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『これって本当に「繊細さん」?と思ったら読む本』の読書感想文①

誰がご覧いただいているか分からなくても、毎日素振りをして少しずつリハビリをしていこうと思います。

確かに、冷蔵庫の中身を即席の素材にして、書いている感覚に近いのかもしれないですね。有難や…!

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さて、本日は読書感想文を書いてみます。
題材にしたのは、武田友紀ほか『これって本当に「繊細さん」?と思ったら読む本』日東書院本社,2023年。

それでは、早速始めていきますね。

HSPって何だろう?

まず、そもそもHSP(Highly Sensitive Person)はアメリカの心理学者、エイレン・N・アーロンが提唱した概念です(p.6より引用)。提唱してから30年、まだ歴史も浅く、新しい分野であることから、この書籍によりその概念を詳らかにするというよりは、著者の臨床体験などからHSPの一部を照り合わせ、本を通して少しでもその全貌の理解を深めるための一石になればとの願いが、冒頭の部分で記されています。

参考文献も充実されているので、安心して読み進められると思います。

何ともアーロンが行った調査によると「生まれつき繊細な人」は5人に1人の割合で存在するとのことです。HSPでは中枢神経系が刺激に反応しやすく、そのほか偏桃体、海馬などにも明確な活性化があると、書籍のなかでは文献に沿いながら丁寧に述べています(pp.17-18)。つまり、脳の神経系の要因が大きいのですね。

HSPは今まで全く発見されなかったわけではなく、心理学の「内向的」などの部分に内包されていたり、一般の方からは「神経質」と捉えられていました(p.20)。従来、概念(先天/後天など)が混沌としていたところ、基本的気質としての「敏感さ」に腑分けしフラットに捉え直したのがアーロンでした(p.20)。

そもそもHSPとは心理学の概念であるため、たとえば病院に行き相談をしても、HSPという診断書を書くことはできず、医学に基づいた不安障害やうつなどの枠組みで診断することになります(p.22)。インターネットやSNSでは、後天的な疾患とHSP気質が混ざったまま周知されている現状があります(p.22)。

(p.23より画像引用)

そして、HSPには  D:深く処理する Depth of processing,O:過剰に刺激を受けやすい  Overstimulation,E : 感情反応が強く、共感能力が高い  Emotional & Empathy,S: 些細なことも気づく Sensing the subtlety,といった4つの性質がある(DOES)とアーロンは提唱しています(p.37,p.63)。

HSPという言葉は知っていても、その実態が分からない人にとっては(私も例に漏れずそのうちの一人です)、易しく温かく実体験を交えて教えてくれるこの本は、おあつらえ向きかもしれないですね。

繊細と社会

また、現代ではこころの機微を見ないようにしている社会構造があるのではないか、との重要な指摘も。確かに、これだけ個人主義が極まり、競争社会あるいは生き馬の目を抜く世の中にいると、なかなか個人ひとりひとりの特性に向き合う余裕が全体的になくなり、社会が疲弊しているように考えます。そのなかで、孤軍奮闘している「繊細さん」には、良いヒントがこの本のなかに沢山詰まっているように感じました。自分にギフトされたこの気質をどう活かして社会と共存していくか。短所を長所にするためには、その特性を深く知ることから始まるのですね。

恐らく、個人のなかには大なり小なり繊細な部分があり、そことどう折り合いをつけていくか、落としどころを見つけるか、ということなのではないでしょうか。自分にある繊細な部分を引け目に感じることなく、強みにしていく。そんな考え方の工夫を訓えてもらえるような、とても温かい本です。

公認心理師である武田先生は、「のびのびと生きるまでの道のり」として、社会に出てから本来の自分とは乖離した状態で過剰適応を続けると、次第に無理がいき、行き詰ったりバーンアウトをしたりするが、そこから休息を取ったり自分のために遊ぶことで、本来の自分らしさを取り戻し、そこから自然なかたちでバランスよく、また社会と関わり直すことができるといいます。

(p.51より画像引用)


話は、HSPの概念からカウンセリングのプロであるお二人の、貴重な歴史をぽつりぽつりと語りだすところにまで深く潜っていきます。なかなか立場上、自己開示しにくいお二人でしょうから、このようにそれぞれの道程を知ることができるのは、ひとりの人生の在りようとして、非常に勉強になります。どんな立派な方でも、生きづらさを抱えて悩まれているのですね。一介の人間としては、大変励みになるエピソードの数々がありました。

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さてさて、次回は「繊細さんが自分らしく生きるには」という命題から始めてみたいと思います。

「自分は繊細じゃない」と自認する方にとっても、繊細な人はこういう構造を持っているのだ、という付き合い方の一助になるのではないでしょうか。

それではまた、近日中に続きを更新いたします。
ここまで、お読みくださり有難うございました。

良いお盆休みをお過ごしください。

you 拝



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