「我見」と「離見」が抽象化を加速させる

抽象化能力を引き上げるに当たって、マストで身につけておくべきことがあります。それは、「自分を一歩引いて客観視する癖」です。

能を大成した世阿弥が能楽論書「花鏡」で述べた言葉に、「我見(がけん)」と「離見(りけん)」というものがあります。

芸の世界には、当然ながら、良い演者と悪い演者がいる。それらを分けるものは何か。それは、「目」である。悪い演者というのは、自分自身(我)が周りを見つめる目、すなわち「我見」しかない。一方で、良い演者は、自らの体を離れたところから自分を客観的する「離見」の目を持っている、といいます。幽体離脱して、あらゆる方向から自身の演技を見る目。要は、観客の目ですね。この離見の目、すなわち「離見の見」を持つこと、そして、自分側の「我見」を「離見」と一致させていくことが、芸に秀でる上で重要だと、世阿弥は述べています。

日々特に意識をせずにメモしていると、つい「我見」によりがちです。自分の目線や、主観にあまりにも偏ってしまう。離れた場所からフラットかつ客観的に自分を見つめる「離見」を意識することが、抽象化においても大切なのです。ジャパネットたかたの創業者の髙田明さんも、能に造詣が深く、この離見を意識してご自身の伝える力を伸ばしていったそうです。

【「離見」を意識する。】

「メモの魔力」 前田裕二著 より

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?