【推薦図書を読んで】『AIの時代と法』 (小塚荘一郎)
まえがき
chiffon cakeさんが薦めて下さった『AIの時代と法』という本を読みました。
(note記事は下からチェックできます)
『AIの時代と法』(小塚荘一郎)|chiffon cake (note.com)
1.雑多な所感
まず、AIの問題とはなんだろうか。
私の中でAIとは簡単に言えば「人の知的活動を極限までシミュレートしたシステム」のことである。その生産過程では、大量のデータを使い、機械学習といった手法を用いながら、与えられた入力に適切な出力が出るように調整していく。本書の例でもあったが、例えばアレクサやSiriのような音声AIは様々な種類の声や音を与え、学習させたうえで、「電気をつけて」(与えられた入力)という指示で「部屋の電気」を付けること(適切な出力)が行われるよう調整され世にでてくる。
これだけでも、AIの問題がいくつか浮かび上がってくる。
①人間にとって代わることで関連するものでは、
・ 雇用の減少
・ 責任の所在不明
・ 出力されたものの著作問題 などがあるし、
②大量のデータ(データ燃料)の部分では
・ 顧客データなどプライバシー侵害
が代表的であろうか。
本書はAI・デジタル社会の時代に溢れるこのような問題に対して、法がどう対応していくかを述べている。実際に起きた事例が豊富なのでその参照ではためになったが、上のようなことくらいは自分の中でまとめておかないと読みにくい。法もAIもほとんど馴染みがないのでこの点は難しかった。
また、そもそも自分自身がAIなどの問題を真に感じてないことが読みづらかった原因かもしれない。「AIの問題」などというのは本や新聞で目にするにしても、正直実感として不安や問題意識がない。デジタル社会の現在では、巨大企業によって個人情報の集積・利用は良く思えないが、それでもやはりAIでも情報でも実体がないものの問題は捉えにくい。
2.面白かった点:情報の「所有権」
本書で面白かった点は情報の「所有権」にまつわる話である。
情報は(特許や著作権によって保護されない限り、)排他的に誰かのものとなることはない。しかし、現代ではデータは「宝の山」であり、情報を保護しておきたい主体と企業などそれらを欲する主体で対立することはままある。
例えば、僕がコンビニであまり人に知られたくないような本を買ったとしよう。この時、店員さん、レジ(そして企業へ)、後ろに並んでいるお客さんは「僕がその本を買った」という情報を得る。これは直感的に考えれば、個人がデータ主体なんだから僕のプライバシーとして処理されるといえそう(むしろそういう考えで世の中が整備されているのでそう感じるの方が正しい)だが、考えだすと本当にそうなのかと思ってしまう。
情報とは一体何なのかという問題意識を持てたのはこの本を読んだ一つの利点であった。