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日本詩の芸術性と音楽性(9)-若い詩人の皆さんへ「自由韻文詩のすすめ」-

定型詩でも散文詩でもない「自由な音楽性を持つ詩」を「自由韻文詩」と呼んでその構造(つまり創作法)を一つのシンプルな基本式として提案します。(全10回)
  
     日本詩の芸術性と音楽性(9)


【現代口語自由韻文詩の実例】中詩二編


  「都会」 ー朔太郎「帽子の下に顔がある」ー

風にあなたの黒髪が吹かれて
さらさらさらと流れる都会の夕暮れどき

そろそろ街は水銀灯に
怪しく青く輝き始めて
空には白い月がくすんでいます

もう早や ほうら 
あっちの巨大なビルから
こっちの巨大なビルから
ゾロゾロゾロゾロ ウヨウヨウヨウヨ 
溢れ出し 流れ出し 
群れて這い出す ひとひとひとの塊まり
うつむきながら 項垂うなだれながら
ともかくも急ぎ歩く 人間﹅﹅ 人間﹅﹅ 人間﹅﹅ 人間﹅﹅
それにしてもどの姿も
随分陰鬱な影に食われてしまっているではありませんか

干からび切った道路の方では 
車 車 車がひしめき合って狂奔し
人間を腹一杯に詰め込んだ運搬列車が
奇怪な夕暮れのビルの谷間を
けたたましく吼えながら行き交う

グオー グオー グオー
ウオーン ウオーン ウオーン ウオーン

全くこれは何という光景なんでしょう
ねえ?顔のあるお嬢さん


 「意志の王国」

今宵幾千の龍は空に舞い踊り
地上に人々は獅子の眠りを眠る

この悲しみの夜の彼方に
意志の王国は今
燦然たる眠りについているのだ

君よ 
君よ 僕は飛翔ひしょうするんだ
あの力強き国へ
あの雄々しき意志の王国へと

輝かしきあの王国の目覚めの時
幾千の龍は
凄まじき紅蓮ぐれんの炎でその天空を燃え立たせ
果てしなき大地は
轟然たる咆哮を燃える世界に轟かせる

そうして人々はそのくるめきを全身に浴びて
力強き目覚めの時をはや迎えるのだ

そのひとみには永遠を輝かせ
その獅子の足取りには大地の堅牢をみなぎらせ
人々は堂々の歩みを開始する

雄々しき意志の輝きとなって
たくましき意欲のきらめきとなって
その不滅への歩みを開始するのだ
不滅へ 不滅へ
不滅へと向かって!
不滅へと向かって!

君よ
君よ 僕は飛翔するんだ
あの力強き国へ
あの雄々しき意志の王国へと

この悲しみの夜の彼方に
意志の王国は今
燦然たる眠りについているのだ


                  日本詩の芸術性と音楽性(10)へ続く


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