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【お知らせあり】初めて連載を持った話

2020年5月から7月までの3ヶ月間、静岡新聞にて詩と写真の連載をさせていただきました。11月に、その連載にちなんだ詩と写真の展示会を開きます。そのお知らせも兼ねて、連載についての振り返りの文章を書きました。自分が振り返りたくて書いただけなので、長々とまとまりのない文章になっていますが、ご興味のある方もいるかもしれないと思い、ここに載せます。

展示会の詳細は、文章の最後に載せています。詳細のみ知りたい方は、下記の目次の「展示のご案内」をクリックしていただくと案内まで跳びますので、ご利用ください。(ちなみに下の文章はかなり長いです。)

初めて連載を持った話

2020年5月から7月まで、静岡新聞にて詩と写真の連載をさせていただいた。私は詩を担当(写真は、写真家のNon.さんが担当)。詩と写真は同時制作ではなく、まず私が詩を書き、その詩を写真担当のNon.さんにお送りして、詩に合う写真を選んでいただいた。連載のタイトルは『暮らしの音たち』(このタイトルは新聞社が決めた)。毎週日曜日の朝刊に掲載され、途中、好評と言うことで延長となり、全12回の連載となった。(読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。)

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個人的なこととして、一年間、派遣として働いていた会社との契約が今年の4月末で終了することになっていた。連載の依頼は、その派遣契約が終了する間近の4月末頃にいただいたので、タイミング良く、派遣終了と同時に連載を始めるかたちになった。毎週の連載は、実際に始めて見るとスケジュールが非常にタイトだったので、平日、会社で働きながらは正直、出来なかったかもしれないと思う。

連載の依頼をいただいたのが4月末頃。連載が始まったのが、5月10日。正式に依頼されてから第一回目の締切までの日数があまりなく、「連載が始まるまでに何篇か書き溜めておく」と言うようなことが出来なかった。また、担当の記者さんから、何かあった時のためにストックを一篇、常に持っておきたいと言われたので、2回分の原稿をまとめて書き、2週間おきの締切に2篇ずつ送ると言うかたちが取られた。
(ただ、実際には、担当の記者さんとの締切の前に、Non.さんに詩をお送りする締切があったので、それに間に合わせて書き上げる必要があった。)

具体的な依頼の内容は、「日常の「音」をテーマに詩作して欲しい」と言うものだった。詩作の条件としては、<必ず詩の中に「音」を想起させる言葉を入れること>、<一篇は15字×20行内に必ず収めること>の二つで、詩の内容自体は自由に書いてよいと言うことだった。依頼をいただいて、まず「「音」をテーマにした詩はどう言うものが書けるだろう?」と考えた。そうして、「「音」自体を詩に書くのではなく、擬音語や擬態語でその「音」を表現し、読む人に何の「音」なのか想像してもらう」と言う書き方をしようと(自分の中で)決めた。その方が、読む側も楽しいのではないかと思った。

私は一篇を書くのに時間が掛かるタイプだと、それまで自分では思っていたので、依頼をいただいた時、「短期間に何篇も書けるだろうか?」と不安だった。また、普段書く詩よりも短い詩を書かなければならなく(私は大体、40行ほどの詩を書くことが多い)、短い詩をあまり書き慣れていなかったので、それも少し不安だった。ただ、企画の詳細を聞いた時、面白いと思った。やってみたい、と素直に思った。だから、自分にとって難しいし、大変かもしれないけれども、やろうと決めて依頼を受けることにした。(あと、私の元来の無鉄砲な性質がそうさせたところもある。)

詩作はまず、思い付く「音」をつらつらと紙に書き出すことから始めた。靴の音、油のはねる音、カーテンを引く音、アイロンのスチーム音…。幾つものそれらの「音」の中から詩になりそうなものを取り上げ、自分の中で書きやすい題材のものから書いて行った。字数の制限に慣れるために、小学生用の升目のある国語ノートを使い、まずはそのノートに下書きをし、ある程度かたちになったら、それをパソコンに打ち込んで書き上げて行った。普段しているように書けた詩は一度、プリントアウトし、それに書き込みをしながら推敲をした。

振り返ると、第4回目に掲載された詩までは、今回の連載における詩の方向性と言うか、詩との取っ組み合い方と言うか、そう言うものが自分の中で定まっていなかったように思う。勢いで走り出したはよいものの、このままずっと一定のスピードを保ったまま、自分の思う走り方でゴールまで走り続けるにはどうしたらよいのか、そのコントロールの仕方を探りながら書いていた。第4回目の詩を書き上げた後、ようやく腹が決まったような、詩と、それから連載と、最後まで全部引き受けて行くと言うような、そう言う決意がかちりと固まった気がする。私は向こう見ずに、衝動的に、突然走り出すタイプの人間だけれども、走り出す時には大抵、決意が出来ていないことが多い。走りながら決意をして行くタイプなのかもしれないが、それが良いことなのかは自分では分からない。

