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もーきんずばばばばーん!

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もーきんずばばばばーん! 完結

第27話 後日談

 師匠の誕生日会を開く事になった。発案はコロである。俺は生まれてこの方その手の物には縁がなかったので、このクソ暑いのに正直面倒くせえとも思ったのだが、洋鵡やカラスコンビに話すとノリノリで賛成されたもので、今更反対もできず、仕方なく当日に四人で誕生日プレゼントを買いに行くことになった。校門の前で待ち合わせ、商店街へ向かう。

「誕生日プレゼントくらいデパートで買えばいいのにね」

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もーきんずばばばばーん! 26

第26話 それぞれの未来

 警察庁への強制捜査は結局、一部警察官僚の汚職という事で幕を閉じた。スキャンダルには違いなかったが、マスコミを何日も賑わせるほどの値打ちはなかったと見えて、あっという間に報道されなくなってしまった。ただあれ以後、小国関係の企業の広告が目に見えて少なくなったのは間違いない。

 例の小国医療化学第一工場は、どうやら軍の管轄下に置かれたらしい、とカラスコンビから聞いた。あの

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もーきんずばばばばーん! 25

第25話 干渉する者

「シミュレート?何のためのシミュレートだ」

 師匠が問う。ニンゲンが答える。

 かつての人類が 何処で道を誤ったのかを確認するため

 そしていつか再び 人類が地上を支配するため

「外の世界じゃ、昆虫や爬虫類を『人』にして、同じことをしてるってのは」

 

 事実也 それもまたシミュレート

 ただそれは 我の預かり知らぬ事

「じゃ、軍と警察をぶつけようとしたのも

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もーきんずばばばばーん! 24

第24話 水の中

 トロッコは蓄電池式の機関車に引かれ、『彼』の眼と機関車正面のライト以外全く光のない坑道の中を、羽根がちぎれそうなほどの猛スピードで十五分程走った。確かに、足で走るより速い。圧倒的に速い。だが走るより疲れたような気がする。しかしまあ、それはともかく。

「ここがそうなのか」

 到着した場所は、俺にはただ横に広いだけの地下空間にしか見えなかった。天井の高さは二メートル程か。

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もーきんずばばばばーん! 23

第23話 突入

 ヒクイドリ部隊を乗せたトラックとシャモ部隊のトラックは、樹海の手前で合流した。やがて路肩に停めてあった雉野真雉の物と思われる乗用車を発見、そこから樹海に入り、オオタカ達の反応が消えた座標まで一直線に走った。

 約一時間半後、ほぼ陽の落ちた樹海の中で、ハヤブサが回すライトを見つけた。ハヤブサの案内で洞窟へと向かう。この時点で、シャモがヒクイドリに遅れず付いて来ているのは驚くべき

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もーきんずばばばばーん! 22

第22話 掌握完了

「できんものはできんよ、教えられんものは教えられん。銃を突き付けても無理なものは無理だ。ここは只の工場じゃない、あんたらもそれを知っててここに来たんだろう、だったら私の言ってる事もわかるはずだ」

 ウズラ工場長はまくし立てた。責任感なのか、それともプライドなのか、とにかく銃を持った相手に対しても怯むことなく、操作盤については頑として説明を拒んだ。

「これでは話になりません

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もーきんずばばばばーん! 21

第21話 樹海にて

 時を遡ること数時間前、圭一郎達が出発する直前、『彼』がコロの枕元に座った。

「大丈夫か」

「まだ少しダルいけど、大丈夫」

「そうか。ワシらはすぐに出る」

「うん、行ってらっしゃい」

「これを持っておけ」

「これは?」

「ワシの脚からほじくり出した発信機だ」

「え、あ、ありがとう」

「何もなければ役には立たんが、何かあったら役に立つかもしれん、まあお守りだと

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もーきんずばばばばーん! 20

第20話 お山の大将

 洋鵡の顔色が変わった。「シンプルな方法」が何なのかに気づいたのだろう。そりゃそうだ、俺ですらわかったのだから。吐き気を感じているようだ。一方、師匠はつかみかからんばかりの眼で『彼』を見つめている。コロがこの場に居たら、また具合が悪くなってたろうな、と俺は思った。『彼』は続けた。

「その方法とは至って簡単、コロポックルの肉を喰らう事だった。それが最も確実で効果的な方法だっ

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もーきんずばばばばーん! 19

第19話 霊的水準

「『天の眼』をご存じですかな」

 ダチョウは問うた。

「いや、初耳ですが」

 ハチクマ先生は答えた。

「我々もなのですよ」

 コウテイペンギンは溜息をついた。

「どうやら、あなたのお弟子さんをさらった連中の様なのです」

 オオワシが補足した。

「はあ」

 夜中に呼び出されたと思ったら、一体何だと言うのだろう。まるで話が見えない。ダチョウが説明する。

「突然

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もーきんずばばばばーん! 18

第18話 神託

 ゆらゆらと 胎液の中

 何度目の 目覚めだろう

 もはや肉体は 老化し

 システムは 朽ち果て

 任せられし 務めは

 既に次代に 譲り渡し

 あとは只 死に行くのみの

 この身に縋り 神と奉る

 哀れなる 人ならぬ者

 神を知らずに 神の名を呼ぶ

 浅はかなる 愚者の声が

 静かな眠りを 妨げる

 我は 神では無い

 我は 人間也

 そして 人間と

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もーきんずばばばばーん! 17

第17話 守るべきもの

「警察庁、軍の協力により三容疑者を逮捕と発表」

午後のワイドショーの時間帯、テレビ画面にテキストのみの速報が流れた。

「我々の協力があったそうだ」

 ダチョウは無表情に言った。

「そりゃあ嫌味にしても何とも回りくどいねえ」

 コウテイペンギンが呟いた。

「いっそ本当に協力を申し出てやったらどうだ」

 オオワシが楽しそうに話した。

「何を協力すると言うんだ」

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もーきんずばばばばーん! 16

第16話 ダウジング

 嘴に咥えた細い糸の先に赤い瑪瑙の勾玉をつけ、ゆらりゆらりと揺らす。雉野真雉は寝所の中にロウソクを灯し、十畳程もある大きな全国地図を広げて、その真ん中に立っていた。ゆらりゆらり、勾玉が揺れる。少しずつ、少しずつ、体の向きを変えて行く。と、微妙に勾玉の揺れ方が変化する。その位置に朱墨でマーキングし、今度はその方向に少しずつ、少しずつ、前進する。すると揺れが小さくなり、やがて止

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もーきんずばばばばーん! 15

第15話 工場の秘密

 椀を落とした拍子に、雑炊が床にぶち撒けられたが、幸いコロにかかる事はなかった。タンチョウはあらかじめ知っていたかのように足元に置いてあった雑巾で始末をすると、コロの顔を覗き込んだ。

「何か思い出した?」

 しかしコロは弱々しく頭を振るだけだった。

「なあ、ニンゲンって人って意味じゃないのか、それって俺らの事だよな」

 圭一郎の疑問はもっともである。それは今のこの世

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もーきんずばばばばーん! 14

第14話 天の眼

 夜。ほとんどの鳥達が飛ばなくなる時間。暗い空の更に暗い場所を選んで飛び行く一団があった。彼らは渡り鳥の様に隊列を組み、しかし声も無く音も無く、風の速さで暗闇を進み、レーダーも暗視装置も使わずに目標へとまっしぐらに向って行く。彼らこそ空軍の特殊作戦航空団、フクロウ部隊であった。

 目標地点に到着、二階建ての一軒家である。見張りのフクロウと合流する。対象は二階で既に就寝、母親は

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