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読書メモ

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読書記録のまとめ。
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#経済

読書記録「人新世の「資本論」」斎藤孝平著

集英社新書 2021 最近やたらと耳にするSDGs。 Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略。国連が目標として掲げているが、著者はそもそも"持続可能な開発”という前提に疑問を投げかける。 経済成長のための”開発”をこの先も同様に続けるつもりなのかと。 そして、このような目標を掲げて、地球温暖化対策をやってる気になっていていいのだろうかと。グリーン・ウォッシュに取り込まれ、真の危機から目を逸らされているだけなのではないだろうかと。

読書記録「宗教の経済学 信仰は経済を発展させるのか」ロバート・J・バロー、レイチェル・M・マックリアリー著

慶應義塾大学出版会 2021 著者2人のこれまでの論文やそれに関連する分野の論文を本の形にしてまとめた一冊。 マックス・ウェーバーは著書「プロテスタンティズムと資本主義の精神」で信仰、特にプロテスタンティズムが人間の職業倫理、正直、節約などの特性を育てることを通じて経済成長を促すと主張した。 果たしてそれは正しいのか、実証分析で検証した結果が示されている。 実証分析でウェーバーの主張を検証した結果、経済成長に相関しているのは礼拝の参加率などではなく信仰することだという。

読書記録「戦争の経済学」ポール・ポースト著 山形浩生訳

バジリコ株式会社 2007 アフガニスタン情勢のニュースをみて、読まずにおいたままだったこの本を読むことにした。 アフガニスタンでの戦争は何だったのか、そしてアメリカや他の関係した国々は何を得た、又は失ったのだろうか。そしてアフガニスタンは何を失ったのだろうか。 何となく戦争に対して抱いているイメージが実は違っていたことに気付かされる。 具体的には、戦争は好景気をもたらす、軍産複合体が戦争をしたがっている、傭兵はいざという時だめだ、テロは貧しく十分な教育を受けていない人が

読書記録「石橋湛山の65日」保阪正康著

東洋経済新報社 2021 著者同様に、問わずにはいられない。もし石橋湛山が病に倒れなかったら、療養をして首相の座に留まっていたら。日本は全く違う道を歩んでいたのではないか。 彼は後任の岸信介をどうみていたのだろう。 本作は石橋湛山の思想を追ったものではない。なぜなら湛山のものの考え方は戦前から一貫しており、それを実行に移すだけだったからだ。 吉田茂との関係やその後の首相になるまでの過程が主で、政治史の内幕として興味深い。 石橋湛山は東洋経済新報社の主幹として活躍。 彼の

読書記録「医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者」大竹文雄・平井啓編著

東洋経済新報社 2018 患者、医者、患者の家族、それぞれの立場から病気にどう向き合うかのヒントを与えてくれる本。 医者も必ずしも合理的な判断が出来るわけではないし、不合理な判断をする患者をたくさん見てきて辟易していることもある。患者がどう受け止めるか考えずに合理的な判断を押しつけてしまうこともある。それを当たり前のこととして放っておくのではなく、双方がどうしてそう考えてしまうのか、行動経済学的に理解することでより良い医療の提供に結びついてほしい。 医者と強固な信頼関係が