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3/7「メンチカツを作って食べるだけの話」ショートショート

3月7日 メンチカツの日
味のちぬやという会社が制定。
関西ではメンチカツをミンチカツと呼ぶところもあり、ミ(3)ンチ(7)の語呂合わせ。

メンチカツなんて作りたくない。
だって面倒くさいから。

凝った料理になればなるほど作りたくない。
レシピ本に書いてある材料が多いと、そんなにたくさんの材料を準備するのがまず面倒くさくてやる気が失せる。
行程が長いのもうんざり。
さっき混ぜたものに①をいれてそれから②を……
なんてごちゃごちゃ書いてあると、きぃぃぃっとなって頭をかきむしりたくなる。
使った後の油の処理を考えると、揚げ物だって大変。

それでもたまに、作る気になる。
それは究極にストレスが溜まっている時。
すなわち今日!!

ひき肉と玉ねぎを力いっぱいグニグニ混ぜて、粘土で遊んでいる子どもみたいに無心になって、それをべちべちしてストレス発散したくなる。
大量に作って、思う存分、喰らいつきたくなる。

さあ、やってやる。手を洗ってスタート。
玉ねぎを切る。無心でみじん切る。
常温に置いた玉ねぎは切るとき目にしみるけれど、冷蔵庫に入れておいた玉ねぎは目にしみない。
合いびき肉と玉ねぎと卵と調味料などなどをいれてグニグニ混ぜる。
手に付いた肉を見てにったり笑う。猟奇殺人犯の気分になってみる。
べちべちして形を整えて、衣をつけて油へダイブ。
じゅわわわわっと揚がる音。この音やばい。食欲がわいてくる。

苦労して作れば、食べる期待も膨らむ。

出来上がったメンチカツ。
わたしが、わたしのためだけに作ったメンチカツ。
体のため、付け合わせに野菜を食べた方がいい?
いいや、メンチカツオンリー!
誰にも何にも気兼ねなく、たらふく食ってやる。

冷えた缶チューハイと熱々のてんこ盛りメンチカツをテーブルに運ぶ。
おいしそうなものが並んでいるのを見るのは目に嬉しい。
気になるあの話題作ドラマをテレビで流しながら。

プシュッ
缶チューハイ、スタンバイ。一口飲みたいがぐっと我慢。
先にメンチカツを。
箸で、一個まるまる持ち上げる。
落としそうになるこのずっしりした重量感、たまらない。
ゆらゆらと湯気が立ち上る。
湯気を吸い込む、吸い込む。ああいいにおい。
そのまま、がぶり、大口開けて喰らいつく。
サクッといい音がすると同時に肉汁がこぼれてくる。
熱い!!
ハフハフしながら、熱さを逃がす。
口の中に、肉のうまみと玉ねぎの甘味があふれる。
舌が喜んでいる。うまさにほっぺがしびれる。

ああ、うまい、うまいよ。揚げたて最高!
その余韻がまだ残っている口に缶チューハイを流し込む。
ごっごっごっ。喉をならして飲む。うぉぉぉぉ最高!
さっきまでイライラしていたこととか、もうどうでもよくなる。

「たまらんっっっ!!」
メンチカツは下品に食したい。
箸で一口サイズに切ってから口に運ぶのではなく、大口あけてかぶりつきたい。口から肉汁をあふれださせて、キンキンに冷えたアルコールをグイッとやって、メンチカツによってほてった喉を一気に冷やす。それを無心に繰り返したい。

メンチカツも缶チューハイもまだまだある。
ソース、ケチャップ、マスタード。味変も充実。
メンチカツ、缶チューハイ、メンチカツ。缶チューハイ。
気のすむまで、それを繰り返す。

ああ、腹いっぱい。
もうなんにもしたくないし、考えたくない。
ただただ至福。
メンチカツ、最強。

(了)

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