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【タケシ伝】第二話

皆さまはプラシーボ効果というものをご存知だろうか?
簡単に言うと自己暗示や催眠などによる脳の錯覚である。
例としてこんな話がある。
ある男に目隠しをして、アイロンの音を聴かせ、アイロンを腕に当てると言う。
その後熱していないフォークを腕に当てると当てた部分が火傷したという話。
人間の思い込みは時に、現実になる。
今回するお話は小学生の頃、プラシーボ効果を目の当たりにした時の話。

〜タケシis Esper〜

「俺こっから飛び降りれるで‼︎」
私が言うとタケシは少し驚いていた。
私とタケシが遊んでいる場所は使われていない水再生所。
そこは裏から屋上まで梯子が掛かっており、屋上は私達の遊び場だった。
高さは大体5m程だ。
「じゃあな。」
私は屋上から飛び降りた。
いや、飛び降りた様に見せた。
そこには庇が数ヶ所あり、庇に着地してしゃがむと屋上からは飛び降りた様に見えるのだ。
タケシが慌てて駆け寄ってくる。
そこには少し下でしゃがんでる私。
「何やねん‼︎焦ったわ〜。」
タケシが少し怒った様に言う。
私が笑っていると、
「俺はガチで飛べるけどな。」
タケシが真剣なトーンで言う。
「いやいや。足折れるで?」
「いや折れへん!」
先程も言ったが5m程ある。
そして下はアスファルトである。
小学生の足が耐えれる筈が無い。
しかしタケシという男は一度言い始めたら聞かないのだ。
そこで私はもう少し低い所から飛んで、足の強度を証明してからにしてくれと頼んだ。
「びびってんの?」
私の地元のキラーワードが出た。
この状況でタケシにはもうちょっとびびって欲しかったが、そのワードが出てしまっては引けない。
最後の頼みとして、屋上に落ちてあった『ぷよぷよ』というゲームのキャラクターのぬいぐるみを下に置き、そこへ着地するという事で話はついた。
私は下におり、タケシの垂直地点に『ぷよぷよ』を置いた。
直径60cm程のぬいぐるみだ。
「ほな飛ぶわ!」
そう言うとタケシが飛んだ。

ドンッ!という音でタケシは着地した。
その音はまるで爆竹の様に辺りに響いた。
私はタケシに駆け寄り、
「お前大丈夫け⁉︎」
私の問いにタケシは
「全然大丈夫や!ぷよぷよあったし全く痛く無い。」
そう答えるタケシは何事も無かったかの様に歩いている。
しかし、私は飛ぶ瞬間から着地の瞬間まで見ていた。
タケシが着地した所に、『ぷよぷよ』のぬいぐるみは無かった。
ぬいぐるみに着地したという脳の思い込みで体にダメージが現れなかった様だ。
もはやそれは、超能力の類だろう。


これが地元に語り継がれる【タケシ伝】の1つ
『タケシ、ユリゲラーの隠し子説』である。

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