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いかにして「推し」はできるのかを考えてみた

昨晩、二次予選に向けて、一次予選審査の動画を改めて見直していました。二次予選通過者の25人のコンテスタントたちの、一次予選の動画をグルーピングして紹介してくれたものです。それにしてもピティナ事務局、加藤哲礼さんのNHK解説者のような落ち着きと言ったら。寺を訪ねて、乱れていた心に気付かされたような心持ちになります。

動画での審査や配信が定着し、1次予選からのプロセスごと共有することで、多くの人に独自の「推し」ピアニストが生まれる。それが近年のコンクールの醍醐味で、今年のピティナでも、そういった存在がきっと生まれてくるのでしょう。

動画を見ながら、推しってどうしてできるのかな・・と考えていました。「このピアニストが特別好き」と思うのって、なぜ?そしてあなたと私で推しが違うのはどうして?特級公式レポーターのカイネ♪あのんさんは務川慧悟さんに夢中、寿すばるさんは角野隼斗さんが人生の中心にありそうな勢いです。そしてわたくしもエルバシャさんを追っかけて、このコロナ禍にフランスまで・・。ハテ・・。

演奏にはいろんな要素がありますが、私自身のことを振り返ってみると、「音」がとっても重要なんです。柔らかい、深い、力強い、透明感のある・・そんな言葉でしか表現できないけれど、言葉では到底表現しきれない「あの感じ」。

楽器って不思議なことに、演奏者によって音が変わって聴こえます。技術的な要素だけでなく骨格や肉付きによっても変わるように感じるし、その人の声に似るようにも感じる。

昔、内田輝さんというクラヴィーコード奏者による調律ワークショップを受けたことがあります。調律ワークショップと言いながら、「音の聴き方」を見直すワークショップでした。ワークショップはまず、身体で音を聴く練習から始まりました。一音一音音を出しながら、それが身体のどこに響きやすいかを確認していきます。低い音ほどお腹の下の方に伝わる感じがし、音が高くなるほど共鳴ポイントが頭の方に移動していきました。(調律ワークショップの様子はこちら

この共鳴ポイントが個人によって微妙に異なり、一番響きやすいポイント、そこが響くと気持ちがいい、というポイントがあって、そこにダイレクトに響いてくる音を出す人がいれば、それに快感を覚えるようにできているのではないか(わたくし独自の説です)。

一次予選の動画を見ていても、頭のてっぺんからスコーンと抜けるような気持ちのいい音の人もいれば、「おぬし、丹田が練られておるな・・」と言いたくなるようなふかーい呼吸で、お腹から歌う声のような音の人もいる。それが聴き手の身体のどこに響きやすいか、ということを無意識に感じ取って、「この音が好き」と感じるのではないかと思うのです。

だから音楽を聴くことは、思った以上に身体を使う、本能的な行動なのかもしれません。なので推しへの「素敵・・💗」は、どこか恋心に似た気持ちを含むものです。「あこがれ」の要素が、私たちを別世界に誘ってくれるのです。

楽譜に書かれた感情の高まりを、そのままストレートに表現するのか、あえて高まりを理解しつつ、抑えるのか。「今夜、一緒にいたい」を、目を見てストレートに訴えられたいのか、あさっての方向を見て照れた瞳で朴訥に言われるのに震えるのか。「音」そのものに加えて、曲作りに現れるそういったひとつひとつの選択が、自分の好みと照らして「あ、この人素敵」と思わせているのではないでしょうか。

今回の演奏の中にも、「きっとこの人、粋なデートに連れてってくれるわ」という人がいましたよ。うふ。

好きって、素晴らしく人生を広げてくれますよね。
私も今年、新たな推しを見つけることでしょう。そしてみなさんにも、どんどん、推しを見つけて欲しいです!
音楽を聴くって、本能的なものですから。そう、恥ずかしがらないでっ(お前が恥ずかしいわ)。

本日19時半から、「特級開幕前夜祭スペシャルライブ」が配信されます。
司会にはクラシック音楽ファシリテーター飯田有抄さん。ピティナ事務局加藤哲礼さんの安定感もご確認ください。ゲストには2020年グランプリの尾城杏奈さん、2019年グランプリの亀井聖矢さんをお迎えするそうですよ。

ここから質問もできるみたいです。特級や二次進出者について、はたまた飯田さん・加藤さんへの聞きたいことでも、気軽に送ってみてはいかがでしょうか。私も送ってみようっと。

二次予選の曲目については、公式レポーターの森山智子さんがまとめたこちらの記事もぜひどうぞ〜。

(写真提供:ピティナ)

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