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真心の花束

5月14日、午後は予報通りの雨模様。
木々をはげしく揺さぶる風が、雨雲を追い払ったり呼び戻したり。
降っては止んでを繰り返す、落ち着かない天気が続いていました。

夕方、家に帰ろうと車に乗り込んだ私の頭上では、ふたたび黒い雲が迫っていました。
車を走らせるとすぐ、フロントガラスに数滴の雨粒が張り付きます。

本降りになる前に家に着きたいな、と思いながら住宅街に入り、元気に遊ぶ子どもたちを横目に公園を通り過ぎると、前方に自転車に乗った女の子たちの後ろ姿を見つけました。

ピンクや紫のヘルメットをした、小学校2、3年生くらいの女の子3人が、横一列で車道にはみ出しながら自転車を走らせています。
天気を気にしているのか、少しスピードが出ているようでした。

私が速度を落とし、その背中に慎重に車を近付けていくと、車の存在に気が付いた女の子たちはすぐに端に寄り、縦に並びました。

気をつけてね、と心の中でつぶやきながらその横を通り過ぎようとした時、先頭の子の自転車のカゴに、何か色鮮やかなものが映りました。

黄色い......花?

先頭の自転車が真横に来たタイミングで、ちらっとカゴの中に注目してみると、それは2本の小さめの向日葵でした。
ピンクの縁取りがされた透明な包み紙に、綺麗にくるっと巻かれています。
続く2人の女の子のカゴにも、白いカーネーション、ピンクの何かの花がそれぞれ2本ずつラッピングされて入っていました。

子どもたちが花を持っていることに驚きましたが、すぐにピンと来ました。

母の日、だよね......!

自転車で向かえば数分のところにスーパーがあり、併設されているお花屋さんでおそらく買ったのでしょう。
母の日にお花をプレゼントしようよ、と3人で話し合ったのでしょうか。

たしかミニブーケでも500円以上したはず。小学生のお小遣いでは、少々お高めです。
でも1本ずつなら、お小遣いの範囲内で買えると気付いたのでしょう。
それぞれのお母さんを想いながら、好きな花を想像して選び、レジでラッピングしてもらう……そんな姿が目に浮かびました。
きっとレジのお姉さんも、道すがら女の子たちを見かけた人たちも、私のように笑顔になったに違いありません。

そして、お花を受け取るお母さんたちは、大輪の笑顔を我が子に向けることでしょう。

大切なプレゼントのために一生懸命に自転車を漕いでいた彼女たちの真心は、まぶしい鮮やかな虹となって私の心にかかりました。

通り過ぎたあとにバックミラーで確認すると、女の子たちはそのまま縦一列に進んで角を曲がっていきました。

大好きなお母さんが、きっと家で待っていることでしょう。


一日遅れですが、
すべてのお母さんに感謝を💐


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