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カナダのダブルスタンダード

昨日Xでオーストラリアに留学されている日本人の人が

「国益にならん奴は帰れ」と言われているように感じる

とポストしていたのを見て、複雑な気持ちになりました

複雑な気持ちになった理由は恐らく「タイミングが悪かったよね」という同情と「国が外国人を受け入れるmotiveをもう少し理解しておいた方がよかったよね」という気持ちの両方があったから

自分がカナダに住んでいて「ダブルスタンダードがある」とよく感じるし、「ダブルスタンダードがある」と知っておくだけでうまく物事を消化できると思ってます
反対にダブルスタンダードを理解しておかないとこのオーストラリア在住のポスト主のようにガッカリさせられることもあるかもしれません

今回は自分が気付いたカナダにあるダブルスタンダードについて書いてみようと思います


カナダで感じたダブルスタンダード

移民歓迎 vs 外国人流入を抑制したい

 これカナダに限らないと思うんですが

労働力&国力&インフラの維持に人が必要だが、どこの先進国も少子化が進んでいるので、外国人入れるしかないよね?

という流れは一定数の国であると思います
そして、それらの国の国民はなんだかんだ自分達の生活は外国人に支えられていることを知ってます
日本も同じ
今やコンビニにいくとスタッフの大半は外国人という地域も珍しくないはず
未だに24時間営業を続ける日本のコンビニや飲食店が維持できているのは海外からの留学生や外国人労働者の方々のおかげという店も少なくないでしょう
カナダでも飲食店やチェーン店、小売店等は外国人労働者で成り立ってますし、介護や医療についても有資格者を外国人でよいからドンドン増やしていきたいと考えています

「外国人は必要」だけど、「カナダ人が就きたい仕事を外国人には取られたくない」という相対するスタンダードが存在します

これもカナダに限ったことではないと思います
日本でも日本人が就きたい職業や入りたい会社に優秀な外国人がどんどん入ってきて、日本国籍がある自分は無職なのに、外国から来た人が日本人の職を奪っている!となれば「外国人流入は抑制したい!」という思いが生まれるのも自然な流れです

カナダではこの部分はきちんと制度化されていて、LMIA (Labor Market Impact Assessment)を申請しカナダ企業(雇用主)が頑張ってカナダ人もしくはPR保持者を雇おうと十分に努力したかが査定されることになっています

「カナダは移民を受け入れてくれる国である」ことは事実
でも
「移民を受け入れたいのはカナダ人にとって都合のいい場合」
⇒例)カナダ人が就きたがらない職業、不足している職業、過疎地等
というダブルスタンダードがあると頭に入れておくだけでも、カナダ永住を目指す場合には参考になるかもしれません

一時バンクーバーの私立カレッジでCoopプログラムのデジタルマーケティングとプログラミングがやたらと日本人留学生に人気という時期がありました
裏で仕掛け屋(多分留学エージェント?)がいるのかな?と思うぐらいの勢いでした
専攻する人が「就職に有利」とか「永住権取得に有利」とかをつぶやいていたので、恐らくそれらの営業トークをしている会社があったのかな?と推測しています
バンクーバーがあるBC州は確かに州推薦プログラム(BCPNP)でTech Occupationは優先職種に指定されていますからプログラマー等のIT職種の場合、優遇職種以外の職種(General)とは別のDrawが実施されていてGeneralよりは低いポイントが足切り点になっていることは事実ですが、プログラムの仕組み上未経験の人がカナダに1年留学してIT企業で就職し、永住権が取れるかというとそんなに簡単な話ではありません
上記のダブルスタンダードから考えれば「カナダ人でもIT業界で働きたい人はいっぱいいる」「カナダのIT企業が外国人を雇いたいと思うなら、それなりの実力や実績がある人」と分析できるので、未経験者が永住権を狙うなら最適なコース選択とは言えない事は明白です

「カナダは移民を受け入れてくれる国である」ということばかりに目を向けてしまって、もう一つのスタンダードを無視してしまうと今のカナダの永住権取得の傾向に納得できない気持ちが出てくるかもしれません
反対に「移民を受け入れたいのはカナダ人にとって都合のいい場合」というスタンダードがあることも意識していくことで突破口が見えるかもしれません

