  強み=自分の特徴+特徴を活かす文脈
  なので、自分が好きなことをしている文脈(○○の時に、××したこと)
  をひたすら書き出し、T(Thinking)、C(Communication)、
  L(Leadership)に分類。
③特徴を活かせる職能の考え方
  たくさんある職能の中から、自分の特徴(強み)に圧倒的に適していな
  い大凶以外を選ぶ

 これらが定まったら、後はその職能を伸ばせる環境を探して、ひたすら泳いでいけばいいのです!

 さらにこの本には、職能を伸ばすため、周りに対してどう自分をブランディングするのか、どうやれば理想の自分に近づくことができるのかまで書かれているのです!
 使うのが、「ブランド・エクイティー・ピラミッド」
自分の強みを周りの人に理解してもらい、なおかつ理想の自分に近づいていくための地図のようなツールです。
作製方法の概略は以下の通り。

①自分が活躍する戦場を定義
 目的と、自身の経営資源に照らして、広すぎず、狭すぎない市場を選ぶ
②WHO:「誰に」買ってもらうのか
 資源を少しでも投下する広いくくり「戦略ターゲット」と、特に集中して
 資源を透過するくくりである「コアターゲット」を定める
③WHAT:「何を」買ってもらうのか
 便益・・・目には見えない、本質的な価値を定義する
 RTB ・・・便益の根拠
④HOW:「どうやって」買ってもらうのか
 便益を提供する手段
 ブランドキャラクター

作成の際、
・Valuable 価値は十分強いか
   WHATが相手にとって買いたいものになっているか
・Believable 信じられるか
   RTBは信じるに足る根拠になっているか
・Distinctive際立っているか
   WHOに選ばれる確率を高める差別化
・Congruent 自分の本質と一致しているか
   RTBなどの事実に嘘はないか、本来の特徴と大きくベクトルがずれて
   いないか
に気をつけながら、自分の向かう方向の理想形を描くだけ。

 作成したら、あとは理想の自分に近づくため、ブランド・エクイティー・ピラミッドの自分とできるだけ一貫した行動をとるのです。


 ここからは、実際に上記をやって分かった自分の目的、強み、伸ばしたい職能と、ブランド・エクイティー・ピラミッドを公開します。

①自分のキャリアの目的
  集まった各自が得意なことを活かし、能力を結集して困難な目的を達成
  する。達成感を味わう。
②キャリアの目的を達成するための自分の強み:L(Leadership) 
  高い目的意識で起点となって周囲を動かし、組織に高いパフォーマンス
  を発揮させる能力を武器にキャリアを切り開いていく
③特徴を活かすために身につける職能:プロジェクトマネージャー
                  管理職
                  マーケター 
                     戦略的・論理的思考力
                     目的志向・意思決定力
                     提案力・組織マネジメント力

 自分の生きがいは目標を達成することです。強みであるリーダーシップを発揮しやすい職能であるプロジェクトマネージャーや管理職、リーダーとなって働きたい。
 そのために、正しい目的を見抜き、勝ち筋を見極める戦略的・論理的思考力、目標を達成するためにすべての行動が向かう目的志向・意思決定力、相手・周囲を動かす提案力・組織マネジメント力を磨いていく。

ブランド・エクイティー・ピラミッド
①戦場
  改革者
  自分が起点となり周囲を変えていく市場
②WHO
  戦略ターゲット:自社の人々・店舗のスタッフ
  コアターゲット:上司・上司の上司
③WHAT
  便益:目標に向かって行動・努力する力 常に目標を上回る達成力
  RTB:結果・実績
     苦しいこともやり続けられる気持ちの強さ
     目的達成のために努力を惜しまない
④HOW
 目標達成の鬼
   a.正しい目的を見抜き、勝ち筋を見つける戦略的・論理的思考力
   b.目標を達成するためにすべての行動が向かう目的志向・意思決定力
   c.自分起点で周囲を動かしていく提案力・組織マネジメント力
 ブランドキャラクター:論理的・情熱的・ついていきたい

 まだまだ深堀できていない甘々な自己分析ですが、「強みは目標に対して努力できることかな・・・」となんとなくの直感を信じるしかなかった自分と比べると、向かうべき方向性や、力を入れるべきポイントがわかり、自分の明日からの行動は間違いなく変わります。
 自分が正しいと信じる目的を達成するために、できることはすべてする。たとえ自分が苦手なことでも、目標を達成するために必要であればいとわない。目標を達成するために周囲を動かし、勝ち取る。そんな理想の自分が取る行動と同じ行動を取ればいいのです。

 「がむしゃらに働いていればいつか何かが身につくはず」という、自分でも納得できないけれど、それ以外に方法がわからないからそこにすがるしかなかったのがウソのように、自分の進むべき道が見えてきます。
学生も、社会人も、キャリアに悩む全ての人に本当におすすめです。

 最後に、私が座右の銘にしたいくらい好きな一節を紹介して終わりたいと思います。
「昨日の自分よりも今日の自分が、一体何を学んで、どう賢くなったのかを問える君であり続けてほしい」

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