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3/22「無人島にもっていくなら」超短編小説

3月22日 放送記念日
1925年のこの日、NHK東京放送局が日本発のラジオの仮放送を開始
3月22日 世界水の日
水資源の開発、保全などの普及啓発を行う日
水の大切さや安全な水が使える重要性を考える日


「無人島に持っていくなら何にする?」
居酒屋で大学のゼミ仲間の集まり。オレはみんなに話題をふった。

よく耳にする究極の選択だ。持っていけるものは1つ。3つまでというパターンもある。
何かしらの集まりで会話がなくなった時に持ち出す、ゆるく盛りあがる便利な話題。
誰でも参加できる簡単な会話でもあり、各人の性格が垣間見える会話でもある。


「ライターかなあ、でもガス切れたらおしまいだよな、あ、あれがいいかな、テレビでキャンプするとき使う、鉄をたたいて火花散らすやつ」
現実的。無人島に行くことなんてないのに、懸命に考えてくれるいいやつ。

「ナイフ。木を切って家つくったり、いかだ作ったり」
ワイルド系。もしくは冒険系テレビ見過ぎ。

「ペットボトルの水。水が確保できるまで時間かかるだろうし、飲んだ後の容器は雨水を溜めておける」
人とはちょっと違う視点。独創的。

「ドラえもんの異次元ポケット」
変わった人。もしくは変わった人と思われたい。もしくはドラえもん好き。

「スマホ」
スマホ依存症。

「まず、無人島はどこなのか、何日そこに滞在する予定なのか、気温はどうなのかで変わってくるだろ」
めんどくさい。

「唐揚げ注文したよね。遅くない?」
話、聞いてない。


「じゃあさ、無人島じゃなくて文明が衰退した後の世界ならどうする?」
お、新しい切り口。言い出した人にみんなが注目する。
「何らかの理由で人が極端に減って、文明が衰退した未来。その世界を歩きながら生存者を探して旅をするとしたら、何を持ち歩く?」
そういう映画やゲームはたくさんあるから、こっちの方がみんなイメージ膨らみそう。


「やっぱナイフだろ、いや銃か?」
バイオハザード。

「犬がいいなあ。敵が現れたら一緒に戦えるし、寂しさ紛れるし」
アイアムレジェンド。

「やっぱ水だろ」
水、大好きだなこいつ。

「ドラえもんの異次元ポケット」
ポケットだけじゃなくドラえもんも連れて行ってあげて。

「そもそも気温はどうなのか、夏か冬かで持ち物かわってくるだろ」
めんどくさい。

「スマホ」
いいからいったん、スマホ置こう。

「唐揚げまだ?」
話、聞いて。

「ラジオは? 放送局みたいなところで生存者に呼びかけるシーン、映画でよくあるよね」
あるね、その声をラジオで受信した主人公が指定された場所に向かう、みたいな展開。

「やっぱ水とラジオは欠かせないかな」
今日は世界水の日と放送記念日って言ってドヤ顔したいだけのオレが言う。

「唐揚げきた! そういえば今日、水の日とラジオの放送記念日だよ」
話、聞いてた。

オレは作りかけのドヤ顔をゆっくり元に戻した。


おしまい


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