連載が始まってすぐの頃、少し不安に思うことがあった。それは、「こんなに短期間に根を詰めて詩作したら、詩を書くのが嫌いになるんじゃないだろうか…」と言う不安だった。「ユリイカの新人」に選ばれるまでは3年ほど投稿を続けていたので、続けることに関しては不安はなかった。(私は執念深い。)でも、「短い期間に何篇も詩を書く」と言うのはあまりして来なかった。普段、自分が詩を書くペースではないペースで書き上げて行かなければならないのは、少なからずプレッシャーだったし、それによって詩作することにうんざりして、飽き飽きする可能性もなきにしもあらずだった。でも、もし嫌いになって、もう詩を書くのが嫌だと言う風になったら、きっと自分の詩に対する気持ちはそこまでだったと言うことなんだろうな、と思った。だったら、もう最後まで根を詰めて書いてやろう、と思った。連載が始まって一ヶ月が過ぎた頃、私は上の不安がただの杞憂だったことを知った。何故なら、私は本当に、詩を書くのが大好きだと言うことが、身体中から身に染みて分かったからだ。

書くことは楽しかった。それまでも書くことはずっと好きだった。でも、書けば書くほど、好きで好きでたまらないと言う気持ちで溢れるのは、初めてのことだった。まるで恋をしているみたいに。私はことばが好きだった。詩が好きだった。ことばも、詩も、私を自由にしてくれる。思い掛けないところに私を連れて行ってくれる。「そんなもの、どこにあったのだろう」と思うようなものを、突然、見せてくれる。勿論、詩を書いていて落ち込むこともよくある。推敲が上手く行かなかったり、詩が求めているものを自分が差し出せなくて、それによって書き進められなかったり、技量のなさを思い知ったり。あんまり上手く書けない時は、自分が不甲斐なくて泣くこともある。詩はやさしいけれども、甘くはないし、むしろ厳しい。それでも、詩を書くことは楽しい。私は詩を書くことが本当に好きなのだと、連載が進むにつれ、はっきりと身に染みて分かった。それが、私にとっては今回、連載を通して受け取った一番の嬉しいことのように思う。

詩を書くのは楽しくて仕方なかったけれども、2週間おきにやって来る締切には最後まであまり慣れなかった。「締切」と言うものは、どうしてあんなに私をハラハラさせるのだろう。いけ好かない奴だ。それでも幸いに一度も原稿を落とすこともなく、最後まできちんと書けたので良かったと思う。最終回の詩を送った後は、悲しくて仕方なかった。もう本当に連載が終わってしまうことが寂しかった。多分、これまでにないくらいに根を詰めて詩作した3ヶ月間だったので、少し心がぽっかりしてしまったのもあったのだろうと思う。でも、本当に貴重な3ヶ月だった。突然いただいた連載の話で、スケジュールのタイトさや詩作の条件など、半分、修行のようにも感じたけれども、とても勉強になった。自分が詩を好きなこと、その好きなものと向き合う度胸が付いたように思う。こう言う機会をいただけたことを、本当に有難く思う。写真を担当されたNon.さんにも感謝です。

連載の中で書いた詩については、特にあえて書きたいことはない。自分でも気に入っている詩もあるし、「もう少しどうにか出来なかっただろうか」と(今、読み返しても)思う詩もある。何が詩で、何が詩ではないのか、と言うことを、考えさせられながらの詩作だった。私の個人的なことを題材にした詩は今回の連載では少ないけれども、どの詩にもその時々の気分があらわれているようには思う。人によって好みの詩が異なるのが面白いので、もしよければ連載を読んでくださっていた方は、展示の時にでも教えていただけると嬉しいです。

今回の連載で得たものを、これからの詩作と活動に活かして行けるように、そして、またどこかで連載や発表の機会をいただけるように、これからも精進します。

展示「詩と写真 ささめきとたたずみ〜『暮らしの音たち』より」について

今回の展示は、連載の写真を担当されたNon.さんと共同で開催します。連載の中で発表した詩と写真を用いて、連載の背景にある<コロナ禍>を絡めながら、紙面とは異なるかたちで作品を表現します。

展示期間中、連載の内容をまとめた本『暮らしの音たち』(私家版)を、会場にて販売します。この本は展示が終わりましたら、ネットショップ等でも販売予定です。本の詳細については、下の投稿をご覧ください。

ウイルスもまだ落ち着いていませんし、展示が行われる11月の社会状況も全く分かりません。ご興味のある方は、ご無理のないようにお越しいただければ幸いです。

展示のご案内

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今日を
何万年の一日として
板書する

(「あかり」より)

2020年5月から7月にかけて
毎週日曜日、静岡新聞の朝刊に掲載された
連載『暮らしの音たち』。
日常の何気ない「音」を切り取った12篇の詩と写真のなかから
数篇を取り上げ
ささやかな展示会を開きます。

詩と写真 ささめきとたたずみ〜『暮らしの音たち』より
ゆずりはすみれ Non.
2020年11月10日(火)〜29日(日)
於 HiBARI BOOKS & COFFEE
  静岡県静岡市葵区鷹匠3丁目5-15 第一ふじのビル1F
  https://hibari-books.com/
営業時間 11時〜20時(月曜定休)
駐車場2台・近隣にコインパーキング有

※体調にご無理のないようにお越しください。感染症対策のため、入場を制限する場合があります。また、ご来店の際には、マスクの着用、手指消毒等、感染症予防をお願いいたします。

・ゆずりはすみれ在廊予定日
 10日(火)11時〜15時
 13日(金)18時〜20時
 20日(金)18時〜20時
 28日(土)14時〜18時
 29日(日)16時〜20時