留学生が増え過ぎたら困る vs 留学生が減り過ぎても困る

2024年から向こう2年間、カナダでは各州の人口比に応じて留学生の受け入れ人数に上限を設けています
上限を設定するきっかけになったのはカナダの不動産の高騰や家賃の高騰に対するカナダ国民の不満の高まりでした
多くの人は上限を設けた現移民大臣 Miller氏に不満を感じていると思いますが、Miller氏自身は「留学生が増え過ぎても困る」が「留学生が減り過ぎても困る」というダブルスタンダードをよく理解できている人だと私は思っています
2023年秋、前移民大臣Fraser氏が住宅担当大臣になった途端に「留学生が増えていることが家賃高騰の原因の一つになっているので、留学生受け入れ数に上限を設けた方がいい」と言い始めました
それに対して、Miller氏は「留学生を減らせば解決できるという簡単な問題ではない」というような主旨で反論
留学はカナダの一大産業の一つですから、留学生を減らせば今オンタリオで実際に起こってきているようなプログラム減少による仕事の消失やカレッジの経営不振に繋がることは誰もが想像できることでした
また、留学生を雇用することで成り立っているSmall Businessも存在することから、留学生を減らし過ぎれば多方面に影響が出るだろうと予想できます
そんな、Miller氏が折れざるを得なくなったきっかけが23年12月に発表された人口統計
そこでTemporary residentsが急増していることが数字に表れてしまい、2025年に予定している国政選挙を考えると全く対策をしない訳にもいかなくなり、2024年年明けに留学生の数を制限する発表をしたという流れだと私は理解しています
(つまりFraser氏の監督不行き届きで起こった問題をMiller氏が対策しなければならなくなったと私は理解しています)

実際にカナダの不動産の高騰は留学生が原因とは思いませんが、賃料については需要と供給のバランスで決まるので、留学生に限らずTemporary residentsが増えたことも原因の一つだと言えるとは思います
(原因の一つであって、他にも原因はいっぱいありますが)
また、以下の記事でも書きましたが、留学生を含むTemporary residentsが増えることで今までの永住権傾向がガラリと変わることもあります

永住権を目指して留学してきた人には今の傾向は残念と言わざるを得ないし、逆に今まで外国人を取り込めなかった地域からすると多くの外国人が望んで移住してくれるのは願ったり叶ったりとも言えると思います

その人の状況と立場によって「留学生を含むTemporary residentsが増え過ぎると困る」「留学生を含むTemporary residentsが減り過ぎても困る」というダブルスタンダードが存在するということを知っておいてもよいかもしれません

卒業したら帰国するよね? vs 卒業しても残ってくれるよね?

私は公立カレッジの入学許可が出た後、Study Permitは移民カウンセラーに代理申請してもらいました
その際、Study Permit申請時に提出するエッセイについて言われたのは

卒業したら帰国する前提で書いてね

ということでした
「卒業してもカナダに残りたい、カナダで働きたい」なんて絶対に書くなと
私の専攻コースはPGWP (Post Graduate Work Permit) が取れるプログラムで、PGWPを申請すれば卒業後カナダで働くことができるはずだったので、不思議な気持ちになりました

ただ、Study Permitは本来「カナダにある学校で学びたいことがあるから申請するもの」なので、その用途以外の使用はしませんよという意思表示が必要なのかなと理解しました
実際に学生ビザを発行すると期限内にカナダを出国する確証が得られないという理由で学生ビザが却下された方もいらっしゃいます

カナダがPGWPという就労許可制度を持っているということは国として「大学やカレッジを卒業した人にカナダに残って働く権利をあげてもいいよ」と言っているようなものなのですが、それと同時に入国前には「卒業したら帰国するんだよね?」と確認するというダブルスタンダードが存在しています

恐らく上にも書いたように「留学生が増え過ぎて、結果Temporary residentsも増え過ぎるのも良くない」という部分と「本来Study Permitは学業の為に発行されるもの」という大前提があると同時に「将来カナダに必要と思われる人材には残ってほしい」「なんだかんだ外国人労働者が国力維持/インフラ維持には必要」という裏腹の思いがダブルスタンダードを生み出しているのだと思います


ダブルスタンダードがある部分で片一方のスタンダードしか認識できていないともう片方のスタンダードが出てきた瞬間に肩透かしにあった気持ちになることもあるかなと思います
「ダブルスタンダードがある」と認識しておくだけで、「あーこれはこっちのスタンダードで話してるのね~」と聞き流せるようになるので、意外とお勧めです
ちなみにダブルスタンダードがあることはカナダに限ったことではないと思うし、どちらのスタンダードが正しいとか正誤を考え始めると不満が出てくるだけだと思うので、その人や立ち場、環境によっていろんなスタンダードがあるんだなーぐらいに思っておくとよいかなというお話でした

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