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アールト建築の傑作、マイレア邸への日帰りトリップ

こんにちは
先日、アルヴァ・アールト設計のマイレア邸のガイドツアーに参加しました。マイレア邸は20世紀住宅の最高傑作の一つとも言われており、現在はガイドツアーによってのみ内部の見学が可能です。
ヘルシンキから片道4-5時間と、決して近い距離ではないのですが、その時間をかけてでも訪れる価値のある場所でした。

出典:Visit Pori (https://www.visitpori.fi/en/news/uncategorized-en/in-alvar-aaltos-footsteps-and-spellboundby-the-ironworks/28/03/2024/)

ヘルシンキから長距離列車で約4時間、西フィンランドの港町ポリからさらにローカルバスで30分ほど。ノールマルクの森林を抜けると、マイレア邸が姿を現します。

電車はVRのサイトかアプリから予約可能です。レストランカーやお手洗いもついており、座席も綺麗で長旅でも快適です。

マイレア邸は、アルヴァ・アールトとアイノ・アールトが同じくアルテックの創業者のひとりであるマイレ・グリクセンとその夫ハッリのために手掛けた個人住宅で、1939年に完成しました。すっきりとしたモダンさを保ちながらも、随所に織り込まれた実験的なデザイン、周囲の森林に溶け込むような素材使い、殆ど当時のまま残されたアート作品とインテリアなど様々な魅力を備えており、足を踏み入れた瞬間の感動はひとしおでした。

VRのポリ駅のすぐ前にあるバス停から乗車。Noormarkun urheilukenttäという停留所が最寄りですが、停留所は表示されないので地図で追跡するか運転手さんに言っておくと確実。(筆者撮影)
ちょっと不安になる森の道を歩きます。途中Villa Maireaの表札が見えてきます。(筆者撮影)

マイレ・グリクセンが生まれたアールストローム家は紙パルプ産業を営むフィンランド有数の財閥です。パリで芸術を学んだマイレは、フィンランドに現代アートを紹介し、アートによって人々の暮らしを良くしたいという理想を持っていました。
アルテックがアートとテクノロジーの造語であることは有名ですが、アルテック設立当初、マイレは家具の販売には正直あんまりピンときていなかったらしいです。アルテックの経営マニフェストにもあるように、アルテックは設立当時、家具のデザインと販売に並行してギャラリー・アルテックとして展覧会も開催しており、マイレ指揮のもと、ピカソ、フェルナン・レジェ、アレクサンダー・カルダーなどの展示会が行われていました。彼女はモダンアートを熱心に支援しましたが、コレクションを増やすことよりも、自身が交友関係を持つアーティストの支援を重視したそうです。

アルテックのマニフェスト、1935年
出典:Artek (https://www.artek.fi/jp/company/about)

この意味で、マイレはアルヴァとアイノ・アールトの重要な支援者でもありました。マイレア邸の設計を依頼する際、マイレは施主としてアールト夫妻が可能な限り自由に設計できるように応援したそう。アールト自身この住宅を実験的な住宅と呼んでおり、設計がかなりすすんだ段階でプランを大幅に変更したいという彼の申し出もマイレは受け入れたとか。

個人所蔵のため建物内部の写真撮影はできませんが、外観は撮影可能です。(筆者撮影)
建物は現在も美しく手入れされており、緑と花に囲まれています。(筆者撮影)
有機的な形態のプールの周りには、アイノが好んだというデイジーの花が。(筆者撮影)
こちらのアウトドアテーブルセットもデイジーをモチーフにデザインされたもののようです。(筆者撮影)

マイレの意向で、建物だけでなくインテリアもなるべく当時のまま維持管理されているそうです。ツアーガイドでは、絵画や彫刻、食器類といった彼女のアートコレクションを現在でもマイレア邸内で見ることができることに加え、アールト夫妻がマイレア邸のためにデザインした、製品化されていない多くの家具を見ることができます。
このガイドツアーには年間4000人が見学に訪れるそうです。マイレア財団が主催しているということもあってか、建築だけでなくマイレ・グリクセンとアールト夫妻との関係に焦点を当てた説明がとても面白かったです。マイレア財団のWEBで見られる動画"Love Poem - The Story of Villa Mairea"もおすすめです。

ポリの町は伝統的な木造住宅を多く残す美しい港町で、カウッパトリ(マーケット広場)周辺には飲食店も充実しているので、ツアーガイドの前後にゆっくりと市街を散歩するのも楽しかったです。またノールマルクにはアールストローム社が展開する宿泊施設もあり、今回は宿泊できませんでしたが、こちらのホテルとても良さそうなので一泊するのも楽しそうです。

出典:Ahlström Noormarkku (https://ahlstrominruukki.fi/en/home-english/)

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