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【SS】ショートショート王様②/#毎週ショートショートnote

「いつか作家になるんだ。」
君は目をキラキラさせながら言った。

実際、君がしてくれる話は面白かった。
ミステリー、コメディー、ラブロマンス、ホラー。
何でもござれと言わんばかりに、次から次へと、その口から語られる話。

きっと君は天才に違いない。

ある日、君がしてくれた話とよく似た話を、私は見かけた。
そう話すと、君は、ハッと表情を固くし、私と飲みかけのコーヒーを置いて帰ってしまった。

2、3日、音信不通になり、心配になった頃、君は戻ってきた。
「実は、これまでの話は、どこかで読んだのを、少しだけ変えて話してただけで、全部ただの真似なんだよ」
君は悲しさを通り越して、真っ白に虚脱した顔をし、唇を震わせて言う。

私は君を抱きしめる。
「君は私を毎日楽しませてくれた。それだけで構わない。」
それに君は誰にも出来ない物語を、毎日私に紡いでくれた。

「好き」

その2文字より素敵な物語なんてない。

だから君は私のショートショート王様なのだ。

(404字)

参加させていただきました。
今回も難しい!
でも参加しがいがあります。
精進いたします。


最後までご覧くださり、ありがとうございました。

#毎週ショートショートnote

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