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【タケシ伝】第一話

これからお話する物語は私とタケシという男が小学生の時のお話である。
このタケシという男は地元で数々の伝説を残している。
地元で伝説を残すには勉学やスポーツに秀でる事、もしくは素行の悪さや腕っぷしの強さ等がメジャーだが、このタケシという男は一風変わった事で伝説を残している。

〜Takesi is real ironman〜


「車通る時にギリギリまで足伸ばしとくゲームせえへん?」
タケシが言う
「何で?」
私が答える
「びびってんの?」
この言葉は私の地元ではキラーワードでこの言葉が出て来るとどんな状態でも乗らなければならない。
「…ルールは?」
「車通って来る時に先足引っ込めた方が負け」
シンプル且つ猟奇的なチキンゲームである
「…いいよ。」
この頃の私もどうかしていた。
その道は車一台がギリギリ通れる様な一方通行の道で、車道の端には草木が生い茂っており、ある程度の位置で足を出すと車からは見えづらくなる。
こうして何の得にもならない、四捨五入すると『デスゲーム』が始まった。
一台の軽自動車が走って来る。
私とタケシは両端から同時に足を出す。
車は気付いて居ない。
私は前輪と足の距離が1m程の時に足を引っ込めた。
その瞬間にタケシの方を見ると、タケシの足はまだ道にある。
前輪とタケシの足が40cm程の所でタケシは足を引っ込める。
「よっしゃ!俺の勝ち〜。」
車が去った後、タケシが言った。
「いや、ちょっと待って。普通に座り方悪かったわ。ミスった。」
私は謎の言い訳を始めた。
「もう一回やったてもええで?」
タケシが煽り口調で言った。
「絶対俺勝てるわ。普通にお前引くん早かったし。」
私が完全なる負け惜しみを言い、『デスゲーム』のニ回戦が始まった。
軽トラが走って来る
道の両脇から私とタケシが足を出す。
今度はタケシの方を気にせず、私は自分の足だけに全神経を集中させた。
足と前輪が25cm程の所で私は足を引っ込める。
勝った。
そう確信し、タケシの方に目をやると、軽トラの前輪が明らかにタケシの足を踏んだ。
「◯×%⬜︎※〜」
タケシが文字にならない悲鳴を上げた。
運転手も気づいたであろうが車は急に止まれない。
そのまま後輪もタケシの足を踏み抜く。
タケシはまたしても断末魔の様な声をあげた。
軽トラから60代ぐらいの男性が出て来た。
「兄ちゃん大丈夫か⁉︎」
慌てた様子でタケシに駆け寄る。
「全然大丈夫っす。」
運転手が聞き間違いだと思ったのかもう一度聞く。
「足大丈夫か⁉︎」
「全然大丈夫っすよ?」
タケシが食い気味に答える。
その後運転手は救急車や警察を呼ぼうとしたが、タケシが拒否し結局運転手が謝るだけで事が済んだ。
運転手が去って行った後、私が
「お前ホンマに大丈夫なんけ?」
「いや、ホンマはめっちゃ痛い。歩けへん。多分折れてる。」
やはりか。
タケシという男は極度の見栄っ張りである。
軽トラで足を踏まれたぐらいで痛がってるのが格好悪いと思ったのだろう。
恐らく彼はアマゾンの奥地で育ったのだろう。
「悪いけどおぶって家まで送ってくれへん?」
タケシが言い出す。
「しゃーないな。」
そう言いながら、私はタケシが履いていたサンダルを取り
「うぇ〜い。」
と逃げる素振りを見せ、立てないタケシを揶揄った。
するとタケシの顔が鬼の形相に変わり、
「待てコラッ‼︎」
と言って立ち上がった。
その圧力に私は全力で逃げた。
普段足の速さが同じぐらいの私とタケシだが、その時のタケシの初速はチーターを凌駕していた。
私は直ぐに捕まった。
軽トラで踏まれた足でいつもより速く走れる現象は令和になった今でも科学的に解明されないだろう。

これが地元に残る【タケシ伝】の1つ
『タケシ、サイボーグ説』である。

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