欲深な願い達

プロローグ

「本気で打ち込めるものが欲しい」

「友達に嫌われたくない」

「好きな人と付き合いたい」

「出会いが欲しい」

ここは、欲望が集まる場所。
今日も誰かが、欲望を吐きに来る。


1、今の、貴女の願いは何ですか?

私は飛鳥。選ばれし者。

ここは、願いを叶えてくれると噂のスポットなのだ。
それも、選ばれし者しか入れない。

私がスポットに入ると、脳内に直接誰かが語り掛けて来た。

「今の、貴女の願いは何ですか?」

2、○○さんと付き合いたい。

「今の、貴女の願いは何ですか?」

考えれば沢山浮かんでくる。
どれも自分勝手な願い。

一番叶えたい願いを、声に出す。

「〇○さんと、付き合いたい」

○○さんは、学校1モテている、同級生の男子。
学校1の美形を誇る彼と付き合えば、私はカースト上位に入れる。

3、愚かな人間

そう願った途端、私の体はスポットから弾き出された。

「ヤァッ、ヤダっ、ママ、助けて!」

目の前に、鬼が現れる。
その鬼は、残酷な表情で私を見下ろす。
思わず四つん這いになってしまった私は、抵抗のしようがない。

「くだらぬ願いをするものじゃ。」

想像以上にくぐもった声は言った。

「っ⁉」

助けて、と。悲鳴を上げようとしても、上がらない。

「我は最初に声を望む。」

声が出なくなった。

「さぁ、願いを吐き出せ。」

最後に、欲の深い願いを口に全て出してから、死ねるという制度。
必ず叶うらしい。
叶った頃に、生きているかは別だが。

””嫌だっ、死にたくない””

私の願いだ。
心で思っている願いが、全て脳内に映し出される。

「あっ、、、」

実際には、唇をあの形にしただけ。でも、声を出した気分になる。

昔の、私の熊の人形が映し出される。
あの人形、大切にするって言ったから買ってもらったのに。なんで忘れてたんだろ。。。

「ほほう、死にたくないのか。」

遊ぶように言われて、腹が立つ。

「すべてを失っていても、そう言えるか?」

え?それって?私は力尽きた。


「やはり人間は愚かだ。」


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