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読書記録「何も起こりはしなかった-劇の言葉、政治の言葉」ハロルド・ピンター著

喜志 哲雄訳
集英社新書
2007

第一部はノーベル文学賞受賞記念講演。
第二部は世界情勢についてハロルド・ピンターが寄稿した文を集めてある。
第三部は対談が数本。

特に世界情勢について語った部分は内容が被る部分がかなりある。
ニカラグアでのアメリカの行為に言及し、アメリカを厳しく批判する部分がほとんどと言っても良いくらい。ニカラグアについてはピンター自身が関わったこともあるようだ。
それでも、アメリカにこういう物言いをするのは日本ではなかなか読むことの出来ない視点で興味深かった。

今日、社会主義は死んだというプロパガンダが広範囲におこなわれている。だが、もしも社会主義者であることとは、「共通の善」や「社会正義」という言葉には意味があると心から信じることであるのなら-社会主義者であることとは、何百万もの人々が権力者や「市場の力」や国際的金融機関によって軽視されている状態に対して憤慨することであるのなら-もしも社会主であることとは、不当に辱められている人々の生活を向上させるために全力を尽くす決意を抱いていることであるのなら-それなら、社会主義が死ぬことはけっしてない。なぜなら、こういう願望が死ぬことはけっしてないからだ。

本のタイトル、「何も起こりはしなかった」。このキーワードは至る所で登場する。
BBCがピンターがノーベル文学賞を受賞したにもかかわらずほとんど取り上げなかったこと、つまり、BBCにとって「そんなことは起こらなかった」のだ、というのには驚いた。
ピンター自身、政府共謀説には賛成しないといっているし、真相は分からない。

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