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名演小劇場で印象に残った映画

2023年3月23日名古屋市中区のミニシアター・名演小劇場が、常設映画館としての営業を終了し、無期限休館しました。
建物自体が独特で、雰囲気の良いミニシアターでした。

長年にわたる感謝の気持ちを込めて、名演小劇場で観た映画の中から、特に印象的で思い出深い三作品について語ります。

『ネコを探して』

事前情報なしにタイトルだけに惹かれて観たら、社会派のフランス映画でした。
しかも、アニメーションとドキュメンタリーという異色の組み合わせ!

冒頭はアニメーションで、登場人物の女性がどこかに行ってしまった愛猫(あいびょう)を探すところから始まります。
ネコを探しながら世界各地を旅して、猫と人間社会の関わりをドキュメンタリーで描いていくという筋立てでした。

作中で一番印象に残ったのは、水俣病は猫にもあったということです。
水銀で汚染された環境に居る魚を食べ、水銀中毒を起こしたネコがどうなったのか?
それこそ、学校では教えられなかったことを知りました。

全く予想していなかった内容で、深く考えさせられました。

水銀で汚染された魚を食べたネコ達の異変に気づいて早めの対処をしていれば、人への被害拡大も防げたのではないか?

「歴史にたらればはない」と言いますが、水俣病は、まだ歴史というには新しい出来事のような気がします。
それだけに、早い段階でどうにか対策できなかったのかと思わずにはいられませんでした。

それ以外の内容は、和歌山電鐵貴志駅のたま駅長や、イギリスの鉄道でネズミの被害を防ぐために飼われていたネコのことなど、愛玩動物なだけではないネコ達の姿を見ることができました。

ネコと人間社会の関係について考えてみたい方には、鑑賞をおすすめします。

『シネマの天使』

広島県に実在していた映画館・シネフク大黒座の実話を盛り込んだ、ファンタジーとミステリーの要素を含む邦画です。

名演小劇場最後の上映日を、『シネマの天使』の大黒座が最後の日を迎えるシーンと重ね合わせた方もいらっしゃるでしょうか。

とても残念なことに、ラスト上映が終わったあとに名演小劇場の無期限休館を知り、現地で最終日に立ち合うことはできませんでした。
お見送りをできなかったにもかかわらず、勝手なことを申し上げれば、最終日には、この作品の上映もお願いしたかったです。

上映当時の2015年は、全国各地でミニシアターの閉館が相次いでいるのが話題になっていた頃です。
ダブル主演の一人が本郷奏多(ほんごうかなた)さんということも、観に行く大きな動機にはなりましたが、内容的にも惹かれて、必死に観に行きました。(「必死に」の理由は後述)

作中に、閉館した数々のミニシアターの写真が、スライドで紹介されるようなシーンもありました。
かつて親しんだ名古屋駅近くのピカデリー6の写真を見た時には、ピカデリー1〜6での思い出が走馬灯のように駆け巡りました。

実は、この映画のフライヤーを手に入れた場所が、閉館直前のピカデリー6だったのです。
フライヤーを手に入れた時は、ピカデリー6が閉館するとは思っていませんでした。
あとから思えば、フライヤーがお別れのメッセージ代わりだったのかもしれません。
本郷奏多さんの親友である神木隆之介さんの準主演作品を観に行った時だったことにも、巡り合わせを感じます。
でも当時は、なぜ名演小劇場で上映される映画のフライヤーがピカデリー6にあるのか、不思議でした。

(ここからは、私の個人的な事情を含む思い出語りです。ご興味ない方は、スクロールで読み飛ばし、次の作品の項目へお進み下さい。)

『シネマの天使』上映当時の私は、卵巣に「チョコレート嚢腫」を患い、癌化していないかどうかの画像診断を繰り返し受けていました。
手術をするかどうか、するなら術式をどうするのかの検討も含めて、画像診断をする複数の医師の見解が分かれるたび、より詳しく画像診断が行なわれました。
そんな中、別の病気の疑いも出てきてしまい、別の科でも画像診断を受けるなど、大学病院への通院で疲れきっていました。

通院のついでなら動けると思い、名演小劇場まで距離のある病院から向かうと、上映時刻を過ぎ、途中入場できないタイミングになってしまいました。

「後日また観に来ます」と言いながらパンフレットだけ買い、通路で見かけた『シネマの天使』関係の展示物を撮影し、ロビーで喉を潤してから帰宅しました。

後日、映画のためだけに名演小劇場に出かけて、無事に『シネマの天使』を観られた日には、通路の展示物が別の作品の物に変わっていました。
映画を観られなかった日も、来て正解だった!と、胸を撫で下ろしたものです。

『バグダッド・スキャンダル』

入口のポスターで、同時上映のロマンティックそうな恋愛映画(どうしてもタイトルが思い出せず、モヤモヤ中)にも惹かれながら、あえて選んだ作品です。
チケットを買う時に、予想が外れたというような、言葉ではないご反応があったのを覚えています。
2本続けて観られる上映スケジュールだったら、そうしたと思います。

内容は、イラクのクゥエート侵攻に伴う経済的制裁を受けたイラクの国民に対する、国連主導の人道支援プログラムを巡る汚職事件に関することでした。

汚職を暴いた国連事務次長特別補佐官のアメリカ人青年の奮闘と活躍が描かれていました。

故 サダム・フセイン大統領が極悪人として扱われた理由のひとつを知った気がしました。
ですが、これはアメリカ映画。
西側諸国の視点・価値観で描かれていることは否めません。
イラク国民や中東諸国の視点・価値観ではどうなのか?
後者の描き方をした作品を観てみたいものです。

最後に

末筆ながら、名作に出合える場を提供し続けて下さった名演小劇場様にお礼を申し上げます。
長年にわたり、ありがとうございました。
閉館ではなく“無期限休館”とのことですので、今後、一時的にでも再営業されることを名古屋市民の一人として願っております。


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