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人事が複業について真剣に考えてみた結果、見えてきたもの #私と複業

「人事として社員が複業をしたいと言ってきた時、どう対応していますか?」

イベントに登壇したり、人事の勉強会で話に出たり、面接のシーンで最近よく聞かれる質問の一つだ。「複業」というワードが徐々に浸透して、働き方の一つとして認知されつつあるのを感じています。

こうした状況に対して企業側でよく見聞きするスタンスはこういうもの。

「いやいや本業に集中してもらいたいので、ウチは複業はNGだ」

とか

「他の会社に行かれてしまうから、複業は禁止にしている」

とか。

ポジティブに捉えている企業も人事もまだまだ少ない。

2017年にリクルートキャリアが行った調査では、このような結果が出た。

複業を容認している:22.6%
複業を禁止している:77.2%

■複業を禁止している理由①社員の長時間労働・過重労働を助長する②情報漏えいのリスク③労働時間の管理・把握が困難なため④労働災害の場合の本業との区別が困難⑤人手不足や人材の流出につながる
■兼業・複業を容認/推進している理由①従業員の収入増につながる②人材育成・本人のスキル向上につながる③定着率の向上、継続雇用に繋がる④人手不足解消、多様な人材の活躍推進につながる⑤社外の人脈形成につながる

禁止の理由では会社側の論理が、容認/推進している理由では個人側の論理が、それぞれ挙げられている。

こうした環境において、「会社の視点」「個人の視点」「私の視点」で複業をどう捉えたらいいのか、考えてみました。

■複業についての会社の視点

会社の本質は「事業の継続性」「事業の発展性」にある。経営資源である「人・モノ・カネ・情報」を有効活用して、この本質を実現させることにある。

優秀な人材の採用とその活躍は欠かすことはできない。企業は常に優秀な人を採用しようと努力している。

しかし、うまくできない。

また既存の社員にも辞められては困る。兼業とか複業で他社の人に接することになっては困る。情報漏えいも心配。働く時間も管理できなくなる。

心配だ!と。

優秀な人材には、仕事が舞い込みます。彼らは「面白い仕事」を好み、全力を尽くしたいと思っています。

そんな優秀な人材を一社で抱え込むことはできるのだろうか?それには、常に「面白い仕事」を提供する必要があります。

・・・まあ、難しいでしょうね。いつも「面白い仕事」があるというのはなかなか存在しません。

しかし、世の中にはたくさんの「面白い仕事」が存在しています。一社で何とかしようとせずに、社会全体で優秀な人材の力が発揮できる環境を整えたらどうでしょう?

また、社員に辞められては困る。他社の人と接するのも困る。情報漏えいも心配で、働く時間も管理できないという不安を感じている人事の人に言いたい。

社員はいつから「企業の子供」になったのでしょう?もっと信頼してみてはいかがでしょう?

自分たちが一人の大人として大切に扱われていると、誇りや自信を感じてくれます。そういう思いに対して報いたいと思うものです。

そうした信頼関係を築けたら社員は勝手に動き出します。すべては「本業の会社が良くなるように」と。

「事業の継続性」「事業の発展性」に欠かせない優秀な人と組織はそうやって築いていくことはできます。

■複業についての個人の視点

2008年のリーマンショック以降、人事評価において「仕事を頑張ったから給与を上げる」ということは見られないようになりました。企業のキャッシュに対する考え方が大きく変わったためです。

そうした企業側の考え方が変わったのにも関わらず、未だに「仕事を頑張れば給与が上がる」と本気で信じている人がいます。

会社に期待したい気持ちは分からなくもないですが、給与が上がるという点において、その期待に会社が応えてくれる可能性は限りなく低くなります。

社員の給与の高低に関わらず、これから物価は少しずつ、でも着実に上がっていきます。いつの時代もそうですが、物価の上昇と給与の上昇はマッチすることがありません。

なので自己防衛のためにも収入源を確保する必要があります。個人の視点では「自分のリスクヘッジのために複業をする」というのは正しい考え方だと思います。

本業のリスクヘッジのために複業をする。複業で収入面を安定させた上で、余裕を持って本業に思い切り取り組む。

これがリーマンショック以降の個人がビジネスシーンで生き残る戦略になると考えています。

■で、お前はどうなのよ?

と、、、いろいろ書いてきましたが、お前はどうなんだ?ということですが、現職において入社後すぐに「副業規程」を作成し、原則容認というスタンスを取っています。

ただ、ルールを決めるだけでは何も変わらない、動きづらい部分が多いと思うので、私自身もいくつかの企業の人事アドバイスをしたり、地域活動の支援をしたりしています。

私自身も私の周りで複業をしている人にも共通をすることで、複業で学ぶことは以下のことに尽きると思っています。

「一円を稼ぐことの大変さ、一円を稼ぐことの難しさ」

会社にいて予算を策定したりすると、数万円、数十万円、数百万円がそれほどすごい額に思えなくなってきます。(完全なる錯覚です)

自分で事業を立ち上げて、最初のたった一円を稼ぐために、どれほどの努力をしなければならないか。やってみると本当によく分かります。

そしてその努力こそが、見える世界を変えてくれます。経営マインドをリアルな現場で身に付けることができるようになります。

私は複業に対しては「ガンガンやれ」の立場を取っています。企業の視点では、優秀な人材を引きつけることができて、複業からスキルや経験を積ませることができます。

個人の視点では、様々な企業の案件やプロジェクトに関わることで、経験値を積むことができて、スキルを磨くこともできます。何より「一円を稼ぐ難しさ」を実体験できることは、とても大きな意味を持っています。

私もこれからも人や組織の領域で困っている企業や組織、プロジェクトに関わりながら、自分の経験値をため、スキルを磨きながら、世の中に価値貢献していけたら、と思っています。

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