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高校生の「探究」ってなんだろう?

昨年から、わたしが企画委員を務めている日本NIE学会では高校生の探究活動を支える取り組みを始めました。

NIEは、NewsPaper in Educationの略で、教育での新聞活用のことです。

じつは、高校生が取り組んでいる探究活動って自然科学系(ざっくりいうと理系)は、いろんな大学や学会が研究発表の機会を設けたり、大学の研究者がフォローしたりしているのですが、人文社会学系はそういう機会がほとんどないよな~と思っていて、ないなら作っちゃおう、ということで始めました。

「探究」って、総合的な学習の時間というのが、今の高2から探究的な学習の時間というのになってどの高校でも取り組まれているものと、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)とか、そうでなくてもいろんな高校で課外(授業時間外)の生徒の自主的な研究で取り組まれているのと、大きく2つの取り組まれ方があると思います。

課外のには、ずっとまえから取り組まれてきた、ボランティア活動や地域の方々との連携や、国際交流活動なんかも含まれます。冒頭の写真は、陸前高田の神田葡萄園さんのマスカットサイダーです。奈良女子大学附属中等教育学校では東日本大震災の発災直後から復興支援などに取り組む有志生徒たちがおり、「ならふく」(奈良と福島の架け橋という意味です)として今も続いていてその生徒たちが「被災地を忘れない」というコンセプトで紹介しているものです。

こうした取り組みも広義では「探究」に入るのだろうと思います。だから、探究的な学習の時間と課外での自主的な研究という「時間」の分類のほかに、「ならふく」やボランティア活動、地域との連携、国際交流活動のように社会に開いている取り組みと、大学での研究のようなアカデミックな学びに開いているものの2つにも分類できます。

日本NIE学会では後者の学びを支えるために、学会に所属する大学の研究者や新聞活用やメディア情報リテラシーの学びに長年取り組んできた中学や高校の教員が、高校生の探究活動のフォローを行い、学会での発表の場を設けました。

ところが、こちらの予想を良い意味で裏切って、「探究に取り組むうちに社会に開く」生徒たちが現れます。最初は、「これってどういうこと?」という素朴な課題意識から、「新聞ではどう報道されているのか?」と調査活動をするのですが、「取材された記者はどういう思いを持ったのだろう?」とか「この問題の解決に取り組んでいる団体に人に話を聞いてみよう」とか、「私たちはこれらの記事からこう考えたのだけれど、それについては新聞社の人はどう考えるのだろう?」などなど、社会に開いていくんです。

そうすると、最初に設定した課題から、どんどん展開していき、「机上で考えるだけでは決してわからない人や社会の複雑なあり様」とか、「当事者や支援者にたずねたからこそわかったこと」や、それでもわからないことってたくさんあるよね、と、探究が深まっていきます。

そんな様子が、先日の日本NIE学会での高校生の発表からうかがえました。高校生たちのそうした取り組みに少しでも役立てたことが私は嬉しく、教えるとか導くとか一方向の取り組みではこれはない、学会にも大きな貢献ができている、と勝手に思ったのでした。

どうしても高校生の探究はその学校の中で終始してしまうのですが、学校外で発表したり、学校外の人と対話する機会を持つことが、オモロい探究を生み出していく環境として必要だなと改めて思いました。

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